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アサヒ
2025-12-26 03:44:11
1811文字
Public
忍たま(鉢雷)
お題『木戸番』
鉢雷ワンライ(#8828_1draw )に2025/10/28に投稿したもの。
(Web向けに改行だけ追加しています)
出かける準備をしている雷蔵の背中を見ながら、私は派手に不貞腐れていた。
事の始まりはこうだ。
夜を徹した忍務明けの今日、私は気晴らしに団子でも食べに行かないかと雷蔵に声をかけた。
すると、すまなそうな顔をした雷蔵から「ごめんよ、今日はきり丸のアルバイトを手伝う約束をしているんだ」と断られてしまった。
それは少し残念だったが、まあ別に構わないんだ。後輩思いなのは雷蔵の素晴らしいところでもあるからな。
良くないのはここからだ。
私はいつものように「なら一緒に行くよ!」と応えたのだけど、雷蔵はさらりと「いや、僕一人で行くから大丈夫」とそれを断った。
……
えっ、断られた?
不破雷蔵あるところ、鉢屋三郎ありだというのに?何故だ!?
ショックを受ける私を見かねてか、「お前は忍務明けで疲れているだろうから」と優しい声でフォローされたが、そんな慰めの言葉よりも同行の許可が欲しい。
しかし雷蔵はなんだかんだと言葉を濁し、とうとう同行の許可をくれないまま一人でアルバイトに向かってしまったのだった。
――
なんて、大人しく置いていかれる私だとも思ったか?まさか!
当然のようにこっそりと後をつけた私は、気づかれないように雷蔵を監視できる地点に位置取った。
今日のアルバイトはいつかのように木戸番だったらしく、にこやかに客引きをする雷蔵をじっと見つめる。
いつも観察している顔ではあるが、やはり雷蔵の顔は良い。
見ているだけでこっちまで笑顔になる。
おや、少し眉の形が変わったか?長屋に戻ったら面を調整しなくては。
後は最近鍛錬を頑張っているからか、肩のラインが随分としっかりしてきたな。私も鍛えた方が良いかもしれない。
……
って違う。今日は雷蔵に見とれている場合じゃない。
わざわざ私の同行を断って行ったってことは、きっとそれなりの理由があるはずなんだ。
そう、きちんと見極めなければ。
忍務の類ならば良い。だが
……
そう、これは仮定の話で、万一にもあり得ないとは思うが、なんなら想像もしたくないんだが、もし他に良い人が出来ていたりなんかしたら
……
したら、私はどうすればいいんだろう。
いつの間にか地面へと落ちていた視線を雷蔵に戻す。
さっきと変わらず、朗らかに声を上げて呼び込みをしている様子を見てほっと胸を撫で下ろす。
こちらに気づいた様子もないし、不審な人物との接触もない。見知らぬ女子と長々話し込んでいる様子もない。
これなら問題なさそうか?じゃあ、なぜ私を置いていったんだ?
それにしてもやはり雷蔵は可愛い
……
ってだから違う。今日は見とれている場合じゃないんだってば、私!
そんな(ある意味不毛な)時間を過ごしているうちに興行も終わったようだ。
持ち場を離れてきり丸と少し話した雷蔵が、ぐうっと大きく伸びをした。
「ふあ、疲れた~
……
〈いるんだろう、三郎?出ておいでよ〉」
風に乗って届いた矢羽音にぱち、と瞬きをする。
気付かれていたか。ならば隠れている理由もない。
大人しく姿を見せて、雷蔵の肩にのし、と腕を乗せる。
「気づいていたのかい?」
「そりゃあ、まあね」
そう言うと、雷蔵は微かに苦笑した。
「本当に、忍務明けで疲れているだろうから、お前にはゆっくり休んでいてほしいと思っただけだったんだよ。なのに結局ついて来ちゃうんだからなぁ」
「一人でいるより、君のそばにいる方がずっと休まるんだから仕方ないだろう?それに
――
」
他に誰か良い人でも出来たんじゃないかと心配になって、と言いかけて口を閉じる。
純粋に気遣ってくれた雷蔵に対して、これは言うべきではないことだ。
「うん?」
「いや、なんでもないさ」
「もしかして三郎、何か不安なことでもあったのかい?そんな顔してるように見える」
「
……
ははっ、君には分かっちゃうんだなぁ。でも大丈夫、君を見ていたら解決した!」
「本当?それならいいんだけど」
はっきり頷いて肯定してみせると、首を傾げていた雷蔵がぱっと笑顔になった。
「じゃあ、せっかくここまで来たんだし、一緒に団子を食べて帰ろうよ。僕がおごるからさ」
「いいね!しんべヱからあっちの峠に美味い店が出来たって聞いたんだ」
「それは期待できるね。よし、行こう!」
当たり前のように伸ばされた手をしっかりと握る。
うん。やはりついて来て良かった。君のそばには幸せあり、だ。
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