宝物を見せてくれるフリンズさんの話


「フリンズ、何してるの?」
「お掃除ですよ」
 
 年の瀬ということもあり、大掃除をした方がいいのではという気持ちではあるが、夜明かしの墓はそもそも人があまり来ないし汚れない。その上、綺麗好きのフリンズが大抵終わらせてしまうので、私の出番は日常の片付けぐらいになってしまう。日課のルーティーン分の掃除は終わってしまったところで、フリンズをしばらく見かけていない気がした。こんな時は大抵あの場所である。
 
「しばらく居ないから、ここかな?って思いまして」
 灯台下には、フリンズの集めた収蔵品やボーンクラフトなどを収めている小部屋がある。彼を見かけない時はこの部屋にいることが多い。
「おや、そんなに長居していたとは……探させてしまいましたか」
「ううん、全然」
 気にしないで、の気持ちを込めて片手を振る。「そうですか」、と彼からも簡単に返事をもらった。
「入り口だけではなく、中に入っていただいても宜しいのですよ?」
……そう?でも、ちょっとこの部屋は、なんというか、緊張するんだよね」
 だって高い物や壊れやすい物が多いから、ね。以前、犬が入り込んでしまった時のフリンズの落ち込みようは、まだ忘れられない。
 
――では、こちらに座るのは如何でしょう」と言って、フリンズは自分の膝を叩く。
……そんなの特等席じゃないですか」
「ふふっ、貴女専用席ですね」
 そこまで言われたら、断れないよねぇ。恐る恐る部屋に入りフリンズの横に立つと、ひょいっと膝に乗せてくれた。
 
「いまは、以前手に入れていた宝石達を磨いていました」
「あー、たまに外で見せてくれる箱のこと?」
「えぇそうです。実際に付けたり触ってみたり、陽の光や月光の下に晒すことで輝きが増すのです」
 箱から一つ取り出して見せてくれたのは、カメオのブローチだった。白の発色がとても綺麗で、台座には宝石も使われているみたい。もう片方の手に持っている柔らかい布で丁寧に拭いていく。
 フリンズの手先や宝石、そして彼の楽しそうな表情を見ていたら、私も掃除した気分になってきた。これは満足度が高い見学だね。
 
 ふと、机に置いてある宝石箱に目を向けると、黄色い綺麗な石が嵌っているネックレスがあった。なんだか気になって、じーっと見つめていると、フリンズが手に取ってくれた。
「こちらが気になるのですか?」
「うん、なんか目が離せなくなっちゃった」
「ふむ……こちらはイエローアゲート、黄色メノウの使われているネックレスですね。――宜しければ、付けて差し上げましょうか?」
「え?!い、いいよ!壊したりしたら怖いし
「そんなすぐ壊れたりはしないですよ。ほら、前を向いてくださいね」
 うぅ……そんなつもりじゃなかったんだけど。……でもフリンズも楽しそうだし、覚悟を決めるか。
 少し背筋を伸ばして前を向くと、後ろから手を伸ばしてきたフリンズが、器用にネックレスを付けてくれた。
「はい、お似合いですよ。こちらに丁度手鏡があるので使って下さい」
「うん。――うわぁ、綺麗!」
 借りた手鏡で自分の首元を確かめてみる。イエローアゲートの大粒が使われたネックレスが、本当に素敵だった。
 
――ぁっ」
「どうしましたか?」
 
 気づいてしまったのだ。なんでこのネックレスが気になったのか、ということを。手鏡を遠めに持ち直して、後ろのフリンズの顔も映るように見せる。
……このネックレス、フリンズの目と同じ色だね?」
「ははっ!……その理由でこちらを気に入っていただけた、ということでしょうか」
「やめて恥ずかしいから、あぁもう!」
 
 手鏡を持ったまま恥ずかしさに体を震わせていると、後ろから彼が優しく抱きしめてくれた。
 
 
 
『私が好きなのは、いつも見ているこの色で』