Hizuki
2025-12-24 22:05:34
1776文字
Public あんスタ[零薫他]
 

サンタクロースは左隣に

【あんスタ】零薫。サンタからクリスマスプレゼントをもらった薫の話。同棲してる。もちろん正体は分かってるけれど。



「今日は随分ご機嫌じゃのう?」
「ん?そう見える?」

次の現場に向かう途中、隣を歩いていた零くんから、ふとそんな声が飛んできた。いつも通りにしているつもりだったけれど、零くんには見透かされていたらしい。今朝は俺の方が出るのが早くて、ちゃんと顔を合わせるのは初めてだった。

「うむ、見えるのう。何かいいことでもあったのかや?」

いいことがあったのは事実で、とはいえ誰かにそれをおおっぴらに共有したいと思うようなことではない。だけど、それを話してもいいかと思ったのは、尋ねてきた相手が零くんだったからだ。足を止めてちょいちょいと手招きをする。不思議そうな表情で身体を寄せてくれた零くんの耳元に手を寄せて、その理由を囁いた。

実はさ、サンタさんが来たみたいなんだよね。枕元に置いてあったんだ」
「ほう?」

零くんが声を弾ませた。

「この年になってサンタさんからプレゼントをもらうなんて思わなかったよ」

オープンにしなくていいと思ったのは、その理由が幼かったからで。実際にサンタクロースはいるとはいえ、子供の頃の自分の元に届いたプレゼントは両親が用意してくれたものだと知っている。それでも、今回俺の元に届けられた贈り物は、サンタクロースからのものだった。添えられていたカードにそう記されていたからだ。

「薫くんは良い子じゃもの。もらう権利はあるじゃろう」

側を離れると、うんうんと首を縦に振りながら零くんが言う。良い子、という子供扱いのような言い方は少し気になったけれど、今日は何も言わないことにする。「もう」と小さく窘めるだけに留めて、また歩き出した。

ところでさ、零くんの知り合いにサンタさんっている?」

それを踏まえた上で、零くんに問いかけを一つ。

「というと?」

表情も声の調子も変えないまま、さらりと聞き返してきた。零くんなら、本当にサンタクロースの知り合いがいたとしても驚きはしない。そう問いかけたのにはもちろん理由がある。

「付いてたカードの字が零くんの字にそっくりだったんだよね。お手伝いでもした?」

カードのメッセージが日本語で、筆跡が零くんのものとそっくりだった。いや、そっくりではなく、零くんの筆跡そのものだった。もうずっと彼の字を見ているのだから、見間違えるはずがない。

「ああそうじゃのう、届け先が日本だというから少しばかり手を貸した覚えがある」
「なるほどね、それが俺のところに来たんだ」

問いかけへのストレートな答えではないながらも、一応の返事は返ってきた。多分、意図的にずらされている。そして、『手を貸した』という言葉ではあるけれど、カードは零くんが書いたものだという本人の証言も得た。くすりと笑って言葉を続ける。

「じゃあ、零くんに一つお願いがあるんだけど」
「何じゃ?」
「その知り合いのサンタさんに『プレゼントをありがとう』って伝えてくれる?」

サンタクロースに直接お礼を言うことはできないから、その伝言を『零くん』に託すことにする。お手伝いをするような間柄なのだから、それくらいなら叶えてくれるだろう。

ふふ、分かった。伝えておくぞい」
「よろしくね」

少し間が空いた。それもほんの一瞬のことで、穏やかな笑みを浮かべて零くんは頷いてくれた。この話はここまでにしておいて、話題を今日のこれからの仕事に滑らせていく。
こうやって遠回しな言い方をしたけれど、俺のところに来たサンタクロースの正体は分かっている。
もちろん、零くん自身だ。
零くんと一緒に暮らすようになってもう結構経つ。サンタクロースが入れるような煙突はないし、戸締まりだってちゃんとしているのだから外から誰かが入れるなんてことはない。唯一入れるのは、同じ部屋の鍵を持っている零くんだけ。連日の疲れも重なっているせいかベッドに入ってからの記憶は曖昧で、目が覚めるまで何も気付かなかった。そんな状態で寝ていた俺の枕元に、サンタクロースが、いや零くんがプレゼントを置くのは簡単なことだっただろう。
この後の仕事が今日の最後の仕事。ささやかなものにはなるけれど、二人でパーティをしようと話をしている。俺から零くんにプレゼントを届けるのは、その時に。正体を隠さずに、零くんだけのサンタクロースとして。