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紫よか
2025-12-22 13:24:01
1573文字
Public
刀剣乱舞
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血まみれだって愛してほしい
大和守安定×蕚 オーケンの某曲が好き
手入れ部屋にて、彼女が彼を抱きしめると、彼からぐじゅりと血のにおいがした。
ちょっとした油断のせい。間一文字に腹を裂かれ、額は投石を受け割れている。彼───大和守安定は、彼女───審神者の頭を撫でようとして、ぽたりと額から溢れる血液が審神者の白い髪の上に垂れたことと、自身の手も血を拭ったせいで汚れていることに気づき、やめた。大和守安定は『自己嫌悪中』である。鉄の臭いがする自己嫌悪。
それでも、小さな審神者は大和守安定に抱きつくことをやめない。
「主、離れて。汚れちゃうよ」
「
……
もうちょっとだけ」
「手入れしてほしいなあ」
「もうちょっと、もうちょっとだけ」
「もう。仕方ないな」
赤い血に濡れた、元は白かった彼の着物越しに頬擦りをしたことで、審神者の頬にはすっかり大和守安定の血がついてしまった。審神者の色の無い体が自分の血で赤く染まることに、大和守安定は何ともいえない心持ちになった。まるで、体全体で彼女を抱きしめているような。
……
自分から本当に抱きしめてしまいたい。そんなことをしたら彼女は血でどろどろになってしまう。いまだ無垢で幼い審神者に、そんなことをしてはいけない。と、彼は思っていたのだが、汚れることも厭わずに自分を抱きしめてくる審神者の少女を見ていると、何だか、赦されてしまうような気がしてしまった。
「
……
安定の血、あったかいね」
「血は好き?」
「すきじゃない。安定、痛いもん」
「でも、こうして抱きしめてくれてる」
「あのね安定、これは、誉なの。うてな、安定を頑張って戦ってえらいえらいーってしたいから、ぎゅーってするんだ」
「
……
」
「うてなね、安定のことすき。だからね、安定が血まみれでもぎゅーってしてあげるの」
「
……
だったら、僕もあなたが血まみれになっても、ぎゅーってしてあげなくちゃね」
「
……
うん。うてな、今血まみれだよ、安定」
「そうだね」
壊れないように、でも離れないように。大和守安定は審神者を抱きしめる。割れた額をこつりと審神者の厚い前髪越しの額に当てた。互いの体温が心地よい。そのままでいると、大和守安定の体から痛みと傷がじわりじわりと引いていった。審神者が彼の傷に自身の霊力を流し込んでいるのだ。こんなやり方の手入れをするなんて、器用なことをする。と大和守安定は苦笑した。
「
……
主」
「んぅ」
審神者の小さな唇に、大和守安定はふわりと唇をつけた。傷も血ももう、どこにもない。だからこの口付けに、審神者からの霊力を受け取るとか、そういった意味はない。ただ、愛しいと思ったからする、優しい、触れるだけの口付け。
「やすさだ」
彼が唇を離すと、今度は審神者の方から喰むような口付け。それは一瞬のことで、やわらかな互いの唇の感触を楽しむ間も無かった。白昼夢のような時間であった。
「主、お風呂入っておいで。血のにおいがひどくする」
「
……
。うん。
……
安定」
「うん?」
「ちゅう、うれしかった。またしてね」
「
……
うん、またね」
ぱたぱたと血に濡れた服と髪のまま、審神者は手入れ部屋を出ていった。大和守安定はというと、畳の上にごろりと寝転がり、審神者の言葉を反芻していた。
「またって、いつだろう」
いつでもしていいのだが、いつでもしてはだめな気がする。かといって、こういった油断から起こした重傷はしないようにしたい。彼はもう二度と彼女を血まみれにしたくないのだが、自身の血に濡れた彼女はどうにも、やはり、愛しかった。
あの少女にはたくさん愛されている気がする。しかしながら、愛することは、大和守安定にとってはまだまだ考えることがたくさんあって難しいのだ。それを思うと自分がどうにも幼いような気がして、大和守安定ははあとため息を吐くのであった。
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