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mori0mori
2025-12-26 23:09:50
5978文字
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Hollyday 2026 VIIK (二次創作)
VIIさん/ほみさん お借りしました。
セブピス事前情報に少しだけ言及しています。
重大なネタバレはありません。
クリスマスプレゼントは一緒にいることなふたり
◆
「そういえば、もうすぐクリスマスですけど
……
VIIさん、何かやりたいこと、ありますか?」
道中に立ち寄った、知名度の低い名勝地。
カモフラージュのための撮影を終え、後部座席に置いたカメラ機材を片付けていたVIIは、手を止めてKの横顔を見た。
助手席で窓にもたれていたKの睫毛が淡い夕陽に縁取られていて、つい視線がそこに吸い寄せられる。
「そうですね
……
」
少し考えるふりをする。
── 実際には、Kと過ごすなら何をするでも構わない。
それに、当日まで何が起こるかわからないのが本音だ。
VIIはカメラバッグのジップを閉じ、顔を上げて微笑んだ。
「Kがしたいことをするので、俺はかまいません。
ただ、派手なイベントは正直不得意なので
……
落ち着いた場所で食事をするとか、夜の街を写真を撮りながら歩く、とか。
そういう静かな時間がいいですね」
Kの口元がふっとゆるむ。
「賑やかでも静かでも、
どっちも楽しみですけどね、VIIさんとなら」
VIIはその言葉に胸がきゅっと掴まれるのを感じながら、柔らかく微笑む。
「
……
そう言ってくれるだけで十分です。
でも、せっかくのクリスマスですからね。
Kが欲しいものや、行きたいところがあれば教えてください。
俺は、あなたが喜ぶ顔を見るのが“楽しみ”なので」
「おや、良いんですか? そんなこと言ったら
……
ホントにボクの希望、言っちゃいますよ?」
「ええ。もちろん覚悟の上で言っています。
全部は叶えられないかもしれませんが
……
可能な限り努力します」
Kはんー
……
と唸りながらぐるりと首を回し、
そっとVIIの目に視線を戻す。
「
……
じゃあ、“クリスマスっぽいふたりの写真”を撮ってもらえませんか?
ロケーションはVIIさんおまかせで!」
VIIは意外だったのか、少し息を呑んでから、答えを煙と共に吐き出す。
「それだけでいいんですか?」
「はい。“だけ”って言葉がふさわしいかは、VIIさん次第ですが」
「
……
なるほど」
しばし目線を前に戻してタバコを燃やし、肺に煙を吸い込む。
細く吐き出しながら親指で眉間を掻いたVIIに、ふふふ、とKが目を細めた。
「了解しました。
今年のクリスマスは、あなたを撮る日です。
覚悟しておいてくださいね」
「はい、“楽しみに”してます」
Kは蕾が綻ぶように笑顔を浮かべた。
「あの、念の為訂正しますけど。
“2人”を撮る日ですよ、VIIさん」
◆
クリスマス。
太陽が西側の地平線に沈む頃、2人は早めにチェックインしたホテルから出発する。
目指すは、名物の巨大な一本木のツリーを囲む、
とある国の昔ながらのクリスマスマーケット。
立ち寄っていた国にあってラッキーだったと、VIIは笑った。
屋台の列に近づいてくると、スパイスと赤ワインの香りがふたりを包む。
英語でなんとか注文を済ませれば、
大きな雫型の銅鍋からなみなみと注がれた、柘榴色のグリューワインのカップを差し出される。
Kはカップを両手で受け取り、くるくると回して模様を眺め、
湯気の向こうで嬉しそうに笑った。
「ここの柄はこんな感じなんですね〜。手描き、いいですね。
…
ふんふん、結構スパイスの香りが強いです」
カップとグリューワインに興味津々な様子のKに、
VIIは少しだけ目を細め、そっと彼の肩を叩く。
「あまり湯気を吸い込むとアルコールが目に沁みますよ。
ほら
……
乾杯。K」
Kは顔を上げ、次に差し出されたVIIのカップに視線をやり、
ぱっと笑って自分のカップを控えめに当てる。
「はぁい。では、ふたりのクリスマスに」
こつん、と小さな音が2人の間に響いた。
◆
ふたりが飲み終わる頃、空から白いものがゆっくり舞い降りはじめた。
Kが空を見上げて目を丸くする。
「あ
……
VIIさん!雪ですよ〜」
VIIも見上げ、 Kの髪に積もった小さな雪をそっと払う。
「
……
こういう演出までついてくるとは。
本当に映画のワンシーンみたいですね」
「VIIさん!ほら!雪の中で撮りましょう」
「
……
そうですね、では
……
」
周囲を見渡したVIIは、手近な位置にある塀にカメラを置き、光量とタイマーを設定する。
振り向いて小走りでKの元に戻れば、Kは白い息を吐きながら笑って軽く腕を広げる。そして隣に並びたったVIIに遠慮なく腕を回し、頬が触れそうなほど引き寄せた。
パチリ、
小さな音を立てて、シャッターが降りた。
「もう動いて良いですか?」
「ええ、どうぞ」
「ふふ。うまくとれましたかね」
2人で駆け寄ってディスプレイを確認すれば、
雪が舞う背景に、柔らかく暈けたクリスマスツリーの灯りの前に、ふたりが寄り添って映っていた。
「あ、VIIさんかわいい〜」
「
……
かわいい、ですか?」
「はい。ほらお鼻とほっぺが真っ赤で。ね、もう一枚!」
Kはポケットから自分のカメラを取り出してにっこりと笑う。
VIIは呆れたような息をつきながらも、Kに寄り添う角度を自然に合わせた。
人混みの中でも、VIIはKを抱き寄せた腕を離さずに。
雪と光と、ふたりの静かな熱が、カメラロールに閉じ込められていった。
◆
大きなクリスマスツリーがある広場では、
酔いと音楽とクリスマスの高揚が渦を巻いていた。
人々がツリーの光を囲んで歌い、肩を組み、笑い、雪がちらちら舞い落ちてくる。
「VIIさんっ、こっちですっ!」
Kはホットワインで頬を赤くし、動きは完全にリズムから外れている。
体温の高い手でVIIの手を引っ張りながら、くるっと回る。
勢いのままふらついた拍子にVIIの胸へぶつかると、またおかしそうに笑う。
VIIはそんなKをしっかり受け止めて、わずかにため息を漏らした。
「
……
K、落ち着いてください。滑って転びますよ」
その声はいつもの低さのままなのに、どこか柔らかい。
少しだけ、語尾もとろけていた。
「だって楽しいんですもーん!VIIさんも踊りましょう?」
Kは繋いだ手を上下に揺らしながら無邪気に誘う。
VIIは眉を上げ、ほんの一瞬だけ周囲を見回す。
陽気で小気味の良いリズムに包まれながら、若い恋人たちは肩を寄せ、老夫婦はゆっくり手を取り合い、子どもたちは笑い転げている。
そんな、温かな混沌の中。
VIIは小さく息をつき、観念した。
「
……
仕方ありませんね。Kがそこまで言うなら
……
少しだけ、ですよ」
そう言って、Kの手を握った。
Kは嬉しそうにその場で飛び跳ね、またVIIに近づきすぎて正面から胸板に突っ込んだ。思わず抱き留めたVIIの腕に手を添えて、くすくすとおかしそうにまた笑う。
音楽に合わせて、周りの人々はクリスマスソングを口ずさむ。
VIIはそれに合わせ、軽くステップを踏んだ。
控えめだけれど、動きはしなやかで美しい。完全にダンス慣れしている人のそれだ。
「えっ、VIIさんお上手〜
…
?」
Kは見ているだけで目を丸くする。
「K、俺の足を見て。合わせてみてください」
VIIは穏やかに導きながら、Kの手を強く握り直す。
KはちょっとずつVIIの動きに合わせようとして、けれどすぐ笑ってしまって、リズムなんて跡形もなくなる。
それでもVIIは決して手を離さない。
人混みの中でも、2人が離れてしまわないように。
その掌の強さに、Kは胸が温かくなっていく。
「VIIさん」
「
……
どうしました?」
「こういうの、幸せですね」
VIIは、ツリーの光を受けてふと表情を緩めた。
「
……
ええ、本当に。」
おかしなステップを踏む二人組は、陽気な酔っ払いたちの野次を誘った。
それでもVIIは気付いた素振りすら見せず、
ただKの腰を軽く支えながら、音楽に合わせてゆったりステップを刻む。
Kの動きは相変わらずめちゃくちゃ。
でもVIIがしっかりリードしているせいで、不思議と踊りとして成立してしまう。
KはVIIの肩に頭をのせ、上がる息に溶かすように笑う。
「はぁっ
……
VIIさぁん
……
すっごく楽しい
……
」
「
……
ええ。楽しいですね、K」
音楽が盛り上がるにつれ、2人のダンスはますます自由になっていく。
Kは笑いながらステップを踏み、VIIはその腕をしっかり支えて。
時々2人、目が合うたびにふっと口元を緩める。
「はいっ!ほらVIIさん、ターン〜!ですっ」
「K、それは
……
ターンではありません。
ただくるくる回っているだけです」
「でも楽しいのでオッケーです!」
「だからそれでは
……
」
言いかけて、VIIが笑った。
その笑顔を見て、Kの胸が一気に熱くなる。
VIIが笑うときの表情は、
普段の冷静さの奥に隠れていた柔らかさが滲む。
その “VIIさんの笑顔” を引き出せていることが、
Kにはたまらなく嬉しい。
満面の笑みを向けると、VIIもほんの少し照れたように視線をそらし、それからまたKへ戻した。
鼓動が跳ねる。
――
楽しい。
楽しい以上に、幸せだった。
2人はいつの間にか、
手を繋いで、ステップも何もないただの“ぐるぐる回り”になって、
雪が舞う中で見つめあって、笑っていた。
◆
――
音楽の最後の長い長い一音が、とうとう鳴り止んだ。
余韻とともに、広場が拍手と指笛に包まれる。
2人は止まったぜんまい人形のように、向かい合っていた。
息が少しだけ上がって、頬は赤く、手はつないだまま。
雪が、繋がれた手の間に落ちて、溶ける。
Kの笑顔がふっとやわらぎ、
VIIの表情もゆっくりとほどけていく。
ダンスの高揚とは別の、
切ないほどのあたたかさが、胸の奥から込み上げてくる。
――
この人と過ごす今が、好きだ。
VIIが小さく息をのみ、Kの身体を引き寄せた。
たったそれだけでKの胸が一気に満たされて、目が潤む。
KがVIIの頬に触れて、VIIがKの前髪をそっと耳にかけて。
静かに2人の影が重なった。
雪の降る広場で、音楽の余韻と拍手の中で、
2人は、互いの温度だけを感じていた。
唇が離れ、白い息を吐きながら小さく笑い合う。
きらきらと舞う雪の光が、2人を祝福しているようだった。
◆
また、新しい曲が広場に流れはじめた。
さっきよりも少しテンポのある、
だけどどこか切なさを含んだ東欧のメロディ。
「
……
あ、次の曲始まっちゃいましたね
……
」
VIIはKの頭に積もった雪を指で払って、
少し照れた声で言った。
「ええ。ここは人が多くて、危ないですね」
「
……
移動、します?」
「
……
はい。まだこうしていたいですが
……
行きましょう」
その言い方があまりに素直で、Kはくすぐったそうに笑った。
少しだけ口を窄めたVIIの腕に、ぎゅっと自分の腕を絡める。
「なら、離れないで歩けばいいですよ」
「またKは
……
」
言いかけて、VIIも小さく照れ笑いを返す。
そのまま、ふたりは曲に合わせて踊る客たちの輪を避けつつ、ゆっくりと広場の端へと歩いた。
人波が押し寄せてくるたびに、
VIIがKの肩を軽く抱いて守るように導き、KはVIIの腰にくっつきながら笑う。
「VIIさん
……
なんか、これはこれで踊ってみたいですよ」
「あなたがぶつかりそうになるので、こうするしかありません」
VIIは的確に目線を走らせ、Kを抱き寄せながら人の流れをすり抜けていく。
Kはそれが楽しくて、ちょっとくすぐったくて、VIIの背中にひっそり笑い声を隠した。
ようやく輪から抜けると、少し離れたベンチが空いていた。
遠くで街のイルミネーションがやわらかく光り、酔った人たちの声や笑いが遠くで弾んでいる。
ふたりは雪を払って、横に並んで座る。
VIIは慣れた手つきでポケットからタバコを取り出し、ジッポライターで点火する。
雪の舞う灰色の夜空に、細く白い煙が登っていく。
その横顔には、まだほんの少し赤みが残っている。
「ボクも火、もらえますか」
いつのまにかKも、彼の愛煙する銘柄を一本咥えて微笑んでいた。
雪に消されないよう、VIIはそっと手を添えてつけてやる。
「どうも」
Kはうっとりと煙を吐き、
響いてくる音楽に鼻歌を合わせながら、ツリーの明かりの下で踊っている人々を眺める。
「
……
綺麗ですねぇ、VIIさん」
「ええ。さっきあなたが楽しそうにしていたから、余計にそう見えます」
「またまたそんなあ。
……
でも、ボクも同じです。VIIさんの笑顔が浮かびます」
KはVIIの肩にそっと寄りかかった。
VIIは腕を回し、Kの髪に額をあずける。
「
……
あなたといると、冬の夜でも温かいですね」
「ふふ。ボクも
……
VIIさんと一緒にいると、
音楽も光も、全部ぴかぴかしてるように感じます」
広場ではまた別の曲が始まり、ツリーを囲んで人々が踊り出す。
ふたりはベンチで肩を寄せ合いながら、
まるで映画のエンドロールを眺めるように、静かに街のクリスマスを見つめていた。
ふいに、ぱしゃりとシャッターの音が鳴った。
VIIが隣に視線をやれば、KのスマホはVIIではない方を向いていた。
その画面には、粉雪でぼんやりと煙るクリスマスマーケットが写っている。
「
……
記念写真ですか?」
「はい。
……
ボクたち、ここにいました」
Kは愛おしそうに画面を眺めながら呟く。
「
……
はい、いましたね」
VIIはそっと回した腕に力を込めてKを抱き寄せる。
説明はできないが、そうしたくなった。
「思い出話も、今日の写真のオプションですから。
同じものを見て、同じ気持ちになった記録を残します」
そう言いながらKはカメラアプリをスワイプし、VIIを見上げて笑顔を浮かべる。
VIIは少しだけ目を見開いて、そして瞬きを一つ。
そして、ほどけるように微笑んだ。
「
……
ではそれは、明日暖かい部屋で見返しましょう」
Kは笑って頷く。
その額にVIIはそっと唇を寄せた。
ひんやりとした感触が伝わってくる。
「
……
K、タバコ、吸い終わったら帰りましょう。
風邪を引いたら思い出話どころではありませんし」
「はぁい」
Kはくすくすと笑う。
明日には、いつもの日常が帰ってくる。
でも、あと少し、タバコの火が消えるまでは。
今の2人だけのクリスマスの夜を、
2人は静かに寄り添って、同じ色の瞳に、同じ色の灯りを映していた。
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