たくとろ
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出茶 夜の散歩

もう我慢できなくて書いた
解像度がまだ低いので口調とかズレありそうだけど温かい目で…

眠れない。出久は気分転換に散歩でもしようかと部屋を出た。とはいえ夜中の外出は先生に見つかると怒られる。こっそり、音を立てないよう歩いていくと、寮の共用スペースで声をかけられた。

「あれ?デクくん?」

不意に名前を呼ばれ、出久は体をびくりと震わせた。振り返ると、声の主の顔が窓から差し込む月明かりに照らされてはっきり見える。最も、声で誰かは分かっているのだけど。

「う、麗日さん
「なにしてるん?こんな遅くに」
「ちょっと眠れなくて、散歩でもしようかなって。麗日さんは?」
「私も眠れなくて、なんとなく部屋出たんだ。そうだ、せっかくだしデクくんのお散歩ついてっていい?」
「うん」

出久とお茶子は声を潜めて寮の外に出た。空に浮かぶ月はまん丸で地上を仄かに照らしている。山の上にある雄英の空は星々の光も街中より鮮明に見える。

「静かだね〜」
「みんな寝てる時間だしね。できるだけ静かに歩こう」
「うん」

歩き始めた二人は、声は控えめにおしゃべりを始めた。

「さすがにちょっと冷えるね〜」
「うん。少し歩いたら戻ろっか」
「だね。あ、見てデクくん、空めっちゃ綺麗!」
「ほんとだ!」
「夜散歩の特権だね」

二人は微笑み合うと、また空を見上げながら歩く。星空の輝きは暗がりの中に儚く煌めいて、彼らの心にも光を生む。

「こうやって、誰もが空を見て過ごせるようなそういう平和を守らないと」
「だね!」

しばらく歩いた二人は校舎の近くまでやってきた。窓ガラスが張り巡らされた校舎は月明かりを反射して真夜中でも荘厳な雰囲気を放っている。

「夜の学校は不気味ってこと多いけど、雄英はそうでもないなあ」
「綺麗だしね。それに雄英はヒーロー科の名門。夜でも安心できる場所なんだ」

二人はそびえ立つ雄大な校舎を笑顔で見つめていた。すると、その背後で草葉が揺れる音がした。振り返るもそこには何もいない。

「お、お化け?」
「き、きっと風で揺れただけだよ!」

ササササ。また二人のそばで草葉が揺れる。しかし風は微塵も吹いていない。さらにまた別の方で草葉が揺れる。流れてきた雲が月を隠し、地上が暗く染まる。蠢く何かを、二人は視認できない。

「デクくん!」
「だ、大丈夫。お化けなんていな

そしてついに、草むらから何かが飛び出した。お茶子は悲鳴を上げて出久に飛びついた。

「いやあああ!!」
「わあ!!??麗日さん落ち着いて!!」
「お化けは無理無理無理!!ん?」

お茶子は飛び出た何かの方を向いた。雲がまた流れて、月明かりが再び地上を照らし、飛び出た何かの正体を明らかにした。

たぬき?」
「たぬき?」

出久とお茶子の前にいたのは小さなたぬきだった。山の中だ、そりゃあたぬきくらいいる。たぬきはどこかへ走り去っていき、お茶子は平静を取り戻した。

「なんだたぬきかあ怖がって損したあ」
「そうだねでもあの麗日さん
「なに?デクく

お茶子が出久の方を向くと、出久は顔を赤らめながら上を向いて遠ざけているが、かなり近い。当たり前だ。お茶子は出久に抱きついているのだから。風邪が移るかのように顔の赤みが伝播し、お茶子はパッと出久の体から離れた。

「ご、ごめん!デクくん!慌ててて!」
「だ、大丈夫全然嫌とかじゃなかったから!」

でも心臓がはち切れそうだったと、いつか出久は語るだろう。一方お茶子は頬を両手で押さえ、何をしているんだと頭の中で色んな思考がぐるぐると回っている。しばらく続いて落ち着いてくると、未だに少し赤いままの出久の顔を見た。

デクくんもドキドキしたんかな。

「私でもしてくれるんだ
「麗日さん?」
「あ!いや!なんでも……なあ、デクくんってす、好きな人とかいる?」
「へぇっ!?きゅ、急になんで!?」
いいから教えて」

お茶子は出久と顔を合わせずに人差し指を擦り合わせている。なんか変だとは思いつつも、理由は察せないまま出久は答えた。

「好きな人はいないかなでも、そういう経験今までなかったから自分で気づけてないかもごめん、あやふやな言い方で」
「ううんありがと」

自分でも何を聞いているんだろうと思いながらも、出久の正直な回答に口元が緩んだ。それからお茶子の脳裏には、もう次の質問が浮かんでいた。考えるより早く、それは口に出てしまう。

「デクくんはその友達に好きって言われたらどうする?」
「友達に?告白されたこと無いから分からないけど

答えながら出久は無意識に、目の前の少女のことを思い浮かべていた。そして彼は頬を掻きながら言った。

「すごくものすごく嬉しいと思う。誰かに好きって言ってもらえて、それも大切な友達からなら絶対嬉しいよ」
「そっかうん、そやんな」
「っていうかこういうこと聞くって麗日さん好きな人いるの?」

出久の質問は、ようやく収まってきていたお茶子の感情の昂りを元に戻してしまい、彼女の顔は一瞬で真っ赤になった。

「い、いない!違うから!そういうんじゃないし!!」
「そ、そっか。ごめんね変なこと聞いて」
「ううんいいよ、先に聞いたん私だし」

二人は顔を赤くしたまま言葉を失い、そのまま立ち尽くしていた。するとそこに一つの足音が迫ってきていた。その主は二人を見つけるなり声をかけた。

「お前らこんな時間に何してる。逢引きか?」
「相澤先生!?ち、違います!僕ら寮でばったり会って散歩してただけです!」
「そうです!やましいことは——何もないです」
「なんでもいいがさっさと寮に帰って寝ろ。明日の授業も厳しくいくからな」
「はい!!」

揃って返事をした二人を見て、相澤はどこかへと歩いていった。出久とお茶子は顔を見合わせて少し笑った。二人はしばらくして寮に着いた。手を振ってから自分の部屋に向かう。

「デクくんおやすみ、今日はありがと」
「うん。こちらこそありがとう。おやすみ」

部屋に戻った出久はお茶子にされた質問とお茶子にした質問を振り返っていた。

もし麗日さんが僕のこと好きだったらいや好きな人いないって言ってたし都合のいい考えだでも、もしもそんなことがあったら

なんて考えているうちにまた鼓動が早くなって、出久は結局中々寝ることができなかった。そしてそれはお茶子もまた。感情が激しく揺れる、そんな夜だった。