三毛田
2025-12-21 21:49:19
1067文字
Public アドベント25
 

21 01. 無償の情

21日目
それは君がくれるもの

 無条件で相手を思いやる気持ちを持てる人間は、どれくらいいるのだろう。
 親子間というか、親から子への無償の愛というものがあるとは聞いた。
 それを抱けない親というか、大人もいるとも。
 まあ、愛とか情の定義とかは人それぞれだったりするから、俺がどうこう言える立場じゃないけど。
「疲れたのか? 専門家ほどではないが、軽くならマッサージも出来る。ほら、横になれ」
 依頼から帰ってきた俺を見て、柔らかく微笑みながら告げる丹恒。
 断るほどのことでもないので、うつ伏せに寝転がれば。
「首や肩周りが凝っているな。また、何時間も椅子に座りっぱなしでいただろう。十数分に一度は立ち上がって、軽くストレッチをしろと言っているだろう」
「あでででで」
 痛いと口にする間もなく、首や肩周りを容赦なく揉んでほぐしていって。
 きっと彼のこの言動も、無償の愛や情から来ているのだろう。何となくだが、そう思ったのだ。
「丹恒にとって、無償の愛って?」
「どうした突然」
「うーん……哲学?」
「受ける側にとっては当たり前で、特に意識をしないものだろうな」
「あー……なんとなく、わかる気がする」
「そうか。ただ、与える側は見返りを求めていない愛情だと考えている」
 無私の愛。ってことか?
「肩甲骨周りをほぐす。痛がっても止めないからな」
「そこは止めてって! ぎゃああああ!」
 ぐりぐりと、肩甲骨周りを強く押して。その後、ベリッとはがすような勢いで。
 痛い。でも、ちょっと気持ちがいい。どうしてくれるんだ、癖になったら。
「あ。体がすごい軽くなった」
「それはよかった」
「また丹恒のマッサージ屋開店してくれよ」
「開店日は不明だ。店主の気分次第だからな」
 なんて、俺の悪ふざけに付き合ってくれる。
「丹恒、ちゅーしたい」
「ほら」
 キスをしたいと告げれば、彼は目をつぶって。
 そっと頬に手を添えて、ちょっと冷たいけれど柔らかい唇にキス。
「ふふ」
「お前とのキスは、悪くない」
「そんなこと言われたら、嬉しくなってもっとキスしたくなっちゃうんだけど」
「したいならばすればいい」
……我慢できなくなるって言ってんだよ」
 胸に手を当て、そっと腹まで撫でる。
……お前の好きにすればいい」
「まーたそうやってぇ!」
 ポスッと胸に倒れ込めば、優しく抱きしめてくれて。
「そういうところだぞ~」
 これこそ、無償の愛で、無償の情。
 俺は、一生彼に勝てない気がする。積極的に勝つ気もないけど。
「丹恒、好きだ」
「俺も穹が好きだ」