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夜明 奈央
2025-12-26 06:01:45
4251文字
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五い 協力は惜しみません
現パロ中学生 くくあやのクリスマスデートを全面バックアップしてくれる勘の話(綾部は名前しか出てきません)尾浜家と久々知家の両親捏造
2025年12月24日初出(26日くくあやver.へ改稿の上投稿)
「勘右衛門、折り入ってお願いがあるんだ」
兵助がやたら畏ってそう申し出てきたのは今から約3週間前、12月の初旬のことであった。
「クリスマスイブを恋人と2人で過ごしたい」
兵助の話を要約すると、そういうことだった。
兵助が1つ歳下の喜八郎と所謂お付き合いを始めたのが、今年の夏。半年程の間大きな波風もなく順調に仲を深めてきた2人にとって、クリスマスは初めて訪れる恋人たちの一大イベントである。男として、先輩として、かっこよく決めたい気持ちは勘右衛門にも痛い程理解できた。
「で? 俺は何をすればいいんだ?」
「イブの日、勘右衛門の家でクリスマスパーティーってことにしてほしい」
「アリバイ工作ってことか」
「そう。うちの母さん、クリスマスには毎年張り切ってケーキ手作りするから、デートなんて行ったら絶対『連れてこい』ってうるさいに決まってる」
「ああ、うん。なんか想像つく」
恋人との仲を揶揄われるのは誰からだってあまり好ましいものではないが、その相手が親であれば尚更だ。なんなら勘右衛門たち中学生にとって恋人の存在を最も知られたくないのが親だと言っても過言ではない。
喜八郎だって恋人の家族と初対面でいきなりクリスマスパーティーなんて気まずいだろうし、何よりせっかくなら2人っきりで過ごしたいものだ。自分から甘えてくることが滅多にない親友の頼みである。勘右衛門がひと肌脱ぐにはそれで十分だった。
「おっしゃ任せろ!」
力強く頷くと、兵助がほっとしたように相好を崩した。
「どうせアリバイ工作するなら本気でやろうぜ! プレゼント交換とか!」
「そうだね、プレゼント交換くらいなら学校でもできるし」
「いやいやそこはちゃんとやろうぜ。どうせ1回家帰るんだろ。怪しまれるじゃん」
「そこまでする必要ある?」
「あるある。お前はそういうとこ詰めが甘いんだから」
そうして2人は綿密に計画を立て、仔細な口裏合わせを行ったのだった。
× × ×
月日は流れてクリスマスイブ当日。この日は終業式の日でもあった。半日で学校を終え、部活動に励んでから帰宅しても辺りはまだ十分明るい。勘右衛門は部活動を終えて帰宅すると、兵助が来るのを今か今かと待ち構えていた。
しばらくすると、やたら大荷物の兵助が現れた。
「多くない?」
「母さんが世話になるんだから持ってけってうるさくて」
兵助が差し出したのは、焼き菓子の詰め合わせだった。おそらく手作り。ケーキでないのは被りを避けたからか。
「マジ? やった! おばさんのお菓子美味いんだよな」
「ふふ、好評だったって母さんにも伝えとくよ」
「おう、こっちは任せて上手くやれよ」
それから玄関先で、それぞれが準備していたプレゼントを手早く交換する。これでクリスマスパーティー偽装のミッションは概ねクリアだ。
「駅前のイルミネーション見に行くんだろ? いい雰囲気になったらちゅーくらいするんだぞ」
「うるさいな。そんなの俺の勝手だろ」
「せめて手は繋げよ」
「ほっといてよ!」
揶揄うとぷりぷり怒っているが、どうせ兵助だって似たようなことは画策しているはずだ。なんたってクリスマスにイルミネーションだ。そんな絶好の機会を逃すようでは男が廃る。
実際兵助たちがどこまでいっているのか正確には知らないが、もう付き合って半年なのだから早すぎるということはないはずだ。
「俺もう行くから!」
「おう、男見せろよ〜!」
「だぁから! ほっといてってば!」
ほんのり頬を紅く染めた兵助に檄を飛ばしながら見送って、玄関の扉を閉める。
「母さーん! 兵助から焼き菓子もらったー!」
「あらそうなの? 嬉しいわ。あっ、やっぱり手作りね〜正直期待してた!」
キッチンでせっせとクリスマスディナーの準備に励んでいた勘右衛門の母親がひょっこりと顔を出す。ちゃっかり図々しいことを考えていたらしい。勘右衛門も口には出さないがほとんど同じことを考えていたので、こういうところはやっぱり親子だなぁと思う。それから母は嬉々として兵助の母親宛に電話を掛け始めた。
ぶっちゃけ今回のアリバイ工作における肝はこれである。勘右衛門の母親と兵助の母親は大変仲が良い。しょっちゅう長電話をしていて、家に遊びに行くと必ず「うちの子がお世話になります」と電話し合っている。すぐに世間話に移行しているので、挨拶より喋るのが目的であることは間違いない。今回は勘右衛門の母から掛けたが、そうしなくても兵助の母親から掛かってくるのは時間の問題だ。勘右衛門が母に伝えていなければ、当然兵助の不在はあっさりとバレてしまっていたことだろう。つまり今回の口裏合わせには勘右衛門の母も1枚噛んでいるというわけだ。
リビングのソファでゲームをしながら、電話の内容を聞くともなしに流し聞きする。内容を聞く限り、母は上手くやっているようだった。この話をした時には「何それ面白そう」と子供みたいにはしゃいでいたし、昔からサプライズだのなんだのが好きなタイプだ。嘘が顔や態度に出ることもないので、あまり心配はしていない。
「夕食の支度があるので今日はこの辺で
……
」といつもよりは短めの電話を切ると、母は指で丸を作ってにっこりと笑顔を向けてきた。あまりきちんと聞いていなかったが、どうやら上手くやったようだった。
後はいつも通りの団欒。尾浜家水入らずのクリスマスパーティーを楽しむだけだ。
しかし、世の中そう上手くはいかないものである。
日が落ちてしばらくした頃、勘右衛門の父が帰宅した。
「そこで久々知さんに会ったよ」
父がコートを脱ぎながら話し始めた内容に、勘右衛門と母の間には激震が走った。父の言う久々知さんとは、兵助の父親のことである。
「「えっ」」
勘右衛門と母が同時に声を上げ、視線が集中したことで父がびくりと肩を揺らす。
「やっぱり何かあるの?」
「何かって
……
」
「いや、兵助くんが家に来てるみたいなことを言ってて話が噛み合わないなと思って
……
」
完全に見落としていた。久々知家とはご近所さんなのだから、今までだって帰りに偶然ばったりなんてことは時々発生していた。だから十分あり得る出来事なのだが、すっかり忘れていた。
「ご、誤魔化してくれた
……
?」
「どうだろう。途中で気づいて適当に話を合わせたけど、あれで誤魔化されてくれたかは
……
」
勘右衛門と母の顔を見て、父の顔がどんどん曇っていく。
「ごめん、やっぱりまずかったみたいだね。教えといてくれれば父さんだって話を合わせるくらいしたのに
……
」
「いや、うん
……
父さんは悪くないよ。俺らが話してなかったのが悪いだけで」
約3週間掛けて綿密に練った計画がこんな単純なミスでおじゃんである。兵助に「詰めが甘い」なんて偉そうなことを言ったが勘右衛門も大概詰めが甘かった。
しかし、今更後悔したところでどうすることもできない。もしかしたら親に怒られるかもしれない兵助にひとまず「ごめん、バレたかも」とだけメッセージを送る。母は悔しそうにしつつも、のほほんとしてあまり気にしていないようだった。おそらく然程重大なミスとは思っていないのだろう。
一方で勘右衛門は気が気でなかった。家族団欒の合間にちらちらとメッセージ画面を確認するが、一向に既読はつかない。デートが盛り上がっているのは良いが、せめて帰宅するまでには気づいてほしい。
今回の件がバレたところで、兵助が理不尽な罰を受けたり行動を制限されたりするとは思わない。精々嘘を吐いたことを叱られるくらいのはずだ。勘右衛門の失敗についてだって、兵助が怒ることはおそらくないし、もちろんこれで友情に亀裂が入るなんてこともないはずだ。だけどあれだけ大口を叩いてこんな結果になってしまった自分が、ただただ情けなかった。
寝る頃になって、ようやく兵助から返信が届いた。
「ありがとう。助かった。こっちは大丈夫そうだったけど、何かあったの?」
なんだかよくわからないが、どうやら兵助のデートもアリバイ工作も上手くいったらしい。こちらからも色々と聞きたいことはあって、話せば長くなりそうだった。
「明日話す」
短いメッセージを送ると、今度はすぐにスタンプが返ってきた。なんと説明するか悩みながら、ひとまずその日は眠りに就いた。
× × ×
翌朝はクリスマスである。中学生にもなってサンタの存在を信じているわけもないが、今年も枕元には律儀にサンタからを装ったクリスマスプレゼントが置かれていた。机の上にクリスマスに欲しい物ランキングを置いておいたから、中身は開けなくても大体予想がつく。親の予算とプレゼントの大きさから、おそらく2位に書いたあれだと推察する。
腹が減っているのでプレゼントを開けるより先にリビングに降りていくと、朝食の支度をしていた母がすぐに勘右衛門に気がついた。
「勘右衛門、新聞取ってきて〜」
「ふぁーい」
早く朝食が食べたかったが、母に逆らうと面倒だ。大人しくポストを見に行くと、ちょうど向こうから兵助の父親が歩いてきた。今から出勤なのだろうスーツ姿で、向こうもこの偶然に少々驚いたようだった。
「おはよう、昨日は兵助が世話になったみたいだね」
「はあ、おはようございます」
勘右衛門は結局何がどうなったのか事の顛末がよくわかっていない。兵助の父が言っているのがアリバイ工作に加担したことに対してなのか、単純に一緒にパーティーをしたことに対してなのか判断がつかない。そもそも兵助の父とは顔見知り程度で、人となりを知る程親しくないのだ。
「ああ、母さんには言ってないから安心してくれ」
勘右衛門が警戒を滲ませているのに気づいたのか、兵助の父親がぱっと相好を崩した。驚いている勘右衛門に向けて、ウインクまで投げてくる。それがあまりに下手くそで、こういうことをやり慣れていないのだということは簡単に予想がついた。
「ありがとう、ございます」
「はっはっは、うちの息子がすまんね。これからも仲良くしてやってくれ」
兵助の父親は颯爽と去っていく。その姿が見えなくなってから、急に力が抜けた。どうやら全てお見通しの上で黙っていてくれたらしい。この調子なら、兵助の母親も一体どこまで騙されてくれているのやら。
案外実の息子のことなんて、全部お見通しなのかもしれない。
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