三毛田
2025-12-20 23:41:44
1088文字
Public アドベント25
 

20. 「好き」と言って

20日目
君の口からはっきりと

 その言葉を、彼の口から聞きたいのに。
 簡単には叶わない。わかっている。彼が、軽々とその言葉を口にしない人間であるということを。
 それでも。
「丹恒。好き~」
「そうか。俺もお前のことは嫌いじゃない」
「知ってる」
 読書中の丹恒に絡みに行き、頬ずりするとベリッとはがされた。
 仕方ない。
 抱き着くだけなら高確率で許してもらえたりするけれど、頬ずりは駄目なのだ。
 視界に俺の頭が入って、邪魔らしい。
「膝に失礼しても?」
「好きにしろ」
 こうやってすぐに甘やかすくせに、絶対に俺のことを好きなはずなのに、好きって言葉だけは絶対に口にしなくて。
 丹恒の膝に頭を乗せた後、お腹側に顔を埋める。
 深呼吸して、匂いを嗅いでいるうちに気づけば眠ってしまった。
……だ」
「ん……んぅ?」
「起きたか。そろそろ食事の時間だと、三月が騒いでいた」
「なぁんれぇ?」
「今日は、皆列車にいるからだろうな。一緒に食べたいのだろう」
「たんこぉは、俺の隣ねぇ」
「甘えん坊だな」
 俺の髪を優しく撫でた後、こちらに体を倒してきて。
「んぅ? はっ!?」
「どうした」
「どうした? じゃないだろ!? お前、今っ」
「よだれの跡があるな。何か食べる嫁でも見ていたみたいだな」
「っと。じゃなくて!」
 丹恒の指が触れる前に、手の甲でごしごし拭う。だから、そうじゃなくて!
「俺のおでこにチューしただろ」
「したな」
「俺のこと好きじゃん」
「そうだと前から言っているが」
 そうなんだけど、そうじゃないんだよ! なんでわかってくれない!?
……
「不満そうだな」
「お前が言葉にしないから」
 むすっとした表情を向け、今度は俺からキス。
「ん……
 少しだけ気持ちよさそうな声が、丹恒の唇から漏れて。
「今日は、少々強引だな」
「駄目?」
「食事の後、皆が寝静まってからなら……お前の好きにしろ」
 ほら、また。
「丹恒」
「なんだ?」
「俺は、お前の口から好きって聞きたいんだ」
……さっき、言ったんだが」
「俺は聞いてない」
 もしかして、俺が起きる直前に言ってた?
 それは反則だろ。
「恋人なんだ。ちゃんと意識がある時に、聞きたい」
……お前が、好きだ」
「うん。俺も好き」
 言わせた感が強いけれど、初めて面と向かって好きだと言ってくれた。今はそれだけで満足しないと。
「じゃあ、ご飯食べよう」
「三月に怒られるからな」
「お腹ぺこぺこのなのほど、怖い物はないもんな」
「それは確かに」
 手を繋いでご飯を食べに行く。
 顔がにやけていると言われたけど。