わらびもち
2025-12-21 17:37:52
832文字
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無知な子ども

四季送り げんみ×
自探索者の話

私には変わった友人がいる。

泡淵雪というその子どもは、2週間ごとに記憶がリセットされるらしい。理由については知らないが、おそらくノーチラスにいる子どもに普通の人間はいないからそういうものなのだろう。

一度死んで生き返った私だ、学校はもとより家と研究所など、ノーチラスの監視下にある建物しか行動範囲がない。少なくとも世間が荒城一家を忘れるまでは。
そんな狭い世界で同じ年代の友人というのは貴重だ。何度忘れられたとしてもその度に初めましてをしている。

雪と遊ぶ時、大半は閻魔さんという女性のいる日本家屋だ。お絵描き、カルタ、キャッチボール。ゲームなんかの現代っ子らしいものはあまりないものの、退屈することはないためよく遊びに行っていた。

ただ、その日はいつもと違った。雪と会うまでの間にいくつかの違和感があった。

一つ、2週間ぶりの訪問だったこと。父を通して組織の研究員から禁止されていたためだ。
一つ、会えなくなる直前、雪の様子がおかしかったこと。

実際に会ってみた時は、拍子抜けするほどいつも通りの雪だった。いつも通り、初めましての挨拶をする。

違和感。

閻魔さんの様子がおかしい。
いつも少し離れたところから微笑ましそうに私達を見守る閻魔さん。その瞳が揺れていた。心配なのか、不安なのか、恐怖なのか、また別の何かなのか。それを推し量れるほどのものはなかったけれど、なんとなくその瞳が父のものと重なった。

私は何も知らない。母が側にいない理由も、時々会える風香が会う度に違っている理由も。ノーチラスの管理下にあるだけのただの子どもにわかることなんて何もない。

だけど、私は知っている。父は私が楽しいと感じた話をすれば安心した顔をすることを。私に出来ることが他にないことを。

「雪、今日はキャッチボールでもしない?」

遊ぼう、雪。
何も知らない無知で無力な私には閻魔さんの憂いを払うことなんて出来ないけれど、君が笑ってくれれば、きっと。