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采
2025-12-25 00:38:59
2408文字
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【イルンズ】贈り物
クリスマスのイルンズ(付き合ってる)
付き合ってるけどプラトニックなふたり
ナシャタウンを歩いていると、久しぶりに聞く声がした。
「おお、フリンズ!ちょうど良かった、今からお前に手紙を出そうと思ってたところだ」
「ニキータさん」
こちらに手を振って近づいてきた彼は、いきなり肩を組んでくると、小さな声で続けた。
「少し話があるんだ、今いいか」
「はい、どうされたんですか」
「
…
ここじゃあれだからな、酒場で話そう」
そうしてやってきたフラッグシップ。
「それで、話って?」
深刻な顔をしたニキータは、周りをきょろきょろと見回してから、低い声で話し出した。
「実はな、お前に内密に頼みたいことがあるんだ」
「なんでしょう」
「
…
クリスマス」
「
…
え?」
「クリスマスの晩に、俺の代わりにイルーガの枕元にこっそりプレゼントを置いておいて欲しいんだ。
──── あいつはまだ、サンタクロースを信じている」
衝撃だった。年齢に対して大人びた、肝の座った立派なライトキーパーであるイルーガに、そんな可愛い一面があったなんて!
「俺はその日、どうしても家に居られないんだ。プレゼントはこちらで用意する。イルーガにはもうその日は夜明かしの墓に泊まるように言ってあるから、お前は夜中にプレゼントを置いてくれるだけでいい」
断る理由などどこにもなかった。フリンズはこのイルーガの夢を守る任務を二つ返事で請け負った。
今年は僕が坊ちゃまのサンタさん。そう張り切ったフリンズは、部屋のクローゼットに、自分がイルーガにあげるプレゼントと、ニキータから預かったプレゼントを隠して、夜明かしの墓の、いつも生活感のない自室をクリスマス仕様に飾り付けてからクリスマスイブ当日を迎えた。
「わぁ、クリスマスの飾りじゃないですか!可愛い!これ、ぜんぶ君がひとりで?」
「ええ、イルーガ坊ちゃまが来るというので少し張り切ってしまいました」
2人で、これもクリスマス仕様の晩御飯を平らげる。目にも美しい料理を大好きな人と囲むのはとても楽しく、フリンズは漸くクリスマスを恋人と過ごす人間の気持ちを理解した。
片付けた後、満腹で眠くなったらしいイルーガが大きく欠伸をする。
「ふわぁ
…
ぁ、眠くなってきたからそろそろ着替えないと。この前泊まった時にパジャマ置いていきましたっけ、僕」
止める暇もなかった。直ぐにバタン、と彼はクローゼットの扉を開けて
…
「あ」
そこには、2つ、プレゼントが。
「あ、坊ちゃま、それは
…
そう、この前、サンタさんと鉢合わせたんですけど、今年は忙しいから代わりに坊ちゃまに渡しておいてくれって頼まれまして」
一瞬きょとんとしたイルーガは、一拍おいて笑い出す。
「ふふ、
…
っ、あはは!」
「
…
?どうされたんですか」
「いや、僕、もうサンタクロース信じてませんよ」
嘘は言っていない顔だ。
またもや衝撃である。
まあ薄々、そんな気はしていたが。
「そう
…
なんですか?」
「はい、義父さんが毎年、僕にサンタさんの正体を気づかれないようにと頑張るのが、なんか、
…
嬉しくて、言うタイミング逃しちゃったんです」
今年は義父さんが家に居ないからフリンズさんに頼んだんでしょう?と笑うイルーガ。全てお見通しのようだ。
「開けていいですか?」
「どうぞ」
ニキータから託されたプレゼントの方からは、可愛らしい装丁の本が出てくる。
「ずっと欲しかった本だ!
…
こっちは?」
「そちらは、僕から」
「え!」
中からはふわふわとしたマフラーが出てくる。
「坊ちゃま、首元を暖かくして風邪を引かないようにしてくださいね」
「ふわふわだ!あったかい
…
ありがとうございます!
…
僕からも、あるんですけど」
差し出されたのは、掌に乗るくらいの小箱。
開けていいですか、と聞くと、緊張したような面持ちでイルーガは頷く。
開けると、そこには美しい薄い黄色の石が嵌った指輪が入っていた。
「あ、あの、重いとか思わないでくださいね!別にペアリングでもないですし、その、石を見た時に、君の瞳の色みたいだなと思って、つい」
イルーガが珍しくあたふたとしているのを見て、思わず笑みが溢れる。
つい買った、言うには、この指輪は美しすぎる。目が肥えているフリンズからしても、なかなか質の良いものだと分かる。以前ニキータから、最近イルーガがお金を貯めているらしいと聞いたことがあったが、あれはおそらく。
「嬉しいです、坊ちゃま。こんなに美しい指輪を贈ってくださって。今までどんな宝石を手に入れた時よりも、嬉しいです。
…
ありがとうございます」
ぱあっとイルーガの表情が明るくなる。
「ですが坊ちゃま、ひとつ忘れていませんか」
「
…
?何ですか?」
きょとん、とした表情がとても愛らしい。
「恋人に指輪を贈るなら、嵌めるところまでご自分でして下さらないと」
両手の手袋をゆっくりと外す。さて、彼はどこに付けるだろうか。
「あの、どこに
…
付けたら」
「坊ちゃまにお任せします」
数十秒逡巡して、耳を真っ赤にした彼は、思い切った様子で僕の右手を取り、薬指に指輪を嵌める。スネージナヤで、右手の薬指に指輪を嵌めるという、その意味は。
「あの!あくまでも、
…
予約、です、けど」
「分かっていますよ」
よくできました、と言うように彼の頭を撫でると、また子供扱いして
…
とイルーガが頬を膨らませる。
「あの、フリンズさん」
「何ですか?」
「クリスマスって、プレゼントを贈り合うのもそうですけど、最近は恋人と過ごす日でもあるらしいですよ」
へぇ、と呟いた瞬間、胸の中にイルーガが飛び込んできて、ぎゅう、と抱きしめられる。
「だから、その、今日はこうしていても、いいですか」
「勿論です」
規則正しい寝息と、あたたかい体温を腕の中に感じながら眠りに就く。
これも最高のプレゼントだな、と思いながら、フリンズは目の前の愛おしい人のつむじ、そして薬指の指輪に唇を落とした。
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