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hr32
2025-09-06 07:29:00
9671文字
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akkr
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私だけのお花屋さんでいてね(🌸🌱)
幼馴染設定軸🌸🌱でガーデンバース(特殊設定)
SS等ではなくネタメモの記号部分を名前表記や手直ししただけです
※🌸・🌱の一人称が途中から変化、幼少時の呼び方、🌱→🌸の呼び方等もぜーんぶ捏造
業界についても専門知識も詳しくない人間による創作です
◯設定簡易説明
ガーデンバース
一般的な人間とは別に稀に生まれる「花生み」と「花食み」という特殊体質を持つ者たち
花生み:
体のどこからか花を生み出す者
生み出すタイミングをコントロール出来なかったり苦痛を感じたりする者もいる
エネルギー消費が激しく一番の栄養は花食みの体液だが、相手がいない場合の栄養剤などもある
花食み:
花生みの生み出した花を食し、自分の糧にする者
花食みは何らかの能力に秀でている者が多い反面、性格・精神面に不安定なものを抱えている場合も多い
普通の食事も可能だが、花生みの花が一番栄養価が高く、さらに相性が良ければ、花食みに良い効果をもたらす
この両者は互いの特性上、相利共生の関係となっている
(原作者様まとめより要約)
------------------
人生に何度か、いろんな運命の出会いというものがあるというものがあると思うがその日は多分運命の日の一つだったと思う。
母親からお隣に年の近い子がいるご家族が引っ越してくるのよと言われ、好奇心が抑えられず母と一緒に引っ越しの挨拶に来た人を見に、玄関へとむかった。
そこには優しそうなお母さんとその後ろに半分ほど隠れている、私より小さい男の子がいてこちらを窺っていた。
挨拶を促されて、人見知りなのかこちらを気にしつつもなかなか話せなさそうなその子に多分少しだけお兄さんの自分が先に、というより我慢ができなくなったので、
「ぼく、しょうたろーっていうんだよ
かざり しょうたろう、よろしくね」
と話し始めた。
そうすると、あちらの子はもまだ後ろに隠れながらも
「その、ぼくは、わかくさ あきらっていいます
…
」と恥ずかしそうに答えて、またぴゃっとさらに隠れてしまったが、お母さん曰く今まで年の近い子がいなかったから照れてるけど、仲良くしてあげてくれると嬉しいと言うことだった。
何だか弟ができたみたいで嬉しくなったので、もちろん元気よく首を縦に振った。
お花をたくさん飾っている隣家は、花のいい香りがする、その匂いが移っているのか彰もその家族もいつも花の香りがしている
「お花 好きなの?」と聞くと
「ふつう」と楽しくもなさそうに返される
そんなことも気にせず、
「ぼくはだいすき!いいにおいだし、きれいだし、それに食べ
…
」
と余計なことを言いそうになって、親に止められた。
勝太郎は「花食み」として生まれた。
家族はそんな彼の特殊なところも彼の個性だと認めてすくすくと育ってきたが、世間的には偏見を持つ者もいることも知っていた。
その為、外でその話をすることはしないようにという約束だった。
たまに家族が持ってきてくれるお花がとーっても甘くておいしい素敵なものだということを新しい年下の友だちに伝えたかったけれど、秘密の約束は守らなくてはいけない。
残念な気持ちになりながらも「とにかくすてきなものだと思ってるんだよ」と伝えるたけれど、
彰は下を向いて「ふーん」というだけだった。
勝太郎はその後も親と一緒にだったり一人でだったりと頻繁に彰の家を訪ねた。
人見知りの友だちが気になるし、彰の家のお花たちは普通の花壇の花とはなんだか違う気がした
花屋さんに並んでいる花より、とってもいいにおいですごくすてきに感じるのだ。
ある日、彰がなにかの花を捨てようとしているところに出会った。
「捨てるんならちょうだい!」慌てて言うと渋っていたが、あまりにも必死な様子に少しずつ心を開いてくれていたのか「そんなにいうなら」と渡してくれた。とても嬉しかったので、思わずこれ以上ないくらい笑顔で受け取ってしまった。
なんだか気の抜けた彰もつられて笑ってしまい、これを機に度々お隣の家から、お裾分けの花を貰うようになった。
最初は彰の親も、勝太郎に花をあげると息子が言い出したことに驚いて心配そうにしていたが、にこにこ顔の勝太郎に毒気を抜かれて、お互いの家族ももっと仲良くなった。
勝太郎はもらった花を毎回とてもとても大切にした。でも、ずっと見ているとすごくお腹が空いてくる。
ダメダメ、せっかくもらった花なんだからと思ってはみるけれど、あまい香り、ほんのりすっぱい香り、ちょっぴりピリッとしたスパイスのような香り、どれも違ったおいしそうな匂いがした。
とうとう最初にもらった花の端っこを少しだけかじってみると、今まで食べたどんなものより美味しかった。最初のお花は酸味が強くてレモンのお菓子のような感じがした。
ハッとして思わずかじってしまったお花にごめんねと謝ったが、枯れてしまう前に食べることは大切にすることと矛盾しないのではないか?と思い直してみた。
でも、形がなくなってしまうのも惜しいと思ったので絵に残すことにした。それなら大事な花の思い出を形でも味でも覚えていられると思ったからだ。
花をスケッチする時はいつももらったときの彰のことも考えたが、最初の花をくれたときの悲しそうな顔はもう見たくないなと思った。
近頃もらう花はなんだかだんだんと違う味わいになってきていて、キャンディやマシュマロといったお菓子のようなあまい、でも他とくらべられないおいしさだった。彰もなんだか嬉しそうだ。
「家で溢れていた花をそんなに喜んでもらってくれるのは
…
うれしい」と言ってくれた時は思わず抱きしめてしまったけれど、すっごく怒られた。
最近の彰は人見知りが落ち着いてきてしっかり者になってきたから、注意されることも多い気がする。
でも、近くにいると花のいい香りがするところは昔から変わらなくて一緒にいると心地良い。
本当は描いた花の絵を彰にも見せたいけれど、秘密の約束の話も一緒にしなければいけない気がして、まだ見せられていない。
そのかわりに他の絵をたくさん描いてみせた。
いっしょに一つの飲み物やお菓子を分け合いながらわいわい話し合って、いろんな描きたい世界、ものについてたくさん話した。パラパラ漫画にして動かしてみたり大きい画用紙を繋げて大作を描いてみたりもした。その度に彰がキラキラした目でこちらを見て「すごいすごい!しょう兄ちゃん!」といつでも言ってくれるから、それは私の目指す夢を意識するきっかけにもなった。
彰とは学年が少し離れているので、中学校では少ししか一緒にいられなかった。
残念だと思っていたけど、多分彰も少し残念そうにしていたから、同じ気持ちだったんだと思う。
それでも、家に行って遊ぶついでに花をもらうのは変わらなかった。ここではいつでも2人でいられる、そんな時間を大切にしたかった。
でも、今日は決めたことを彰に言わなくてはいけない。そう決めて向き直り、意を決して伝えた。
「私
…
絵を描くのが好きだよ。」
「うん、僕も勝太郎の絵すごいと思っているよ。」
「だから、私の、私が表現したいアニメを作りたいんだ。
…
それで、絵を描いたりアニメを作る仕事に役に立つ学校に行こうと思ってる。」
「そっか
…
」
そっかともう一度、彰は呟いて下を向いてしまった。多分、この家から通える場所に学校がないことに気づいてしまったからだろう。
しばらくの沈黙のあと、努めて元気な様子で「一人暮らしとか勝太郎にできるのかよ
…
」とますます生意気になってきた彰が言った。
涙が出ているわけではないけれど、涙声に聞こえたのには気づかないふりをして頭を強めに撫でたらわき腹を殴られた。
甘い香りは今日もしていた。
それから、本格的に進学の準備に入った。
製作品の提出が必要とのことだったので、どんな題材にしようか悩んだ。
彰もたまに寂しそうな顔もするけれど、沈んでいる様子は見せなかった。
でも、自分が悲しませているのは嫌だなと思って、こちらにいる間はいつも会いに行った。
「こんなに僕の家に来て受験受かるのか?」って小憎たらしい笑顔でこちらを見てくる彰がほんのり嬉しそうにするのが私も嬉しかった。
それになぜだか彰に会ったり、もらった花を食べたらどんどんとアイディアが湧いてくるのだ。
やっぱり花はテーマにいれたい。花や草が芽吹く季節を描きたいな。それをいつも彰と話しているような全然違うジャンルとかに絡めたらどうなるだろう
…
。
ワクワクが止まらなかった。
家を離れるときには、家族からの激励と彰から餞別の花束が手渡された。
「いろいろと考えたんだけど
…
」と少し目を伏せて逡巡した後、
「やっぱりこれが一番喜んでくれる気がして
…
」とこちらを見て渡してくれた。色とりどりの花たちが鮮やかに美しくまとまった、心のこもった贈り物だった。
一人になってから、贈られた花を少しだけこっそり食べた。久しぶりにその花はちょっぴり酸っぱくて、はじめてもらった花の味に似ていて、懐かしくて少し涙が出た。
あれから大学生活はやりがいもあって楽しいことも多いけど同じくらい苦しいこともあって、その度に今までにもらった花を描いた絵を見つめた。自分で描いた絵なのにそこから甘い香りがするような気がした。
いよいよ煮詰まった時には、電車を乗り継いで実家に顔を出した。家族はいつでも暖かく迎えてくれたし、お隣に顔を出した時も彰は何でもないような顔をして、でもそわそわして喜ぶのを隠そうとしている様子がかわいいなと思った。
彰の家は相変わらず花に溢れていて、いまではもらってくれるやつも減っちゃって困っていると苦笑された。
「
…
今もまだ花ほしいの?」と確かめるように聞いてくる彰に「絶対欲しい!」と食い気味に言うと驚いた顔をした後に笑ってくれた。
実は今回の帰省では彰に聞きたいことがあった。
「
…
あきちゃんさー」
「もういいかげんあきちゃんはやめてよ
…
何?」
「
…
お」
「お?」
「お花屋さんにはならないで!」
「んん?」
私には一つ懸念があった。
あんな素敵な花を育てることができる彰はもしかしたら将来は花屋とかフラワーアレンジメントとかをする仕事に就こうと考えているかもしれない。
そしたら
…
そしたら、あの花は私だけじゃなく他の人達にも手渡されるということだ。もちろん彰の花は素敵だから皆に愛される花屋さんになるだろう。
私以外にも。
そう考えた時になぜだかとてもいやだなと思った
よくはわからないけれど。
彰はしばらく虚を突かれた顔をしていたかと思うと、弾けたように笑った。
「
…
な、なにそれっ!お花屋さんって!考えたこともなかった
…
っ」
ひとしきり笑った後に彰はそっと言ってくれた。
「俺が花を渡すのは勝太郎だけだよ」
特に喜ぶ人もいないと思うし、それになりたいものは他にあるし、と言っていたけど、それよりこれからも彰から花をもらえるのは私だけという言葉に安堵した。
それからも変わらない日々を過ごせて幸せだった
変わらず彰に渡された花は不思議と私に力をくれているようで、そのおかげもあってかアニメ制作の道に一歩一歩近づいていった。
一方で最近は彰も何かの勉強していることも多く忙しそうだ。なかなか2人でアニメや絵の話をする時間も取れなくて、彰の進路がだんだんと気になってきていた。
よくよく考えれば、具体的な話を一度も聞いていない自分にびっくりして、それから落ち込んだりもした。私は家族以外では一番に話したのに!と拗ねたような気持ちで彰に話すと興味ないのかと思ったと酷いことの後に、でもきちんと決まってから言いたいから内緒と言われた。
その後、何度かごねてみても彰は口を割ってくれなかった。
「びっくりした?」
いつも驚かされてばかりだから、たまには驚かせたくて。と彰が八重歯をのぞかせてニシシと笑って言った。
私といえば、まんまと心底びっくりして近くに越してきた彰を出迎えた。彰はこの春からこちらの大学に通うということだった、しかも
「俺も、一緒に勝太郎のアニメをつくりたい、つくるのを近くで見たい」
と言って、何がサポートする上で必要か、適切な職業かを調べて、取れる資格等をピックアップして勉強していたらしいことを聞いた。
他にやりたいことがあるって言ったでしょ。ときちんと驚かせられたことに得意げな彰に感極まって抱き着いて喜んだ。
また怒られるとハッとする私に呆れたように、もう慣れたし人前でやらなければいいよと彰は許してくれたので、もっと嬉しくなって力を込めすぎて、やっぱり怒られた。
それから、彰は新しい環境でも上手くやっているようだった。出会った頃はあんなに引っ込み思案の人見知りだった面影もなく、様々な年代の人や業種問わず関われる人と積極的に交流しているようだった。
「こちらに来たばかりの俺には人脈がないから」と将来を見据えて計画的に行動しているらしい。先輩方にも可愛がられているようだった。ちょっと面白くないけれど、それでも彰の一番のお兄ちゃんは私だし、一番の友だちも私なんだからなと心の中で張り合ったりもした。
私の方はといえば、最近調子が良い日が続いている気がする。ひたすら自分の世界を表現したくて活動していた様子がOBの目に留まり、いずれ自分の働くスタジオに来ないかと誘われた。まだまだ最初の一歩だけれど夢に近づいていくようで、すぐに彰に報告した。彰は誘ってきたOBとスタジオ名を聞いて端末で何かを見たあとに安心した顔をして、おめでとう!と祝ってくれた。
「
…
今回は何かな?」と私が楽しみに問うと
「催促するな
…
」と小さく文句を言いながらも
また前回とは違う花たちを贈ってくれた。生き生きとした花は生命力に溢れて相変わらず、すごくいい香りだ。このこたちも早く絵に描きたいと思った。
それにしても実家から離れて暮らしているのに、彰はいつでも花のいい香りがする。香水でもつけているのだろうか、それとも私に贈る花を育て続けてくれているからかな、そうだったら嬉しいなと思った。
スタジオで駆け出しとして働くようになった日々は目まぐるしく過ぎ去り、あっという間に月日が経った。まだ私自身の表現できるアニメを作る立場には遠いが、その準備段階だと力を蓄えることに専念する。
そんな中、彰から相談された。
「その
…
何社か、誘ってもらっているんだけど、勝太郎の働くスタジオに行っても」
「来てよ!まだ一緒の場所で働けるってだけだけど、私のアニメを一番応援してほしいのはあきちゃんだよ」
「
…
あきちゃんはやめてってば。仕事中に呼んだら困るでしょう」
そう照れたように言ったあとにありがとうとお礼を言われた。大学に入ってから少し明るくなった髪が日に透けて光って見えた。
程なくして、彰も同じスタジオで働くことになった。違う分野なのでほぼ会うことはないけれど、遠くでもお互いに頑張っているところをみるだけでなんだか心強い気持ちだ。
ただ彰は真面目で頑張り過ぎるきらいがあるのが心配だった。たまの休みもなかなか予定が合わず、直接様子が見られないので出来ることは応援するのみだ。それに自分も仕事が忙しく他のことを気にする余裕もなかった。
暇が無い中で、たまに贈ってくれる花を添えた「お疲れ様」のメッセージが癒しだった。私も何かお返しができないか考えて、イラストを添えた「そっちもお疲れ様」のメッセージを贈った。
下積み時代を忙しなく過ごして、お互いに少しずつキャリアアップを重ねてきた。
色々な人との関わりも増えて、私もつい最近に知り合った別のスタジオのアニメーターの方にお誘いいただいて、外で食事でもしながら話を聞く機会があり、とても参考になった。その際に通り道で彰を見かけたが、あちらも忙しそうにしていたので声はかけなかった。
そんな中、彰が入院したという話を聞いてしまった。仕事に身が入らない様子を見兼ねて、職場からも見舞いに行って来いとのお達しがあり急いで病院へ向かった。
病室に入ると少し窶れたような彰が待っていた。なかなか会えないうちに痩せたように見える。
「来ちゃったかー
…
」
バツの悪そうな表情をする彰が力なくそういうのを聞いてたまらなくなった。
「あきちゃん
…
」
「
…
なんか久しぶりにその呼び方聞いた気がするなぁ」
困った顔をしながらも少しだけ笑ってこちらを見た彰に一先ず状態が緊迫しているわけではないことに安心した。病院というのが残念だが、久しぶりにゆっくりと話ができる機会は素直に嬉しい。そう思いながら話をしていると、どこか違和感を感じた。
「香りが
…
」
「え?」
いつもしていた花の香りが少し薄い気がする。病室にも花が飾られているのにもかかわらずだ。病院の中で消毒の臭いもあるし、花のお世話ができないほどに忙しかったといえばそうなんだろうけれど、何かそれは違う気がした。
多分、私が話していない秘密があるように、彰も話してくれていないことがあるような気がしていた。それは放っておいたら取り返しがつかなくなる気もした。でも、その為にはまず自分の秘密を告白しなくてはいけない。
意を決して話をしようとすると、彰の方から話しかけてきた。
「突然の入院だったのにお見舞いありがとう。こんな時になんだけど
…
ちょっと聞きたいことがあって」
「何?」
「あの、この間一緒にいたのって、もしかして」
「この間?」
「レストランの前で2人でいたでしょ」
「ああ!あの時の。そういえば紹介しないとと思ってたんだ!忙しい日が続いていて忘れてた」
「そうか
…
」
「私たちのさあ!目指すアニメづくりのヒントになりそうな話をいっぱい聞けたんだ!制作進行の方面に詳しい人も紹介してくれるって。調子が良くなったら話聞きに行こうよ」
「え」
「え?」
彰は慌てたように俯いていた顔を上げたり周りを見渡したりして、目を瞬かせたあと深くため息をついた。
「そうかー」
「? うん、聞くでしょ?」
「そりゃ、もちろん」
その為にも早く治さないとな、と笑う彰は既にいつも通りに見えて、うっかり話に夢中になって秘密を打ち明ける機会を逃してしまったことに気づいたのはスタジオに戻ってからだった。
退院後は彰もまた忙しい日々に戻ったようだった。でも、入院には懲りたようでタバコは控えると決意表明していた。
「すごーい。私には到底無理だよー」と隣でヘラヘラしていたら、禁煙がうまくいくまで近くに行かないし、近づいてくるなと真顔で言われて全力で謝った。ついでにそっちも禁煙したらと言われたので、挑戦してみたけど、一日持たなかった。
それからもそれぞれ挫けそうになりながらも時には励まし合い、未来の事について語り合った。
そうして
…
そうして、とうとうこの日を迎えた。
私の初監督で彰の初プロデュースでもある作品が放送されたのだ。
大満足の出来かと言われれば、もっとあの部分はこうできたとか、もう少し時間があればあそこはもっと凝りたかったとか色々とあるけれど。スタジオで皆で見守る中、放送されたそれは間違いなく私たちの、スタジオみんなの努力の結晶で夢だった。皆一様に泣いたり笑ったりしていたが、涙を流して喜んでいるものが多かった。
ふと気になって彰の方を見ると彰もこちらを見ていた。目が合うと口パクでやったなと微笑んでいる。涙は出ていないようだった。
2人で改めて映像を見直したいねとは言っていたもののまたしばらくは慌ただしく、彰はあちらこちらへ挨拶や宣伝、お礼回り等忙しそうにしていた。私も落ち着かない日々が続き、いい加減気を張り続けるのも疲れた時、やっと揃って時間が取れそうな日を捻出して、念願の振り返り上映会を私の家ですることになった。
久々にゆっくりと家にいられる時間は貴重で彰も大分お疲れの様子だったが、上映会を楽しみにしていてくれたようだった。
給料もそんなにないが必要なものだけは妥協したくなかったので、部屋数や大きさに見合わずモニターは大きめのものを購入した。しばらく食事を切り詰めた甲斐があって、なかなかの迫力で狭い部屋で身を寄せ合って映像を見た、色々と反省を言い合おうと言っていたのに2人ともただ黙って見ていた。
私たちのアニメだ
そう思い隣を見ると彰が泣いていた、涙を流していた。泣いていることに気づいてないのかもしれないくらい、目線は映像にしっかりと向かっていたが、すべてが終わってスタッフクレジットもしっかり見てから、彰もこちらを見つめた。
花の甘い匂いが強く香り、それは彰自身からしているようだった。
「俺、監督
…
、勝ちゃん、勝太郎が好きだ」
こちらを見てそう言った彰は苦しそうだった。
涙の欠片が鮮やかな色に変わるのを呆然と眺めていた。彰の目から溢れた涙のひとつひとつが花に変わっていく。
やがてますます苦しげに「ごめん
…
」と呟いた彰に弾かれたように顔を上げて、慌ててその手を取った。
「こっちに、一緒について来て」
びっくりしてこちらを見る彰にそう告げて、奥の物置部屋と言っていた部屋へ連れて行く。廊下の途中に未だ流れ続けている涙が花に変わって、道ができている。
扉を開くと、後ろから息を呑む音が聞こえた。
そこは私のアトリエで、花園だ。
狭い部屋に足の踏み場もないほどの様々な色彩の絵は、今まで彰からもらった花々だった。
「昔から、きっと私の方がきみのこと好きだったよ」
そう言うと彰の目から新たな涙があふれてきて、思わず涙の出ている目元に顔を近づけて花びらを口に含んだ。
「えっ?はっ?」
「わぁ、今までで一番美味しい!」
それは本当に美味しくて
「甘酸っぱくておいしい、恋の味だ」
「な」
「?」
「何その恥ずかしい台詞みたいなの
…
、というか花、食べて?あれ
…
」
「うん」
花食みだ
…
と呟いている彰は驚きすぎて涙が止まったようだ。わたわたしている様子でこちらを見つめてくるのを落ち着くまで見守った。
そうして私たちは秘密について答え合わせをした。長い間お互いに言えなかったこと、本当は伝えたかったことをもう後悔しないように話しをすることにした。そしてそのままいつの間にか二人とも眠ってしまったようだった。
翌日、幾分か冷静になった彰が頭を抱えていたけれど、この素敵な花たちを本当はずっと彰に見せてあげたかった私はとにかく幸せな気持ちだった。
「不覚だった
…
」
「ん?」
「ずっと隠し通して勝太郎の結婚式のスピーチをするのが夢だったのに
…
」
「ええ、なんてこと言うの
…
」
「多分、相手は勝太郎をカバーできる世話焼きかすべてを受け入れてくれるおおらかな人だと思うから」
「なぜか相手の解像度が高い」
「こいつのことよろしくって言って、満足な気分で一人で酒を飲むのを想像していたのに」
なんてことだ
…
なんてかわいくないことを言っている。
「そうしたら彰は一人で泣いていただろうから、そばにいられてよかった」
と言って手を握ったら、彰は頬を赤らめて少し呻いていた。
そんなことを考えても無駄なのに。
絶対に来ない未来について考えるのはやめてほしい。
だって、これからも彰は私だけのお花屋さんなんだから
●ネタメモ中の花のイメージ(仮)
大体この辺をふわっと想像している
・最初に🌱が捨てようとした花
チグリジア
・選別の花束
チューリップ(黄)・ラナンキュラス(赤)・ハーデンベルギア・アネモネ(紫)・スイートピー・ネモフィラ・ムスカリ・カスミソウ
・就職祝い花束
ヒマワリ・アンスリウム・スターチス・ダリア・アルストロメリア
・病室にあった花
シュウメイギク・リンドウ・ワレモコウ
・涙の花
パンジー・スノードロップ・アネモネ・ローズマリー
ツツジ(赤・白)
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