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採掘すずめ
2025-12-24 14:15:58
3930文字
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SS
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【SS】命の結晶を、その手に
行商人ファロッドとレシタリアの、ちょっと真面目な話。
寒さが一段と厳しくなってきた、ある冬の夜。
行商の旅の途中でユウェラ邸に顔を出すことがすっかり習慣となっている“じょりじょりくん”ことファロッドを迎え、ユウェラ達一同は暖かな食堂で夕食を楽しみながら話に花を咲かせていた。
「ーーで、そのピグリン要塞の中心に溶岩に囲まれた宝物庫があったんだが、奴らに見つかると面倒なんで透明化のポーションを飲んで悠々とお宝を物色してたわけ。そしたら俺の存在に気付いていないマグマキューブが尻に激突してきてなぁ
…
危うく溶岩の海に落ちるところだったぜ!」
「危ないですねぇ
……
あと一歩で丸焦げじゃないですか」
「相変わらず危険と隣り合わせだな、君の冒険は」
「ガハハ、そのマグマキューブも見えない尻にぶつかって驚いただろうな!」
「マグマキューブって本体も熱くなかったですっけ?お尻焦げませんでした?」
「おかげさまで尻はどうにか大丈夫だったぜ。んで、その宝物庫から入手してきたのがこのネザライトインゴッドだ。こいつは旦那に土産ってことで」
「ほう、これは貴重な
……
。ありがとう、ファロッド。いつもすまないね」
「あと、こいつは一緒に入ってたレコード。これはレッシーに」
「ピグリン達にも音楽を楽しむ文化があるのでしょうか
……
興味深いですね。ありがとうございます。後で聴いてみます」
世界各地を渡り歩き、ユウェラ達が見たことも聞いたこともないような体験を数え切れないほどしてきているファロッドの話はとても興味深く、聴き飽きない。
出会った当初こそ敵対種族、しかも胡散臭い男ということで警戒を強めていたユウェラ達だったが、関わって長い月日が経ち、彼の人となりーーーー本心から自分達に親しみを持ち、文字通り命をかけて力になってくれている事を理解した今は、大切な仲間として歓迎し、交流を深めるようになっていた。
「いや〜ご馳走さん!久々の豪華な食事が染み入ったわ」
「口に合ったのなら何よりだ。私達がお前に出来る事といったら、こうして時々食事や寝床を提供するくらいだが
…
。いつも土産や情報提供、そして戦力となってくれて感謝している。今夜はゆっくり休んでいってくれ」
「ありがとな、ユウェラちゃん。お言葉に甘えて、今夜は世話になるぜ」
夜ということもあり、浮かない顔色のユウェラが小さく微笑んで感謝を口にすると、ファロッドは若き館主の不安を和らげるように明るい笑顔で応えた。
しかし、
「あー
……
ところで
……
」
直後に表情を曇らせると、ファロッドはテンションを下げ、言いにくそうに改めて口を開く。
「楽しく盛り上がった後で悪いんだが
……
。一つ、良くない知らせがあってな」
その言葉に、皆の顔からも笑顔が消え、一斉にファロッドに注目する。
「
……
聞かせてくれ」
ユウェラに促されたファロッドは、ふうと一息ついてから姿勢を正して皆に向き直る。
「ここに向かう途中、シュヴェーロ邸の近辺を偵察してきたんだが、何やら動きが慌ただしかった。近いうちに襲撃してくる可能性が高そうだ」
「
……
っ」
「ユウェラ様」
椅子に座ったまま、言葉を詰まらせて顔を強張らせるユウェラ。ソルダが即座に立ち上がって隣に寄り添い、心許なさそうな主の背にそっと手を添える。
「貴方、また彼らの館に行ったんですか
……
!危険だから近付かないほうがいいと、あれほど言ったでしょう
……
!」
「危ないのはわかってる。でもな、お前さん達を危険な目に遭わせたくないのは俺も同じなんだよ。情報が分かれば、それだけでも対策できるだろ?」
険しい顔でレシタリアに言われたファロッドは、同じく真剣な面持ちでそう返す。
「ふむ
……
時期的にそろそろ警戒が必要とは思っていたが
……
やはりか
……
」
顎に手を当て、視線をテーブルに落としていたラルジェスは、ひとしきり唸った後で顔を上げた。
「情報の提供、感謝するよファロッド。心の準備が出来ているのといないのとでは大違いだ。だが、レシタリアの言う通り、我々も君に危険な目には遭って欲しくない。くれぐれも無茶はしないでくれ」
「あぁ、肝に銘じるよ。それと
……
今夜は世話になると言ったが、戦力は多いほうがいいだろ?あいつらを追い返すまで、俺もしばらく滞在するぜ」
「そうしてもらえると我々も心強い。
……
ユウェラ、明日にでもピリジャーの前哨基地に交渉して、またエウローク君に協力を頼もう」
「
……
あ、あぁ
……
わかった
……
」
「ソルダ、ユウェラを部屋で休ませてあげてください」
「は。承知いたしました。ユウェラ様、お気を確かに
……
」
「すまない
……
失礼する
……
」
話をしている間にみるみる顔色が悪くなったユウェラがソルダに支えられて食堂を後にするのを見届けると、レシタリアは自分も椅子から立ち上がり、冷静な口調で言った。
「
……
ファロッド。貴方に渡したい物があります。わたしの部屋まで来ていただけますか?」
「うん?渡したい物?あぁ
……
わかった」
* * *
「いつ来ても綺麗に整頓されてるなぁ、お前さんの部屋は」
レシタリアの私室に同行したファロッドは、部屋の主がクローゼットの扉を開き、先程渡したレコードをチェストに片付けつつ探し物をしている背後で室内を見渡し、そう呟く。
「
……
で?俺に渡したい物ってのは一体何なんだ?」
「
……
これです」
目的の物を見つけ、立ち上がって振り向いたレシタリアの手に視線をやったファロッドは、僅かに目を見開いた。
黄金で作られた人型のそれ。瞳の部分にはエメラルドと思わしき宝石が埋め込まれている。
「そいつは
……
」
「貴方ならご存知でしょう?不死のトーテムです。これを、貴方に」
「い、いや、だがなぁ
……
」
「
……
?何か不都合でも?」
躊躇うような様子で受け取ろうとしない目の前の男をレシタリアが不思議そうに見上げると、相手はどこか言いにくそうに、言葉を選びながら答えた。
「あー
……
そいつが物凄く貴重な物だってことは知ってる。どんな効果があるのかも知ってる。だが昔聞いた話
……
その話が確かなら、そいつは人の命を犠牲にして作られていると
……
。それを考えると、俺にはちっと抵抗があってな
……
」
「あぁ、そういう事でしたか。貴方らしいですね」
不機嫌になるでもなく笑うでもなく淡々と言うと、レシタリアは手の中のトーテムを見つめながら言葉を続けた。
「不死のトーテムは、エヴォーカーの一族のみに伝わる特別な物
……
。貴方の言う通り、人の命を用いて作られます。好戦的で残虐なエヴォーカーは何の罪もない人々を殺して幾つものトーテムを作り出したりもしますが、全ての一族がそのような訳ではありません」
「
…………
」
「わたしの一族の場合は昔から、一族の者が怪我や病気などで倒れ、もうどのような治療をしても回復の見込みがなく死を待つだけだと医者に診断された場合、子孫を護る存在になってくれるようにと、その命を用いてトーテムを作り出す習慣があるんです。もちろん、トーテム化されても良いかどうかの本人の意思は尊重されています。これも、その中の一つ
……
。幸いにも、うちの一族は非好戦的であまりトーテムの効果に頼ることもなく過ごせているので、幾つか数に余裕がありまして。ですから貴方に一つ、お渡ししておきたいと」
「なるほど、そういう事だったのか。だが
……
話を聞くと、一族に伝わるそんな大切な物を余所者の俺がもらっちまうのは尚更まずいんじゃないかと心配になるぜ。親御さんの許可はもらってるのか?」
「母には話を通してありますので問題ありませんよ」
「そう
……
か」
改めて差し出されたトーテムを躊躇いがちに受け取ると、ファロッドは黄金に輝くそれをまじまじと見つめた。
「命の重みを感じるな
……
。こんな物を受け取ったら、簡単に死ぬ訳にはいかないな」
「当然です。生きてください。貴方に死なれては、ユウェラや皆が悲しみますから」
「お前さんも悲しんでくれるの?」
「
……
少なくとも、ここまで関わるようになった相手が命を落としたら衝撃を受け、虚無感に襲われるであろう事は予想できますが」
「っはは、そうか」
若干視線を泳がせながら発せられた堅苦しい返答を聞いたファロッドは、嬉しそうに笑ってみせた後で正面からレシタリアを見つめ、普段よりもワントーン落ち着いた声で穏やかに言った。
「ありがとうな、レシタリア。大事にする」
「
……
はい。ユウェラのこと、宜しくお願いします」
「あぁ。ユウェラもお前さんも館の皆も、誰も死なせやしない。約束する」
ファロッドの力強い言葉を聞き、レシタリアが少し表情を緩めたその時。
トントントン、と扉を叩く音が響いた。
「はい」
「ヴィフタルです。お話中に申し訳ありません。お風呂の用意ができましたので、じょりじょりくん、お先にどうぞ〜」
「おぅ、ありがとな〜わんこ君!今行くぜ〜!」
若干の不満が滲み出たような、抑揚に乏しいヴィフタルの話し方。
ファロッドは苦笑しながら扉の外に向かって応えると、
「んじゃ、風呂に行ってくるわ。またな」
レシタリアに軽く挨拶をし、部屋を出ていった。
「どうぞ、ごゆっくり」
ファロッドを見送ったレシタリアは、ふぅと溜め息をつき、何気なく窓の外の夜空に目をやる。
「あ
……
」
星々を散りばめた漆黒に、一筋の光がスゥと横切った。
流れ星だった。
「
………………
」
幼い子供でもあるまいし。
そう思いながらも、レシタリアは心の内に膨れ上がる願いを小さな一瞬の光に託さずにはいられなかった。
どうか、自分の大切な者達が無事でありますように。
笑顔で幸せに生きていけますように、と。
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