望月 鏡翠
2025-12-26 01:12:56
1073文字
Public 日課
 

#1945 ディルストーン居城にて10

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作


 バンデイアには傭兵が多くいて、彼らは命を金に換えるために戦火の絶えぬ土地にやってくる。トルガの策はこの隙に兵力を増強しようとする他国の動きを警戒してのものだが、それで止まるわけがない。
 国はどうあっても一枚岩にならない。
 あまたの思考が絡み合い、大きな波を作ることがあるだけだ。レシーはバンデイアが欲しいと思っているが、裏を掻いて自分だけ儲けようと考える者もいる。
 レシーに傭兵を送り込むのをやめて欲しいと言ったところで、全員がいうことを聞くわけがない。
 いつだって禁製品が一番金になるのだ。そうした人間と連絡を取れば、密輸の技術を感じられるだろう。
 海岸線の監視は抑止となり、他家の叛意を炙り出す。それでもいっかな消えはしないものだ。兵力を整えようとするサンドリエイルの動きを止めるのは難しいだろう。アンタイアーも、玉座を狙って兵力を増やしているところかもしれない。
 そうした動きはレシーを封じたとて、止められぬものだ。
 無意味だからいい子にしている犬から餌を取り上げるのはやめてくれというのが、トルガの主張だ。そのあけすけな内心を直接言葉にはしないが、誘導はする。
「それよりも、バンデイア諸国にいるレシーのものは、ディルストーンの許しの元にあるのだと今一度知らしめるべきなのではないでしょうか」
 執政はトルガの出方を待つように目を細めた。
「そのような方法があるのか。リュネストの家訓はこちらにも届いているが」
 折れぬ、曲げぬ、まつろわぬ。
 トルガ自身も正しくリュネストに名を連ねるものではないが、その魂を確かに受け継いでいる。
 異なる文化、異なる習慣、異なる神を信じる者が一つになることは難しい。無理やり束ねようとすれば、どちらかがどちらかを飲み込むより他なく、歪みと反発を生む。
「我が国では女を尊び、信仰は彼女たちの導きとともにあります。美しき花を受け入れていただければいうことはありません」
 執政は鼻で笑った。
「貴殿の国の信仰を受け入れよと。それをして我らの国に、何の得がある」
「先ほど申し上げた通りです。既にこの国には無視できない数のレシーのものがおります。彼らを精神的支柱を、ディルストーンが握るのです」
 人がやってきたのなら、信仰も必ず国に入ってきている。今は形を取っていないが、見えないからと言って存在していないわけではない。国内の情勢が不安定になれば、彼らも拠り所を求める。現状、バンデイアの中でそれを提供できるのは、本国と繋がりがあるリュネストしかない。その状況を変えられるのだ。