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悠
2015-06-10 23:07:33
863文字
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この日だから伝えたいこと
気付けばもう、時計の針が重なり合うまであと少し、というところまで来ていた。
彼にとって、今日はとてもとても大事な日。
彼の家族にとって、周りの人々にとって、それは当然、俺も含めて。
ケーキを囲み、プレゼントを渡して、新たな1年の始まりを祝うのだ。
1日のスタート、つい23時間前にはラインで1番に彼に祝福の言葉を投げかけたのだが、俺の思惑はそんなことではない。
彼に伝えた言葉のひとつひとつに嘘偽りはないし、それも伝えたかったことではあるけれども、もうひとつ。
時計の長針が、カチリ、と音をたててひとつ進む。
その音にまたひとつ、心臓が跳ね上がる。
今日のうちに、と心に決めていた言葉は、まだ声にできることなく燻っていた。
またふたつ、時計の針が進む。
焦ってきた。
いや、布団の上に胡座をかいたまま考え事をしている姿はなかなかに普通ではないだろう。
もはいえ、時間は差し迫っている。
何かここでひとつ、タイミングを見つけなければ。
「ん?」
チカチカと光るスマホのランプ。
指をスライドさせて通知の内容を見る。
『岩ちゃん』
「は?」
彼は今頃まだ風呂に入っている時間のはずだ。
慌てて正座してその内容を確認する。
『外』
「え?」
とにかく時間がない。
彼の部屋と面したガラス戸を思い切り開くと、そこには風呂上がり、ということがまるわかりの肩にタオルをかけた姿。
「よ」
「よ、じゃないよ!風邪ひくって言ってるでしょ?!」
「すぐ戻るっての」
ふ、と岩ちゃんの口角が緩む。
「誕生日だからな」
勝ち気なあの笑顔じゃなく、本当に気の緩んだ柔らかな笑み。
どきり、と鼓動が跳ねて。
「岩ちゃん!」
胸につかえていた言葉が、溢れる。
「好きだ」
「お前のこと、」
もう一度。
そう思ったところで、時刻が変わる、アラームが鳴る。
「ばーか」
赤く色づいたことが、分からないはずない。
夜空のもと、満天の星空の中で照れたように笑う彼の笑顔は、ずっとずっと、忘れられないものになるだろう。
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