roku
2025-12-25 06:09:00
2048文字
Public 松エジ
 

クリスマス【松エジ】

・付き合ってない松エジがクリスマスデートする話
・松本は喫煙者

沢北から「クリスマスにデートしましょうよ!」と誘われた。先に断っておくが松本と沢北はデートをする仲ではない。ただの先輩と後輩だ。松本が少し答えに困っていると「どうせ彼女いないでしょ?」と得意気に笑った。それがやたら癪に障り「してやるよ」とふてぶてしく言い放った。
誘ってきたくせに「デートプランは松本さんが考えてくださいね!」と丸投げてきた後輩。そのせいで仕事が忙しい中すべての手配をすることになってしまった松本は心底腹を立てていた。加えて待ち合わせ時間になっても現れない後輩にストレスがマックスになった松本は喫煙コーナーへ足を向けた。
「あ!何でこんなとこいるんすか!!」
「あ?お前が時間に来ねえからだろ!」
「タバコ吸ってる松本さんとか嫌なんですけど!!」
「知らねえよ!」
遅れて現れた沢北は謝罪ひとつせず文句を口にする。苛立ちごとタバコを灰皿に押し付け「行くぞ」と沢北を促した。

松本が予約したのは郊外の高台にある夜景の見えるこぢんまりとしたレストランだった。軽いドレスコードがあることを聞いていた沢北はいつものラフな格好ではなく、シャツにジャケット、チノパンでスマートにきめていた。松本は仕事終わりにそのままやってきたのでスーツだったが、外したネクタイが堅苦しさを解かしていた。
「ふーん。こういう店知ってるんすね」
意味ありげに言う沢北を気にとめることなく松本は案内された窓側の席に着く。その向かい側に腰を下ろした沢北。松本はコース料理に合うワインをお願いし、ふたりはそれで乾杯した。
「女子が好きそうっすね」
大きな窓から夜景を見下ろしつまらなさそうに吐き捨てた。
クリスマスにデートしようと言うから連れて来てやったというのにこの言われよう。お前は何がしたいんだと言いたくなったが、松本はそれをぐっと堪えて「まぁそうだな」と息をひとつ吐いた。
コースの料理はどれも評判通り美味しく、残さず綺麗に食べ進める沢北の表情は心なしか明るくなっていった。

店を出てすぐ、松本はポケットから取り出したタバコに火をつけた。ヘビースモーカーではないが食後のデザートのようなものだった。
「あの!」
「何だよ?」
隣に並んだ沢北に、気を遣って離れて歩いてやったのにと怪訝な顔を向ける。
「なんか、クリスマスデート普通でしたね」
「あ゙?」
タバコを咥えたまま眉間に皺を寄せた松本に一瞬怯んで足を止めた。
「あ、いや、えっとダメとか言ってないんで!!」
夜景も綺麗だし?料理もすげぇ旨かったし?と全て疑問形で視線が泳いでいる。が、「でも普通でした」その言葉はやけにはっきりと紡がれた。
松本の中に張っていた糸がその一言でプツリと切れた。
「へぇ。まぁまだクリスマスデートは終わってねぇけどな」
フッと息を漏らした不敵な笑みに沢北の背筋が寒くなる。松本はタバコを消して沢北の手首を掴み無言で歩き出す。
「え?ちょっとどこ行くんすか!?」
慌てる沢北に「ついてくりゃわかんだろ」とだけ返した。

「入れよ」
「ここって
「オレんち」
「何で?」
「ラブホの方がよかったか?」
「はぁ!?何言ってんすか!?マジで意味わかんねーんすけど!!」
玄関先で騒がれるのは近所迷惑なので沢北を部屋へと押し込んだ。そして沢北の後頭部を掴んで唇を奪った。
「んんっ〜〜!!」
沢北は力いっぱい松本の肩を押して引き剥がし、「な、なにするんですか!!」と涙目で訴えた。
「キス」
「んなことわかってるじゃん!何で?ってこと!!」
敬語を忘れた沢北はこの状況からどう脱出すべきかと考えを巡らせているようだったが、松本は強引にベッドに押し倒し白い首筋に吸い付いた。
「んぁッ!」
「デートの最後はセックスって決まってんだよ」
沢北の顔の横に手を付き見下ろす瞳には雄の色を宿している。
「ちょっと待ってください!!」
顔を背けた沢北の耳元で思い出したように囁いた。
「あ、〝普通〟は嫌なんだったよな」と。
意地悪な笑みを浮かべた目の前の松本は、何か言いたげにはくはくさせている沢北の口を再び塞いだ。



「ありえないっす!!」
枕を抱きしめ松本に背を向けた沢北が大きな声で言い放つ。
「何がだよ」
松本はヘッドボードに背を預けタバコを手に取ったが、隣にいるのが沢北なので火をつけるのをやめ箱へと戻した。
「あんな、あんなえっち、するなんて……松本さん、頭おかしいんじゃないっすか!?」
「あ?デートが〝普通だった〟って不貞腐れてたのはお前だろ」
「別に不貞腐れてねーし!しかも松本さん男相手に慣れすぎてんのも最低!!」
頭がおかしいだの、最低だの、こいつはオレを何だと思ってるんだ。
「それ以上言うとまた口塞ぐぞ?」
「うっ
沢北は先ほどまでの激しい行為を思い出し口をつぐんだ。
松本には言いたいことがたくさんあったが、沢北の背中に残る赤い花びらを目に映し、静かに口角を上げ沢北の頭を優しく撫でた。