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吾妻
2025-12-25 20:33:29
2369文字
Public
アークナイツ
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My present is……
テキ博♀。つきあってる。公式の動画で「クリスマス」があるっぽい言及があったのでクリスマスの話です。25日が終わるまでクリスマスだ!
「君、何か隠し事してるだろう?」
「えっ
……
?」
しばらく悩んだ結果、ドクターは眼前の青年に直球の問いを投げてみることにした。
回りくどい方法を用いたところで、取り繕われては意味がない。〝彼〟は用意周到な男だが、突発的事象に対してはそこそこ動揺するタイプだ。搦手よりもむしろ正面からぶつかったほうが成果が出しやすい。
事実、長期任務から戻ってきたばかりの彼
――
テキーラは、トレードマークの笑顔を取り繕う事も忘れて、挙動不審に視線を彷徨わせた。
狼狽は一瞬だったが、何よりも明確な証拠だ。本人も己の不利を悟ったようで、気まずそうに視線をそらしつつも、下手な言い訳はしなかった。
「ええと
……
その
……
」
「私に話せないようなこと?」
「そういうわけじゃないんだけど
……
」
どうにも煮えきらない。まずもって、執務室に入ってきたときから様子がおかしかった。
挙動不審というよりは、どことなく落ち込んでいる様子に見えた。業務自体には特にトラブルもなかったはずだし、何なら予定よりも数日早く本艦に戻ってきたくらいだ。
だというのに、今日は随分とおとなしい。出張帰りで疲れているのかとも思ったが、いつもは元気よく揺れている尻尾も力なく垂れ下がっていて、明らかにおかしいのだ。
様々な可能性を脳内で検討していたら、とある嫌な予感にぶち当たった。
「まさか、怪我をしたのを隠しているんじゃ
……
!」
「ち、違うよ! それは本当に違うから! 心配させてごめん。ただ
……
ちょっと
……
」
長身のペッローはしょんぼりとうなだれ、体躯に似合わぬか細い溜息をついた。
「ちょっとだけ、恥ずかしいというか、申し訳ないというか
……
」
「君と私の仲で? 今更?」
さすがにちょっぴり面白くなくなって、ドクターは唇を尖らせる。
彼とは職務上は上司と部下だが、プライベートでは恋人関係にある。それなりに強固な信頼関係を築けていると思っていたのだが、自分の勘違いだったのだろうか?
すると、しょぼくれていたペッローはハッと顔を上げて、尻尾を一度ふわりと揺らした。その表情に隠しきれない喜びが滲んでいたのを、ドクターは見逃さなかった。
「じゃあ白状するけど、笑わないでくれる?」
「
……
わかった」
それは内容によるだろ、と思ったが、それを言ってしまえば話が前に進まない気がして、ドクターは素直に頷いた。
テキーラは一度深呼吸をしてから、決意が八割、逡巡が二割こもった双眸でドクターを見つめ、そして。
「どうしても今日、君と一緒に過ごしたくて、急いで帰ってきたんだけど
……
」
「今日? もしかして」
「そう。クリスマスだからさ。プレゼントと一緒にサプライズ!
――
を、したかったんだけど
……
」
「うん」
「出先で調達したプレゼントを別便で届けてもらうように頼んだら、輸送が遅延してるらしくて、今日届かなくなっちゃってさ
……
」
「
……
うん」
「結局、俺だけ先に戻ってきちゃって
……
」
「なるほど
……
」
事情説明を終え、テキーラはもう一度か細い溜息をついた。
なんとも彼らしい理由ではある。
エルネスト・サラスは、用意周到に場を整えることに関しては完璧主義だ。
あらゆる可能性を考慮して、不確定要素をできる限り潰し、自身の考えたプランを完璧に演出したいタイプなのだ。
プレゼントが届かなかったから。それだけなら、些細なアクシデントにも思えるが、おそらく彼にとっては痛恨のミスだったのだろう。
だが、長距離輸送には不確定要素が多すぎる。それこそ、途上に天災が発生でもすれば、大規模な迂回を強いられる。個人がコントロールできる範疇を超えるのだ。
ドクターは、しょんぼりと肩を落とす大型犬を前に、少しだけ考えた。
『気持ちは嬉しいし、そのうち届くんだから気にしないで。私も全然気にしていないから』。今思っていることをそのまま出力すれば、こうなる。しかし、それでは彼はしばらく元の調子に戻れないのではないか?
エルネストはからっとしているように見せかけて、内面はかなり繊細だ。そんな彼の細やかさこそを、ドクターは愛しているのだが。
だからといって、せっかくの聖夜に。せっかく急いで帰ってきてくれたのに。これ以上落ち込んだままにさせておくのは可哀想だ。
いくつかの対応策を脳内でシミュレートし、最終的にドクターは、不敵な笑みと共に恋人を見上げた。
「じゃあ、君がクリスマスプレゼントってこと?」
「え
……
」
テキーラは、頭部の耳の根本を軽く持ち上げ、ぱちぱちとまばたきをして、ドクターの言葉を咀嚼する。やがて、恋人の発言の意図を飲み込んだと見えて、恥じらいの混じった苦笑を浮かべた。
「ドクターはそれでもいいの?」
「君がいないと始まらないだろ?」
プレゼントだけが届いたって、意味はない。彼が選んだ品物なら、きっととびきり素敵な贈り物だろうけれど。送り主がいなければ話にならない。
「今夜はクリスマスプレゼントくんと一緒に美味しいお酒が飲みたい気分だな」
正直、まだ細々とした仕事は残っていたが、プレゼントが自分から歩いてきてくれたのだから、残業をするのは野暮というものだ。
勤怠システムにログインをして退勤処理を済ませ、ドクターはデスクチェアから立ち上がった。
「君のおすすめを見繕ってくれる?」
立ち尽くしている恋人の傍らに立ち、以前イカサマを見破ったときのように袖口を掴んで引っ張ってやれば。テキーラは、困ったように眉尻を下げ、諦めたように口の端を持ち上げた。
「もちろん。喜んで」
身を屈めた男が頬にそっと触れるばかりのキスを落としてゆく。
青年の後方からは、ふさふさと尻尾の揺れる音が聞こえ始めていた。
【おわり】
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