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net20156
2025-12-21 23:10:39
4189文字
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第26回 五歌ワンライ「激励」その後
ちょっと待って。たしかに"頑張れ"とは言ったけど。
こんなの聞いてない。
「
………
は???」
「だからさー、さっきから何回言わせんの、この酔っ払い」
何回言われても、頭がまったくその言葉を理解できてない。否、理解するのを拒否してる。
そもそも深夜のビジネスホテルのシングルルームで同僚兼後輩に押し倒された体勢で、何をどう聞けというのか。
「歌姫が好きだよ」
目隠しを外した、信じられないくらい優しい蒼の瞳で五条が呟く。あまりにこいつらしくなくて、逆に眉間に皺が寄ってしまった。
「
……
あんた私が酔ってると思ってからかってんの? 私が本気にしたらまた弱姫とか言って
――
」
「歌姫が言ったんじゃん。"からかったりしないで真剣に向き合えば、相手も応えてくれる"って」
言った!!確かに言ったけど!!!
それが己に向けられるなんて微塵も思ってなかったから無責任に(ちょっと面白がって)背中を押しただけです!!!まさか自分がこんな至近距離で言われるなんて想定してませんでした!!!
「じゃ、じゃあさっき言ってたあんたの好きな人が私だったとして」
「なんで仮定なの」
「私はあんたのこと割とマジで嫌いなんだけど」
「いやそれ説得力ゼロでしょ」
「あんたの"好き"こそ説得力ゼロだわ。今までどんだけ人のことおちょくってきたと思ってんの」
ムカついて下から蹴り上げてやろうかと思ったけど、五条に完全に押し倒されていて身動きすら取りづらい。
「じゃあ歌姫はさあ、嫌いな男に酔っ払った後にホテルまで送らせたり、自宅に泊まらせたり、危険な任務を上層部に隠れて引き受けたりするわけ?僕だったら割とマジで嫌いなやつなんか視界にもいれないし一瞬たりとも思い出したりしないよ。脳のリソースをそんなクズに使いたくないもん」
後半に関しては正論すぎてぐぅの音も出ない。
でも私があんたにイラついてるのは、そっちが学生時代からいちいち絡んでくるからであって脳から追い出す暇もなかったからだ。
「うちに来たのはあんたが勝手に押しかけて朝まで居座ってただけでしょ。いっつも送らせてたのはまあ
…
悪かったと思うけど、そもそも飲み会に呼んでなくない?あんたがいなかったら一人で帰ってるわ」
「べろべろに酔っ払ってケンタッキーおじさんに抱きついて離さないのに、無理でしょ」
「それは一度だけよ!まあ
…
ほら、一応あんたとは付き合いが長いから、信頼はしてるというか
……
あんたなら送ってもらってどうこうってことはないだろうし
……
」
「僕が送るのが一番危ないんじゃん。世界中で一番歌姫のことエロい目で見てるよ?」
あまりの言い草に開いた口が塞がらない。
学生時代からあれだけ人のことおちょくって馬鹿にしてたくせに。今までだって何度もホテルや自宅に送ってもらってたけど、何もなかったじゃないか。
「歌姫はなーんも分かってないよね。僕がいつも酔っ払った歌姫送ってベッドに寝かせてさあ。化粧も落としてブラとスカート緩めて、そのままなーんにも手を出さずに帰ってるの、どんだけ自制心きかせてるか分かる? 最強術師の精神力に感謝してよね」
五条の激白にいたたまれなくて恥ずかしすぎて、眩暈がして顔を手で覆う。化粧も服も、全部自分の仕業で覚えてないだけかと思ってた
……
こいつなんで化粧落とし使えんの
……
「でさ。僕いまめちゃくちゃ頑張ってるんだけど」
その言葉に我に返る。
瞼を開けると、至近距離で真剣な表情でこちらを見つめる五条がいた。
こんな顔、初めて見た。
「歌姫が聞いてくれるまで何度でも言うけど、僕は歌姫が好きだよ。なんなら学生時代からずっと好きだったよ」
―――
到底信じられないけど、今、こいつが嘘を言っていないことは分かる。
それを冗談だと誤魔化すほど、私も子供じゃない。
「歌姫が僕の側にいるならわざわざ言わなくてもいいかなって思ってたけど、歌姫が応援してくれたからさ」
私の馬鹿!!!なんでこんな猛獣けしかけたんだ!!
覆水盆に返らず
―――
そんな故事が頭の中でぐるぐると回るが、とりあえず大人としてきちんと対応せねばなるまい。大きく息を吸って、五条に伝わるようにはっきりと言葉にした。
「
……
あんたのこと、好きとかそういう目で見たことないんだけど」
「今から見ればいいじゃん。僕のことオカズにしていいよ」
「しねぇよ!!」
じゃああんたはしてたのかと思うと、また眩暈がしてきた。ちょっと待って理解が全然追いつかない。
「
――
なんで私なのよ」
「歌姫だからだよ」
「なにそれ、全然分かんない」
五条が甘えるように肩に頭を埋めてきた。ふわふわした白い髪が頬に当たってくすぐったい。
「歌姫はさ、僕のこと最強でも御三家当主でも六眼持ちでもなくて、自分の後輩として見ててずっと変わんないじゃん?こんな糞みたいな呪術界にいても真っ直ぐだし、僕に"がんばれ"なんて説教してくるのも歌姫くらいだしさ。僕の隣にずっといてよ」
変わってしまった親友のことを思い出してるのかと、ふと思った。
あの時のことは今でも覚えている。一人で、自分の足で立って教師の道を歩み始めたこいつの背中も、ずっと見てた。
こいつを一人にしたくない、と思ったのも確かだ。
「私だって変わったわよ」
「そうだね。昔よりキレやすくなった」
そーゆーこと言ってんじゃねーんだわ。
いざという時、そうやって軽口叩いてはぐらかすから、あんたの心がいつも見えなくなる。
「
……
"あんたも幸せになればいい"って言ったのは、ほんとよ」
「じゃあ歌姫が幸せにしてよ」
思わず、心臓が跳ねた。
まさかこいつにこんな台詞を言われるなんて、不意打ちすぎて対応に困る。
「
……
自分の気持ちだけ言って、あんたどうしたいのよ」
「とりあえずキスしたいかな。もちろんその先も」
あまりに即物的な答えに呆れてしまう。
「もうお手て繋いでデートしてとかじゃ我慢できない。でもこんな体力差あるのに一方的にするのはさすがにね。だから歌姫の許可を待ってる」
「私が許可しなかったらどうすんのよ」
「許可が出るまで待ってる」
それ私に選択肢ないじゃないか。ほんと唯我独尊なのはずっと変わってない。
だけど、私の胸に当たる五条の胸板から少し速い鼓動が聞こえてきて、なんだか愛しさが込み上げてきてしまった。
自分の体重がかからないように立ててる腕や膝も、五条の優しさに思える。こんなに大きな身体と最強の術式を持っているのに、すんすんと首元に鼻を擦り付けてくる様は主人の命令を待ってる大型犬のようだ。
1時間前まではこんなことになるなんて思ってもみなかったのに。
「
―――
許可、する」
「は?」
五条ががばりと起き上がって、信じられないというように固まってしまった。あまりにじっと見つめてくるから、恥ずかしくてキレ気味になってしまう。
「許可するって言ってんのよ何度も言わせんな!!」
見開いていた蒼の双眼が、嬉しそうに細められる。そのまま五条の顔が近づいてきたから、思わず目を瞑ってしまった。
頬に、柔らかい唇の感触を感じる。てっきり口にされると思ってたから、小さく肩がぴくりと揺れた。そのまま、額、瞼、頬、鼻筋、顎と何度も優しいキスの雨が降り注ぐ。
触れた箇所から、五条の気持ちが溢れるほど伝わってきて、むせ返りそうなくらい。言葉よりも雄弁に感じる愛情に胸がいっぱいになって、思わず唇が開いた。
そこにぬるりと舌がねじこまれる。
「んぅ
…
っ!」
それはキスなんて生易しいもんじゃなくて、捕食されてるかのようだった。口の中を熱い舌が這い回って、吸い上げられて。大きな口で唇を食まれて、音を立ててかき混ぜられる。
「
…
っ、ぁ、ふぁ
…
っ!んむっ
…
」
気づいたら、シャツの上から両手で乳房を掴まれ、揉まれている。服の上からかりかり、と太い指で乳首を擦られるもんだからたまらない。
同時に五条の腰が太腿の間に割り込んできて、ストッキングの上からぐりぐりと中心を擦りあげる。そこに当たってる固いものがなんなのかなんて、ズボン越しでも分かる。
「っぁ、ちょ
…
っ!だめ
…
っ、ふぁ
…
っ」
むせ返るような激しいキスに翻弄されながら、あまりに性急な展開についていけない。
重ねた唇から、五条の興奮した荒い息が流し込まれる。服を着たまま二人で腰を擦り付けあって揺らして、もどかしさでおかしくなりそう。
五条のそれが、どんどん固く大きくなってくる。
「うたひめ、うたひめ
…
っ!」
五条の切なげな声が身体に響いて熱くなる。
まるでずっと前から求めあってたかのように、身体が互いを欲して動きが止まらない。
胸を繰り返し揉みしだかれ、シャツとブラの上から乳首を思いきりつねられた。
同時に、股の中心にぐりぐりっ!と固い腰を強く押し付けられる。
「~~~~~っ♡♡」
声にならない悲鳴は五条の唇にそのまま飲み込まれた。
あまりの気持ちよさに、思わず腰が浮いてかくかくと揺れてしまう。下腹が熱くて、とろりと溢れたのが自分でも分かった。
(うそでしょ
…
まだ、脱いでもない、のに
…
っ)
じゅーーーっ!と口を吸い上げられて、五条の唇がようやく離れる。
天井のダウンライトの逆光の中、こちらを見下ろす蒼の瞳が怪しい光を宿しているように見えた。
「ねぇ歌姫、僕がんばっちゃうからね」
この男をむやみにけしかけてはいけない。
そう思ったのは、後の祭りだった。
~翌日~
『あ、伊地知? 僕の今日の任務、全部夜にまとめといて。一気に片付けるから。あと歌姫の出張、京都への帰着届は明日に変更しといて~。よろしく!』
「
……
だそうですが
……
七海さん、今日の任務は時間変更をお願いできますか
…
。あの、時間外にはなってしまいますが
……
」
「
――
あの人が仕事に真面目に向かってくれるならそれに越したことはないですよ。庵さんも自業自得というか
…
まあ、もう腹を括るしかないんじゃないですかね」
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