せいる
2025-12-27 22:28:38
1458文字
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おやすみなさい、また明日(信風ワンドロワンライ)

大大大遅刻で先週のお題「おやすみなさい」です!!!大遅刻!!!「おやすみ」の次は必ず「おはよう」のが来る日々の終わりに薄々気づいている二人の話です。まったくCPっぽくないです…。

「おやすみ、信仔」
 普段なら「おやすみ」と返して自室に向かう養い子はなぜかそこから動かない。なにかあったのかと思い龍捲風は「どうした?」と尋ねた。
「祖哥哥ともっと話したい」
 その言葉に龍捲風は思わず微笑んでしまった。
 子供というのは不思議なものだ。いつもいつも通りの日常の中で、突然こちらには理解できない行動を取る。もう信一の保護者は自分しかいない。嫌がっても拒んでも一緒にいるしかない。この先も二人が共に過ごす時間がしばらく続く中で、今この僅かな時間を惜しんでいる子供が可愛くて愛しくて仕方がなかった。
「どうせまた明日も会うんだぞ」
「ほんとうに?」
「本当だ。明日も明後日もその次も、俺はお前と一緒にいる。だから今日はしっかり寝てまた朝に元気におはようを言ってくれ」
「わかった。おやすみなさい、祖哥哥。またあしたね」
「あぁ、また明日」

 幼い頃の信一のとのやり取りを思い出し、そちらに気を取られていた龍捲風だが、自分の腕にすがりついた信一の動きで目の前の現実に引き戻された。今晩もう何度目かもわからないやりとりをまた繰り返す。
「ほら、もういい加減寝ろ」
「やだねないぃぃ。もっと祖哥哥とはなすぅ」
 まるきり子供のように駄々をこねる信一に、龍捲風はこれまた何度目かわからない大きな溜息をついた。
 城寨の中でご機嫌に飲んでいた信一がだいぶ周囲の迷惑になり始めたあたりで、たまたまその近くを通ったので連れて帰って、正確には押し付けられてきたのだ。居間のそう大きくはないソファに信一を座らせて、水でも持ってきてやるかと台所に向かおうとした龍捲風の腕を信一は捕まえて離さず、そのままずっとソファで先程の会話を繰り返しているのだ。
「どうせ明日も明後日も会うんだぞ。さっさと寝なさい」
 寝なさい、なんてついつい子供の頃のような言葉遣いをしてしまい龍捲風は苦笑した。
「明日も明後日も?ずっと一緒?本当にずっと一緒にいてくれる?」
 龍捲風は胸に痛みがはしった気がした。こんな風に自身を慕ってくれる信一のことを置いて必ず自分は先に死ぬだろう。いや、そうでなければならない。もしこの子が自分より先に死ぬことがあれば、どのみち自分は生きていけないだろうから。けれど最近になって、病を抱えた今の身体ではきっと自分が思っていたよりも早く別れが来るであろうことに龍捲風は薄々気づいていた。
「俺がどこかに行くと思うか?」
 その言葉を聞いて信一は下を向いた。
 肯定も否定もしない、はぐらかすようなずるい答え方だ、と龍捲風は思った。けれど嘘はつきたくなかった。ずっと一緒とは言えない。どうしても。
「ほら、わかったらさっさと寝て、明日の朝にちゃんと、おはようを言ってくれ」
 信一は少しだけ顔をあげて上目遣いで龍捲風の胸の辺りに目をやり、眉根を寄せて少し睨むようにした後、龍捲風を見つめた。その瞳は龍捲風を責めるようでもあり、何かを懇願するようでもあり、ひどく真剣だった。先程のまでの酒に酔って楽しげなきらきらとした光はもうそこにはない。
 信一の瞳が見ているものが、言わんとすることが、龍捲風には見当がついている。しかし何も言わずに柔らかい信一の髪をかき混ぜるように撫でてやった。もうこれ以上見つめていても欲しい答えを得られないと思ったのか、信一がゆっくりと立ち上がった。
「騒いでごめん。おやすみ。祖哥哥」
「あぁ、おやすみ」
 あとどれくらいこんな風に「おやすみ」と「おはよう」を繰り返せるだろうか。