ortensia
2025-12-26 16:19:02
3743文字
Public カトマク
 

カトマク(?)

ふんわり読んでくださいよろしくお願いします。

 カートくん最近変だよ。とはまだ言っていない。そのきっかけに心当たりがあって、しかもそれに共感を覚えるからだ。でもそのきっかけでどうしてそういう状態になるのかは分からない。だから変だよって思う。まだ言ってないけど。
 そのきっかけと思われる、暴走列車の事件究明及び解決という文字通りの一仕事を終えたにも関わらず奉仕活動の一環として扱われ、臨時の四〇円は除いて、無駄働ではあった騒動は、事象だけで言えば俺らにとっては日常的だ。しかし感じたこと思ったこととしては、なかなか印象に残った。だって人間だもん、感じたり思ったりする、機械じゃないんだ。
 ネオ町田で捕まった時に出会ったメンツは、なんだかんだあの警官も含めて、サイボーグなんだから言われたことをやって当然みたいな感じではなかった。一人は同じサイボーグだったし、でもその子は、星の違いか身分の違いか、俺らみたいな扱いは受けてなさそうだった。
 奉仕活動なのかなんなのかが終わって、何故か記念の打ち上げをやろうという話が上がった。列車にメモリーが入っちゃったサイボーグの子はなんか直ぐに新しい機体に移ってたけど、いや俺らこれから会社で社長にお叱り受けなきゃなんないからって言ったにも関わらず、じゃあいつにするって話に直ぐに移った。メンタルフットワークの軽さもお金で買えるのかな。
 後日の打ち上げはファミレスで、みんなで頼んだ料理が徐々に運ばれて来る度に、やっぱり一々ありがとうって言って受け取ってた。や、俺らもそれ見て黙ってるのもあれだったからぼそぼそとお礼を言って吸引式料理を受け取ってみたりして、宴は始まった。途中で仕事が入って俺らは途中で抜けることにはなったんだけど、あの場に長くいると俺もカートもなんだかそわそわしちゃってただろうから、それはそれで良かったのかもしれない。兎に角悪くない時間を過ごした。
 その後も度々誘われて、行ったり行かなかったりしてたんだけど、ある日そのお呼ばれに行く日だったのに、カートがまたバッテリー切れで充電しなきゃなんないとか言い出したから置いて来た。別にお呼ばれに長居する気もないし。
「でねー、それでその人のことちょっと良いかなって最近は思ってるのー!」
「はァ?そんなヤツじゃダメだって。チィはホント見る目ないからさァ。」
「えぇー!マキナはそればっかじゃーん!」
「じゃあ今後は今言われたことを気を付けてその人のこと見てみれば?マキ……?マキナちゃんの言った通り。」
「わ!マキナの名前合ってる!」
「そーです。マキナです。」
 今回の集まりは、暴走族の二人は都合が付かなかった。そして何故か会話の流れが、俺が人の名前を正しく言えたことに対してになってしまった。
「でもマックスくん頭いーと思ってたからー、名前覚えられないの意外かもー。」
「てか覚られないってか、興味が前提でなかったからっしょ。」
 まあそうだね。他人とかどうでもいいから、その名前とかも興味ない。意味ない。
「でも兎に角覚えられたのはチハル凄いと思うよー!」
「あは言えてる、偉いじゃん。」
「マックスくん偉ーい!」
「ちょっとやめてよ二人とも。」
 どういう流れだこれは。
「あれマックスくん照れてるのー!」
「いや実際どうあれこの顔面じゃそんな感情出力されるわけじゃないんだからさー。」
「いや他の身振りとかでも分かるモンはあるしょ。」
 はしゃぐチ、えっとチハルちゃんと、冷静に、でも人の機敏を察しようとしているマキ、マキナちゃん。そもそもサイボーグ相手にそういうものをを感じ取ってくれようとする相手がいなかった。照れとかより、やっぱり戸惑いがあるかも。
「それより相棒さんのほうが何考えてんのか分かりづらいことあるよ。あーしはね?」
「あ、カートくん?確かにクールな感じで表情変わんないよねー。」
 マキナちゃんとチハルちゃんが言う。いやいやそれこそ逆でしょ、こんな顔面とカートの顔の造形は比べられない。
「いやいやいやいや、そんな筈ないでしょフツーに。」
 でもマキナちゃんとチハルちゃんは、互いに顔を見合わせるだけで、こっちに同意はしてくれない。
「じゃあ前提の話とか?表情変わる筈って思ってるところがあんまり変わんないから、余計に感情分かんないとか?」
 マキナちゃんが答えを探すように言うけど、カートそんなに無表情かな、そんな筈もないんだけど。
 でもそうだ。カートは最近変なんだ。
 カートのこと無表情だなんて思わない筈なのに、最近カートが何考えてるか分からない時がある。
「喋ればそんなことないけど、それまでは怖いって思っちゃうかも。」
 チハルちゃんが言う。
 そうだ。今迄そんなことなかったのに、何考えてるか分からない最近のカートが怖い。
「あはは、俺のほうがよっぽど怖いって言われてると思うけどね。てかそろそろ帰るね。せっかく呼んでくれたけど、カートにはバッテリーのことちゃんと反省させるから、ごめんね。」
 カートのことが分からないのが怖いから、今直ぐこの気持ちのまま、カートのところに行きたいと思った。
 俺らが途中で帰るのはいつものことだから、二人ともバイバイしてその日はお別れ。
 逸る気持ちを抑えてカートのところに戻ると、充電しながらソファで寝ていた。充電はもう済んでいて、予備バッテリーまでしっかり満タンなことを確認して満足する。
 それを見下ろしていると、むずがりながらカートが起きる気配を出す。表情で分かる。ほら、カートにはちゃんと表情があるし、俺には分かる、筈。
「おはよ。」
「おはよ……。」
「充電出来てるね。」
「ごめんって。マックス二人に言っといてくれた?」
「言った言った。カートがごめんって。」
……マックス俺のバッテリー管理してよ。」
 甘えた言いながら身を起こすカートの、その隣に座る。俺らの定位置。
「あなたねー、もー。」
 でもただの冗談の甘えだと思った言葉を、紡いだきりカートがこちらを見たまま動かない。茶化すこちらをじっと見詰めてくる。
 分からない。最近のこういうカートのことが。
「カートくん最近変だよ。」
 言っちゃった。
……何が?」
「今みたいにずっと俺のこと見て来る。」
「マックスも見てんべ。」
「それはあなたが先に見て来るからなんだろなって。」
 俺は間違ったこと言ってない筈だ。だけどカートは瞬き一つ。
「マックスが変じゃないのに俺が変なわけない。」
……俺?」
 え。なんで。
「きっかけは心当たりあんだろ。」
「うん。」
 あなたが変わったきっかけなら。
「ミルキーサブウェイでしょ?」
「そー。あのホーシカツドー。」
 目を細めたカートが、あのトンチキな出来事を思い出しているのが分かって、少し笑う。
「マックスありがとうって言われて喜んでたじゃん。」
「それはあなたもでしょう。」
「それはそう。」
 だから。
「だからそれ見て良いなって思ったから。」
……何が?」
「マックスが喜んでんの俺好きだから。その時、やっぱ良いなって思ったの。」
 またカートが見詰めて来る。分かんないよカート今何考えてるの。
「マックスありがとう。」
「え……?」
 何が。
「マックスいつもありがとう。仕事でも当然だし、そうじゃない時も俺のこと気に掛けてくれるし、一緒に遊んでくれるし、ゲームで怒っても一緒に続けてくれるし、一緒にトイレ行ってくれるし、俺のこと助けてくれるし、俺のこと分かってくれるし、一緒にいてくれるし、いつもありがと。」
 ちょっと待ってよ。
「それって、だって当然じゃん。俺らお互い様だもん。カートだって俺のこと。」
「うん。それでさ、お互いのこと分かってんじゃん俺ら。だからお互いに掛ける言葉はちゃんと言うし、逆に足りなくてもお互いだから分かってんじゃん。」
 だけどさって、カートが続ける。どんどん言うから、変だよって分からないよって俺が言ったことせっかくカートが話してくれてんのに、なんだか何かに溺れそうな気分になる。いっぱいいっぱいで、分かるのに分からなくなる。
「ミルキーサブウェイでありがとう貰ったじゃん。いや、金も貰ったけど。けど金とは別に嬉しかったべ、俺もマックスも。だからやっぱマックス喜ばしたいから俺は。俺がありがとうをもっと言いたいと思って。普段の普通の以上に。普通のありがとうだけじゃなくって。」
 カートからいっぱい貰ってる。何が何だか分からないけど。
「でも普通以上のありがとうってどのタイミングで言ったら良いか分からんくて。」
「分かった!機会を窺ってじっと見てたわけね!」
「そー。」
 でもそれじゃあさ、そんなん。
「俺もそうじゃん。」
「うん。」
「なのにカートが先に全部言っちゃうじゃん。」
「おんなしこと言ってくれても、マックスが言ってくれるってだけでいーよ。」
「まあそうかもだけどさ。てかありがとう言うために甘えて来るのは話逆じゃない?」
「でも俺もしてほしいことだし。」
「あなたねー、もー。」
 一先ずは。
「カートが今言ってくれた全部に。」
 ありがとう。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。