ぐるさん
2025-12-20 22:40:30
1470文字
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12.20 ふみりかワンドロ【手を繋ぐ】

ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2025.12.20お題をお借りしました。

 思ったより遅くなってしまった帰り道。日が傾く途中の薄暗さの中で、前方にぼんやりと白い人影が浮かぶ。

 目を凝らして見れば、白いダウンを着たふみやさんだと気付いた。

「ふみやさーん!」

 毎日顔を合わせているのに、家の外で偶然会える何故か不嬉しくなってしまう。

 ウキウキとした気持ちで小走りをして左隣に近づくと、ふみやさんはのそりと振り向く。

「理解」

 眉間に皺を寄せ、背中を丸めてダウンの襟に首を埋める姿は、まるで不良か輩かチンピラだ。

 PPPPPPPPP!

「コラッ!ちゃんと背筋を伸ばしなさい!」
「えぇ……寒い……
「寒いって貴方、こんな真冬にダウンしか着てないからでしょう!外に出る時は暖かく!いつも言ってるでしょう!」
「それは……まぁ、その……
「私の話をちゃんと聞かないからこうなるんです愚か者め!ほらポケットからも手を出す!」

 ダウンのポケットに入った両手を引っ張りだすと、案の定キンキンに冷えていた。

……理解」

 なんで出したんだよ寒いだろ、とふみやさんが目で訴える。

きっと出会ったばかりの頃だったら、その迫力に怯むだけで意図を汲めなかっただろうが、今はもうお構いなしだ。

「ポケットに両手を入れたまま歩いていたら、もしも何かにつまづいて転んでしまった時にきちんと受け身ができません!それではお鼻ぺっちゃんこの助です!」
「何で鼻の負傷確定なんだよ」
「顔から地面に激突したら、出っ張ってる所が一番先に当たるでしょう?」
……あーね」

 ふみやさんは納得したような、そうでも無さそうな顔をしながらしれっと両手をポケットの中に戻す。

 PPPPPPPPPPPP!!

「コラァッ!!私の話聞いてました!?」
「うん。でも寒い」

 なんという開き直り。本来ならこの場に座らせお説教をする所だが、薄着のふみやさん相手に流石にそれは風邪を引いてしまう。

……仕方ないですね」

 お説教は一旦家まで保留にして、己の手から着用していた手袋を抜き取る。

「一先ずこちらを使って下さい」

 ふみやさんに手袋を向けると、驚いたように目をぱちくりとさせる。

……いいの?」
「このままでは埒が明かないですからね。一先ず応急処置です」
「でも、理解が寒くない?」

 自分だって寒いだろうに、こういう時は意外と他者を気遣う所は憎めない。

「私は大丈夫ですよ。ほら、早く着けないと霜焼けになっちゃいます」
「うーん、でも……あっ」
「ふみやさん?」
「理解、これ着けて」

 ふみやさんは私に左手側の手袋を差し出す。さっき私が渡した手袋を。

「早く、理解」
「えっ、あ、はい」

 湧いた疑問を処理する間も無く急かされ、思わず指示に従ってしまった。

「よし」

 気づけばふみやさんは右手に手袋を着けている。

「理解、右手貸りるよ」
「えっ」

 ふみやさんは私の右手——手袋を着用していない手を、するりと握った。手袋を着けていない左手で。

「ハァッ!?ちょ、えっ!?ふみやさん!?」
「これなら両手とも暖かいよ」
「ハァーーーーッ!?」
「このまま帰ろ」

 まだまだ事態を飲み込めない私の気持ちを置き去りにして、ふみやさんはズンズンと歩き出す。

 本来ならこの場で、許可も同意も得ずにこんな行為をする事を注意すべきだろう。

 でも、外は寒いから。お説教はさっきのと合わせて家の中で——そう言い聞かせて、ちょっとだけ手を握り返して歩き出した。