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roku
2025-12-24 17:39:27
1411文字
Public
松深
クリスマス【松深】
・クリスマスデートに誘った松本と、まさかデートがクリスマスだとは思ってなかった深津の話
・松本→←←←←←深津ぐらいの感じ(付き合ってない)
「今度デートしないか?」
〝デート〟という単語に引っかかりを覚え「デートは彼女とするピョン」と断れば、「別れたから」となんともない答えが返ってきた。深津は松本が彼女と別れたことへの喜びと、彼女の代わりにされたような惨めさが入り混じり複雑な気持ちになった。それでも「わかったピョン」と首を縦に振ったのは相手が松本だったからだ。
「まさか〝デート〟がクリスマスだなんて思ってなかったピョン」
待ち合わせに現れた松本を見るなり口を開けば、12月のデートはクリスマスに決まってるだろと返された。腑に落ちず言い返そうと思った言葉は、繋がれた手に心臓までもが掴まれ、音にならなかった。
「ま、つ
…
」
絞り出した声はその名すらきちんと呼べなかった。深津は松本の考えていることが何一つわからず動揺している。重なる手に視線を落として訴えてみる。するとあろうことか松本は「デートなんだから普通だろ」と笑った。
やめてくれ。勘違いするだろ。
そう言って振り解きたかったが、できなかったのは長い指が絡まったから。
「何食いたい?」
12月のデートはクリスマスに決まっていて、デートなら手を繋ぐことが普通だというなら、店を予約してサプライズでプレゼントがあるのが当たり前じゃないのか?そんな思いが口をついて出た。
「そこは決めてねーピョン?」
「だって深津とふたりで洒落たレストランも何か違わねぇ?」
彼女となら違わないということか。
胸の奥がチクリと痛んだ。
「そもそもオレとデートが違うピョン」
「あ?何でだよ?」
なぜ松本が怒っているのか甚だ疑問だ。怒りたいのはこっちの方だと言ってやりたい。
「クリスマスに男とふたりで〝デート〟なんて頭おかしいピョン」
冷たく言い放った自身の言葉が痛む胸を抉る。今度こそ手を振り払って帰るのだと決心した。が、それを察したのか松本の握る手の力が強くなった。
「何でだよ?好きな相手とクリスマスにデートは普通だろ」
視線を下げた深津を覗き込んだ松本は口元に笑みを湛えている。そんな松本を見た深津は瞳を大きく開いた。松本はこんなやつだっただろうか。深津の知る松本はもっと鈍感で堅物で真面目で
…
奥手なイメージだった。だが目の前の松本はどうだ?
こんな松本は知らない。
「な、に
…
言ってる、ぴ
――
‼」
接尾語は唇におとずれた温もりとともに松本の口内へと消えていった。松本はフッと口端を上げ目尻に皺を刻んだ。
その表情に心臓がドクンドクンと大きな音を立てて血液を送り出し顔がみるみる火照っていくのがわかる。
「お前もオレのこと好きだと思ってたけど違ったか?」
知っていながら彼女を作っていたとは何とも恨めしい。だが奪われたファーストキスと気づかれていた思いにそれどころではなかった。
あぁ、恋とはこういうものなのか。
「ピョン」
松本は肯定とも否定とも取れる曖昧な返事には何も言わず歩き出した。もちろん手は繋がったままだ。だがクリスマスムード漂う街を行き交う人々はこうして大の男ふたりが恋人のように手を繋いでいることなど気にもとめていないようだ。深津は細かいことは後から考えようと、ひとまず置かれた状況を受け入れた。そして大通りの向こう側、オレンジ色の看板のチェーン店へ視線を向け「牛丼が食べたいピョン」と告げた。その提案に「いいな」とくしゃりと表情を崩した松本は、深津が惹かれた深津の知ってる松本だった。
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