白殊皎(しらよし こう)
2025-12-27 16:43:03
1267文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

こころにきずを、のこさぬように

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
終章・最終決戦に臨む二人。

怯まず戦に赴く新選組に感涙していたら、その後のイベントでの「ギャラクティカ・イサミン」にぶっ飛ばされました。
それを最初にお出しされていたらこの話は亡き者となっていたでしょう。
よかった、あとからで。



 ついいくさ、なのだという。
 もしかしたら──いや、きっとこれでまた別たれてしまうのだろう。
 幾度も誓いを立てた、幾度も手を握り、幾度も抱擁を交わした。
 だけれど、再び手を取り合えるかどうかなど、わからない。

──それでも自分たちは武人なのだ。
 居並ぶ世界の、戦国の猛者たちに比べれば取るに足らない身とはいえ、確かな誇りを胸に戦うものなのだ。
 戦場において、躊躇うことなどしない。

 傍らで、衣擦れの音がする。
 癖のあるその髪を高々と結い上げ、鉢金を締めた男が浅葱の羽織に袖を通していた。
「歳……
 声をかければニヤリと笑われた。
「どうした、近藤さん」
 あぁ、戦に臨む男の顔だ。
 生前むかしにもこんな顔は見たことがないかもしれない。
「その羽織で、出陣しでててくれるんだな」
「当たり前だろう。これは、あんたのための俺の戦装束しにしょうぞくだ」
「縁起でもないこと言わないでくれ」
 苦笑を返せば、さら、と前髪に触れられた。
「俺は、あんたを目指して、あんたに手を伸ばし続けた。導の星よこんどうさん、最後まで一緒にいてくれ」
 こつり、と額を合わせられた。
 最後なのだ、口吸いの一つでもしてくれて構わないと思ったけれど。
「あぁ、歳。──〝俺〟にとってもおまえはただ一つのともしびだ。消える去るその時まで、共に」
 これでいいのだ。
 想いはもう通じている。
 甘い感傷は魂に傷を残すだけ。

 浅葱の羽織姿の近藤の一人称に、土方は少しだけおや、という顔をした。
 それは、少し懐かしい気がする。
 かつて新選組を結成する前、まだ多摩にいた頃の屈託のない彼の顔が思い出された。
 それを曇らせてしまったのは自分だけれど、きっと近藤は違うと言うのだろう。
 思えば遠くまで来たものだと思う。
 自分の死さえ忘れて、この星を追い続けた。
 消滅すら恐れず進み続けた。
──終にたどり着いたこの場所で、想いまで通じた。
 もう思い残すことは何もない。
 再び別たれたとしても、再び手を伸ばし求め続けるだけ。
 だから、今はこれでいい。
 別れの言葉も、約束の言葉も、何もいらない。
 魂に傷が残れば、それは再会を遠ざけるだろう。

 かなしい。
 お互い、その気持ちだけ抱いていけばいいのだ。



「局長、副長時間ですよ、っと」
 斎藤がひょこりと顔を覗かせる。
 どうやら想い人二人の様子見に選ばれたようだ。
「あぁ」
「万全だ」
 ばさり、と浅葱の隊服の裾を翻し皆の待つ場所へと向かう。
 沖田、斎藤、山南、永倉、原田、藤堂。
 みな一様に表情は明るかった。

「さあ、一番隊隊長・沖田総司、出陣します! 真っ只中で旗を振りますからね! お願いします、皆さん!!」
 沖田が織田信長との縁で道を空け、そこで旗を掲げる。
 そうすればこの場全員がかの戦場に赴ける。
 

「新選組、出るぞ!」
 胸を張って、自分たちは起つ。
 全てを終わらせるために。
 全ての始まりを、作るために──。