77nairo
2025-12-25 23:00:00
1026文字
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どこ行く? なにしてる? なに食べる? 12/25


 今年の山王にとって赤い服の男は、プレゼントを持ってきてくれる聖人ではなく、敗戦をもたらす死神だ。
 ジャージを脱いでユニフォーム姿になった松本は、ラインの手前で一礼してからコートに足を踏み入れた。どちらの足から踏み出すとか、バッシュはどちらの足から履くとか、そういった類の願掛けはしない。勝負はそれよりももっと前、いかに練習を積み重ねてきたかで決まる。ずっとそう考えてきた。それでも今日ばかりは、なにかしら自分を落ち着かせるルーティンを持っておけばよかったという思いが頭をよぎった。
 センターサークルを挟んで対峙した相手チームは赤いユニフォームをまとっているが、それは夏に対戦した湘北ではない。インターハイ三回戦で対戦するはずだった、愛和学院だ。湘北は県大会の準決勝で敗れたと聞いている。
 東京体育館のメインアリーナには四面のコートが取られ、それぞれの出場校の応援団、一般のバスケファン、それに、来年こそはコートに立つという決意を抱いた敗戦校の選手たちまでもが詰めかけていた。その熱気で、真冬であることを忘れそうなくらいに暑い。
 松本はスタンドをぐるりと見回した。全国では、ここにいる観客たちの何倍、何十倍という数の選手たちがこのコートにたどり着く前に涙を飲んだのだ。日本一になるには、ここから更に敗者を踏みつけて登っていかなければならない。背筋がぶるりと震える。
 その背中に、手のひらが触れた。振り向くと、一之倉が片方の眉を上げて松本を睨むように見上げている。
「余計なことは考えるな」
 大観衆のざわめきの中でも、その声は不思議とまっすぐに松本の耳に届いた。
「俺の仕事は諸星を止めること。松本の仕事は?」
……このコートの誰よりも多く点を取ること」
「オッケー」
 背中をばしんと叩かれる。一之倉はそのまま、ゆっくりとフロントコートへ歩いていった。指先はまっすぐに諸星を、今日のマークマンを指している。
 レフリーがボールを持ってセンターサークルに入る。愛和学院のセンターと河田が、その中央で対峙する。
 松本は東京体育館の高い天井を見上げて、ふうっと大きく息をついた。ライトが眩しくて、一瞬目がくらむ。もう一度視線をボールへ向けたときには、松本の心は不思議なくらいに静まっていた。
 もうサンタクロースなんて信じる歳じゃない。プレゼントは自分で獲りにいく。
 ティップオフの笛が鳴る。レフリーがまっすぐにボールを投げ上げた。