ひよこ
2025-12-21 15:23:59
8269文字
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クリスマスネタでサンルシ書きたかった

・描写に対して(作者の)実力が見合ってない
・ルシフェル復活時空
・クリスマスネタなのに夏の場面から始まるし、クリスマス要素が薄い



 照りつけるような日差しが浜辺に注がれているのを日陰から見つめる。日向はかなり暑そうだ。

「屋台が混んできたな。君の言う通り早めに行動して良かった」
「そうでしょう?屋台で喫茶室の修行した時に、時間帯や日光の照り具合で観光客がどう動くかは分析済みなんですよ」
「ふふっ。頼もしいな」

暑さから逃れる為に日陰で休憩しようとする観光客で屋台は大行列だ。俺達は既に席に座って注文した冷製珈琲を待っている状態で、少し優越感すら感じる。ルシフェル様にこの日差しの中、ただ席が空くまで待ちぼうけの状態にさせるなんて事が起こってはならない。過去の経験が活きて良かった。

 俺とルシフェル様は二人でアウギュウステに来ていた。ルシフェル様との初のバカンスデート。ルシフェル様に一瞬たりとも退屈を感じさせない様に、念入りに計画を立てた。一ヶ月前からだ。

「この後の予定ですが……
「お待たせしましたー!当店特製の冷製珈琲です!」

 予定よりも少し早く冷製珈琲が届いた。この後はバナナボート体験の予定だが、日差しが強過ぎる。ルシフェル様の肌を日差しから守るべく、日焼け止めを既に塗らさせて頂いたがもう少し日陰にいた方が良いかもしれない。俺はプランCからプランFに計画を移した。

「ルシフェル様は先に冷製珈琲を堪能しておいてください。俺はかき氷を注文しておきます」
「かき氷は午後に食べるのではなかったか?」
「少し計画を変えました。この後は浜辺のパラソルの下でかき氷を食べましょう」

ルシフェル様がブルーアウギュウステ味をご所望な事は事前に把握済みだ。俺は注文する為、席を外した。その際、子ども達の笑い声が外から聞こえた。何を言っているのかは店内の声に紛れて聞こえなかったが、おそらく屋台の順番待ちで外で遊んでいるのだろう。この暑さに応えずはしゃぎ回る空の民の子ども達……か。昔は空の民なんて星晶獣と比べて脆弱な存在としか思っていなかったのだが、災厄をきっかけにその意識は変わった。やはり侮れない。そう考えながら、俺は注文を受け付ける為の列に並んだ。



「想定より混んでいて注文に時間が掛かってしまいました。お味は如何ですか?」
……ああ。後味がすっきりしていてとても飲みやすいよ」
……?」

何かあったのだろうか。ルシフェル様の瞳がどことなく憂いを帯びている様に感じる。味がイマイチだったのだろうか?と考えて試飲したが酸味が効いたすっきりとした味わいであり、飲み物が原因では無さそうだった。ルシフェル様を少しの間待たせてしまったのが問題だっただろうか。ほんの一、二分程度だが。

「ルシフェル様?何かありました?」
……うん?何でもないよ。サンダルフォン、早くしないと氷が溶けてしまうよ」

ルシフェル様はいつものように微笑まれた。俺の勘違いだったかもしれない。

 ルシフェル様には幸せに過ごして欲しい。そして、その幸せは出来るだけ俺が与えるものであって欲しい。そう思いながら夏のバカンスを過ごした。

* * *

 バカンスを過ごして以降、ルシフェル様は少し変わられた。以前よりも空の民の文化に興味を持ったようだ。街の本屋から叡智の殿堂の司書といったあらゆる書物を読み漁っていた。本だけではない。観劇もなされる様になった。団に所属されたばかりのルシフェル様に、何かしたい事があるかと聞いても君がしたい事がしたいと受け身だったあの頃と比べるとかなり見違えた御様子だ。天司長というかつての役割がなくなり、唯の生命体として今の生活を楽しまれている様であれば何も問題ないのだが……。どうやらそうでも無さそうだ。借りた書物を漁っている時も一緒に劇を見る際も常にルシフェル様は真剣な表情だった。



「ただいま戻りました、ルシフェル様」
「おかえりなさい」

ルシフェル様は俺達の部屋にあるソファで読み物をなされていた。

「ルシフェル様、少し変わられましたね」
「何の事だろうか?」
「貴方の持っている本の事ですよ!最近は時間さえあれば本を読んでばかりで……。貴方に趣味が出来たのであれば嬉しいのですが、趣味というには没頭しすぎだ。何かあったのですか?」
「ああ。君にまだ言っていなかったな。実は賞に応募しようと思っていて、その為に空の民の文化を研究していたのだ」
「賞?」
「この記事を見て欲しい」

ルシフェル様は本棚から雑誌を取り出し、開いた状態で俺に手渡した。ルシフェル様が書き足したのだろう赤い丸で囲まれた記事に書かれていたのは文学賞の募集要項だった。絵本から児童書・長編小説など分野毎に分かれている。締切は一週間後だった。

「最優秀賞に選ばれたら出版されるらしい。私の書いた本が一人でも多くの空の民に行き渡って欲しいのだ。その為に最も相応しいのはどの要項だろう?一緒に考えてくれるだろうか」
「勿論です。ただ、お言葉ですがいくらルシフェル様でも必ず受賞するとは……
「ふふっ、そうだな。気が急いてしまった」

微笑まれてはいるものの目はまったく笑っていなかった。何がこのお方を突き動かしているのだろう。どの分野に応募するのがよいか相談を受けている最中、ルシフェル様のお考えを探ろうと手を替え品を替えてみたが徒労に終わった。
 

 応募する作品を児童書に定めたルシフェル様は、締切がくる一週間の間、必要最低限の用事を除き部屋に引きこもっては執筆作業に明け暮れていた。天司長時代に報告書は沢山作成されていたはずだが、流石に物語を書かれた経験はなかったようだ。文字数が規定に満たないとか、人の子の心理描写が難しいとか吐露されていた。このままでは徹夜か続くかもしれないとも。

「ルシフェル様、この選考は毎年行われているらしいですよ。無理に今年応募しなくても良いのでは?」

俺は差し入れの珈琲を机に置きつつ声を掛けた。
ルシフェル様の机の周りはクシャクシャに丸められた紙が散乱している。執筆が難航しているのだろう。締切に追われる人物に珈琲を差し入れる機会は何度かあったが、まさかルシフェル様にこの様な形で珈琲を用意する事になるとは思いもよらなかった。

「ありがとう。サンダルフォン。でも、今年の機会を逃す事はしたくないんだ」

ルシフェル様は珈琲を飲みつつも目線は原稿用紙を捉えたままだった。

「ルシフェル様……
「サンダルフォン、どうか許して欲しい。提出が済んだら埋め合わせもかねて君の望む事をしよう。何がしたい?」

こちらを向き微笑むルシフェル様は少し顔が赤かった。ずるい。そんな顔をされてはそれ以上の追求はできない。

「考えておきますから、覚悟しておいてくださいね?」
「ああ、楽しみにしているよ」


 締切当日の夜、ルシフェル様は何とか原稿を完成させた。一般的な空の民では発送しても到底間に合わない時間帯だったが天司特権を使い飛行して現物を届ける荒技を披露された。天司長時代、無私無欲と言われたあの方がここまで一つの物事に執着するとは思わなかった。それほどまでに執筆とは面白いのだろうか。俺も挑戦してみても良いかもしれない。


 締切を無事(?)に終えられたルシフェル様は憑き物が落ちたようだった。暇さえあれば読んでいた本も、今では本棚に収納されたままだ。観劇も進んで観に行こうとは言わなくなった。あれほど最優秀賞を狙っていた理由は遂ぞ分からなかったが珍しいものが見えたので良しとしよう。執筆の最中に放って置かれた埋め合わせにルシフェル様から好きにして良いと言われた事もあり、執筆終了後の一週間は暇さえあればルシフェル様といちゃいちゃした。色々と溜まっていたが、この一週間ですっかりリフレッシュできたこともあり、俺は文学賞の事にはこれ以上触れない事にした。

* * *

 あれから数ヶ月経ち、空から雪が舞い降りる季節になった。街はクリスマス仕様に飾り付けされている。今日はクリスマスだ。俺は昼に一人、ルシフェル様へのクリスマスプレゼント探しをするため街に来た。正確には既に用意はしてあるのだが、良い物があればプレゼントを追加しようと考えていた。今年はホワイトクリスマスになりそうだと団員達が話しているのを聞いた。

 街を歩いていると、ふと書店が賑わっている様子が目に飛び込んできた。子ども連れの家族が多いようだ。そういえばルシフェル様が応募した賞の最優秀賞作品が出版される頃だったかもしれない。

「お母さん!この本友達が凄く面白かったって言ってた!私も欲しい!」

どうやら最優秀賞を取った本が大人気のようだ。ちなみにルシフェル様は落選したと言っていた。ルシフェル様はどのようなお話を書かれたのだろう。頑なに見せて頂けなかったので、内容は一切把握していない。ルシフェル様の作品を差し置いて出版された本とはどの様なモノなのだろうか。店に入り該当の本を手に取って表紙を確認する。本のタイトルは「お花のサンタさん」か。今の時期に相応しいタイトルだ。心温まるストーリーと書店員の手書き広告に書いてあった。今後、ルシフェル様が賞に再度応募する機会があったら何かしらの助言ができるよう、研究目的で本を購入した。結局目ぼしいものは見つからなかったため、戦利品は自分用に買った本だけとなった。

* * *
 
 俺とルシフェル様の自室に戻ってきた。ルシフェル様はいらっしゃらない。ルシフェル様はクリスマスケーキを自分で作りたいと仰っていたのでその準備をしているのだろう。ケーキは完成品を見せたいからサンダルフォンは調理場立ち入り禁止だよと念を押されてしまった。ルシフェル様が戻られるまでまだ時間はあるだろう。折角だから買った本を読む事にした。

 木の椅子に座り買った本である「お花のサンタさん」を読み進める。主人公は茶髪赤目の男の子で名前はサンという。サンタさんから取ったのだろうが親近感が湧いてしまう。病弱の母親の看病をしながら生活をしていた。……想像していた出だしと大分違っているな。タイトル詐欺ではないか。クリスマスの話と題しているのに夏の場面から始まるくらいの違和感を感じる。この後のストーリーの概要はこうだ。

・禁断の森には万病に効く薬草があるとされていたのだが、それを求めて過去に争いが起きていた
・それに憤怒した森の主が今後立ち入る者に呪いを掛けると言い放った
・村の住民は侵入者が森に入ることを阻止する代わりに主から加護を得ていた
・サンは母親の病を治す為禁断の森に入り、薬草を手に入れた
・しかし、母親の病を完治するには至らず、元々病弱だった事もあり遂には亡くなってしまった
・禁断の森に入った呪いか、村には全く雨が降らなくなってしまった
・村の住民は禁を破った罰としてサンを処刑しようとした
・森の主はサンが森に入った経緯を知り許しの機会を与えるとした

……ここまでは心温まるストーリーとは程遠い流れだったが、これ以降は宣伝通りの心温まるストーリーだった。

・サンは幻の花を咲かせることを命じられる
・咲かせるのに必要な肥料、世界樹から出る雫といったアイテムを探しに旅に出かけた
・旅の途中で出会う仲間との熱い友情を育み、行く先々で出会う人達を助け助けられて、サンは心身共に成長する
・最終的に全てのアイテムを集める事に成功する
・住んでいた村に戻り、サンは花の種を植え愛情をもって育てる
・枯れた大地に植えられた種から出た芽は徐々に成長、最後に黄色い花が咲いた
・花が咲いたと同時にその地に再び雨が降るようになった
・避難していた住民達も戻ってきてサンと和解した
・サンは度の道中で世話になったサンタとの経験からサンタに転職、病を持つ家族を持つ子ども達に病を治す力を持つ花の苗木をプレゼントするようになった
・苗木は人々の優しさに触れる事で成長する
・世界は優しさで包まれ病で死ぬ人はいなくなった

……。何だろう。確かに最終的には心温まりストーリーだったが、違和感がある。皆がサンに優しすぎるのだ。犯した罪を消す事はできない。実際にサンが住んでいた住民はかなりの被害を受けたのに最後にはサンを暖かく迎えたのだ。児童書だからハッピーエンドのご都合主義なのだと言い切ってしまえばそれまでなのだが、作者に何かしらの意図があったように感じる。本を閉じ表紙を見る。作者名を確認すると「ヒカリ」と書かれていた。光、か

 そういえば俺の「光」はまだケーキの準備を続けているのだろうか。立ち入り禁止とは言われたものの少し様子を見に行きたくなってきた。夕方からは食堂でクリスマスパーティが開かれるため、今頃食堂の飾り付けや食事の準備が行われているかもしれない。俺でも何かしら力になれる事もあるだろう。その手助けと称して偵察に行くことにした。

* * *

「皆、グラスは持ったかな?それじゃあ始めるよ!メリークリスマス!」
「「メリークリスマス!」」

 団長の掛け声と共にクリスマスパーティが開始された。俺とルシフェル様ももちろん参加している。白いテーブルクロスの上にはチキンやピザなどクリスマスらしいご馳走が並んでいる。勿論ケーキもあるがそれには手を付けない。団員とのおしゃべりや料理を一通り楽しんだ後、俺達は途中退室した。自室に戻る途中でルシフェル様のケーキを取りに調理場に寄る。パーティ前の手伝いに来た時には既にケーキは箱に仕舞われていたため中身は見れていない。

 自室に戻り、ルシフェル様がケーキの箱を開ける。
「サンダルフォン、まだお腹に余裕はあるだろうか」
「ルシフェル様がケーキを焼いてくださるんですから、その為のスペースは当然空けていますよ。わぁ、とても可愛らしいですね」

箱の中からホワイト・ブッシュドノエルが登場した。ケーキの上には赤い服を来たサンタの砂糖菓子ものっている。ただ、そのサンタは一般的なサンタではなく茶髪で白い髭も一切生えてなかった。

「ルシフェル様、このサンタさんは?」
「ああ、このサンタも私が手作りしたんだよ」

茶髪で目が赤いサンタ……。よくよく見ると周りに黄色い花の飾りもあった。

「「お花のサンタさん」?」
「サンダルフォン。知っているのか?」
「ええ、実は昼に出かけた際に書店で売っているのを見つけまして、貴方がいない間に一通り読みました」
「そうだったか。……実は私も読んでいて、すっかり気に入ってしまった。ケーキの飾り付けにしてしまう程だ。読んだ感想をぜひ聞かせてくれないだろうか」

ケーキを食べながら本の感想を告げる。恋人と過ごすクリスマスのロマンチック感は全く無くなってしまったがルシフェル様がとても嬉しそうなので良しとする。物語の始まりから最後まで事細かに感想を聞かれた為30分ほど喋りっぱなしだった。ケーキを食べ終わってからは買った本を片手に感想を語っている。

「この物語の登場人物は皆、サンに甘すぎだと思うんです」
……そうだろうか?」
「そうですよ!作者の贔屓が見え見えです」
「そんな事はないと思うが。サンは旅の中で罪を償う為に奮闘した。それを考慮して皆はサンを評価する様になったのだ」
「ルシフェル様は罪にかなり寛容な事は把握していますが、正直一般的な空の民の感覚とは掛け離れていると思います」
「そんな事はない!空の民が共感してくれたからこの本は受賞したのだ!出版に至り、沢山の子ども達の手に取られているんだ!」
……
「すまない。声を荒げる程ではなかったな」

ルシフェル様は恥じらって黙ってしまった。そのまま観察し続けると気まずさを紛らわせる為か飲みかけのシャンパンに手を付けていた。ルシフェル様のあの肩の入れよう……、持っていた疑念が確信に変わった。

「ルシフェル様。俺に隠している事がありませんか?」
……何のことだろうか」
「例えば、この本の作者。実はルシフェル様とか」
「急に何を言い出すかと思えば……、そんな事あるわけないだろう。サンダルフォン」

平静を装うとしているが、俺には分かる。ルシフェル様は自分に都合の悪いことがあると笑顔で隠そうとする。作り笑顔は苦手なのか、不敬だが正直言って面白い顔になっている。俺はルシフェル様にボロを出させる為、罠を仕掛けた。

「そう言えば、この本を買う時に子ども達が話しているのが聞こえたんです。この本のお陰で罪を犯した友達を許せそうだと」

それを聞いたルシフェル様は喜色満面の笑みを浮かべた。

「そうなのか!ふふっ、それなら良かった」
「何が「良かった」のですか?」
……

また、面白い顔になっている。俺は我慢の限界だった。

「アンタ、笑顔を作るのが下手だから隠し事しているのがバレバレなんだよ!今日こそ洗いざらい吐いてもらうからな!」


俺の剣幕に動揺していたルシフェル様だったが漸く観念したのか、ぽつぽつと話し始めた。

「空の民が罪に向き合うものに寛容になって欲しくて、その手段を考えていた。その手段として書物を選んだのだ。人々は書物から知識や観念を学ぶからだ。児童書にしたのは、多感な年頃に読んでもらいたかったからだ。子が読んだ本の話を親にする事で認知の向上も狙える」
「どうしてそのような事を?」
「君と夏にバカンスに行っただろう。屋台で君がかき氷を注文している最中に見た子ども達がきっかけだ」

俺は黙って話を聞き続けた。

「彼らは「災厄」討伐の模倣遊びをしていたのだ。罪を犯した「災厄」を「天司長」が討伐するといったものだ」

ルシフェル様のお顔は苦悩に満ちている。

「私は恐れたのだ。空の民が君を断罪すると言い始めないか。君は確かに罪を犯したが、そこで終わらせてはいない。君は罪を認め心身共に成長した。空の脅威から世界を守った。その功績が考慮されれば断罪をと言うものはいなくなると思ったのだ」
「ルシフェル様……

そうだったのか。ルシフェル様が俺が空の民から処罰される事を恐れて、本を書いたのだ。俺の犯した罪に対し寛容になって欲しいと。

「ルシフェル様、お気持ちとても嬉しいです。ですが、仮に俺を罰したいと願う空の民達が現れたら応じようと思っていました」
「サンダルフォン!何を言い出すんだ!」
「勿論、易々と殺されませんよ。俺には貴方がいる。団長達にも恩を返しきれていない。空の脅威も消え去っていない。俺はまだ死ねない」

ルシフェル様とは違い上手な作り笑顔を浮かべて彼を見つめる。俺の光。永遠の光。ずっと輝いて欲しいと思っているのにその光に影を差してしまうのはいつも俺だった。

「サンダルフォン。私は「あの時」言った。世界中の人々が許さずとも、幾星霜の中で憎まれようともと……。だが、私は変わってしまった。欲深くなってしまった。私の安寧をどうか許して欲しいと」

ルシフェル様は涙を浮かべている。ずっと不安を抱えていたのだろう。彼なりの手段で必死に俺を守ろうとしてくれていたのだ。

「ルシフェル様、ありがとうございます。ずっと俺の事を気に掛けてくれていたのですね。それなのに俺は全く気付かなかった」

ルシフェル様の頬を伝う涙に触れながら話を続ける。

「でも、今度からこういう事は俺にちゃんと伝えてください。言ってくださったではないですか、共に災厄の罰を受けると。贖罪の道をこれからも一緒に歩んで欲しい」
「うん。分かったよ、サンダルフォン」

ルシフェル様の唇に触れるだけのキスを送り、その後舌を絡め合う。視界の僅かな片隅に見える窓から雪が降っているのが見えた。しんしんと降っている。とても静かだ。俺達の吐息を除いて。その後はルシフェル様の手を優しく引きベットに誘う。向かう最中、用意していたプレゼントの箱が見えた。

「プレゼント、今日中にお渡しできなさそうですね」
「クリスマスプレゼントがただのプレゼントになってしまうな」

ルシフェル様にいつもの笑顔が戻られた。


 どうやったって俺の罪を無かった事には出来ない。ルシフェル様の不安を完全に拭い去る事は出来ないだろう。だけど、今は俺だけを見て、感じて欲しい。


メリークリスマス





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