いしえ
2025-12-20 18:22:40
5785文字
Public 封神腐
 

ナタと雷関係の短文ログ(pixiv投稿のもの3つ合体)

1.蓮の実にまつわるエトセトラ/太乙+哪吒+李夫妻(やんわりナタ雷ナタ前提)
蓮の実と言えば、の話を書きました。封神台にアップしたものとほとんど一緒ですが、部分的に間を追加しています。(画像SS版は縦書きならそのままでしっくりきたのでそのままです)
本文+画像SS版を挿絵で本文のあとに。

2.蓮花はとっておきの秘密/ナタ雷ナタ
まかよん戦のナタ雷ナタが良すぎるなぁと思い、それより少しあとの話として書きました。

3.止まり木にて唄う/ナタ雷(途中まで雷ナタ寄りに見えるかも)
愛の言葉は交わしたことがないけど寄り添ってる系(両片想い。哪吒は無自覚)。ふわふわ、アイデンティティに少し悩んでいるような。
初代アニメでの会話に触れますが、特にアニメ版というわけでもないです。本編終了後のイメージ。
天祥との約束は終盤で話題に上がりますが、いっときの不安ででも哪吒が雷震子にならいざというとき破壊されてもいいと言うので、それでも大丈夫なかたのみ…! 天祥はすっかり安定して長い状態です(登場はなし)。



1.蓮の実にまつわるエトセトラ/太乙+哪吒+李夫妻(やんわりナタ雷ナタ前提。本文+画像SS版)





 古代中国、殷から周への移ろいも済み落ち着きが見えてきた時代の、とある時間。哪吒は、帰省として陳塘関を訪れる。何故だか先を読んだように太乙真人が来ていたのが少し面白くなかったけれど、母、殷氏の顔を見られるのはやはりうれしいものだ。
 殷氏と哪吒と李靖と、そして太乙との顔ぶれで、ちいさな茶会が始まった。
「ああ、そういえば、こんな話を聞いたのだけれど
 太乙が、茶器をことりおいて、言うなりまた傾げる。話は長くなるのだろうか。母の手前黙って聞くが、退屈だったら、退屈真人とでも呼んでやろうに。
 素知らぬようで、太乙は、話を続けるのだった。
「蓮の実は、西のほうでは王との結びつきが強い豆と混同されたりするようだね。ほら、あれは、形状がくちばしみたいだろう。同じくそんなふうな、ヒヨコマメ、っていう豆があるらしいんだ。その話が国外で錯綜して、蓮の実と混同される、というわけさ。
 ヒヨコマメは、エジプトでは、その形から隼の太陽神ホルスとその化身たる王を連想させるものとして、神聖視や、禁忌化されているそうだね。と言っても、禁忌化しているのは上流層だけらしいけど神殿への供物になんかも、あがるんだってさ」
 太乙は、そこで話を切った。
 李靖が、いかにもケッ、という顔でつんと頬杖にあぐらでそっぽを向くのに反し、殷氏は諸手を合わせてきゃぴるんと笑み、我がことのように喜ぶのだった。
「あら、素敵じゃない、哪吒。そんなお豆と、混同される華の化身だなんて。なんだか、ロマンチックね」
 殷氏が蓮の化身と知ってなお母として、そして身分の尊卑に関係なく母として、ただ純粋に、哪吒と縁深い蓮にまつわる話をうれしがったことだけがただわかり、哪吒も、なんだかぬくもりに包まれた心地になる。けれど、同時に思った。
………ありがとう、母上。
 だが、太乙真人。一つ、気になることがある」
「ん? なんだい、哪吒」
 胡麻や様々な種実の入った月餅をつまみながらもぐもぐとこもりがちに返されて、少し調子が狂う。けれど、言っておく必要があると思ったのだ。
「くちばしなら、雷震子のほうじゃないのか」
「え? あー……まあ、たしかに、そうかもしれないけれど」
 二人が親しい間柄にあることを承知の太乙が、何とも言えない顔をするのを哪吒はよくはかれないなりにただ気にくわないと思うのだった。
 パトロール部隊のほうに帰ったら、聞いた話をそっくりそのまま、思ったように、アイツに聞かせてやろう。そう思う哪吒を読み切れている太乙が、こう、思うけれど言わずに留めるのだった。
――あの子なら、きっと、豆鉄砲でも喰らった顔をするんだろうね。
 神秘的な結びつきの止まり木に想い馳せ、太乙が見守る親そのものの顔をするのを何故と知らずに、哪吒はなんとなく、殷氏の前にはもっと居たいのにわずか今すぐにでも飛んで帰りたいような心地になり、胸に手を当て、首傾げるのだった。
「そうすると鳥みたいだな」
 李靖のひとことは、さらりと聞き流した。




終(以下、画像SS版)



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2.蓮花はとっておきの秘密/ナタ雷ナタ





……おまえは、生まれた意味を、考えたことがあるか?」
 それは魔家四将との闘いでのダメージを、修復された直後のことだった。雷震子の調整に応じた哪吒が、師匠ストップのかかることなく、かと言って手加減も決してせず、決着をつけたのちにそんなことを尋ねてきた。
 雷震子は、哪吒が宝貝人間であることは聞いている。彼のおおまかな生い立ちや、今、蓮の化身であることも雲中子から聞き、知っていた。問いの理由にピンと来る。哪吒はどうも、改造人間である雷震子にある程度の親しみを抱いているようで、魔家四将との闘いでもかばって見せたのだ。だからこそ、雷震子が相手だからこそ、訊いたのだろう。
――はぁ、何だかなぁ
 どうも懐かれてしまったようで、わずか困惑する。少しの親近感こそあれ、自分たちはずいぶんと境遇が違う。哪吒の心境を、完全に理解してやることはできないと断言できる。それでも、と、思うのだ。それでも、歩みを寄せられたのなら、同じ止まり木にとまる隣人には成れるはずだ。自分たちならば。そう思う。だから、雷震子は、素直に、本心を答えたのだった。
……生まれた意味、っつぅかよ……そのー、なんだ。
 俺ぁ、元々は捨て子だ。生みの親にゃ要らねぇ子どもだったのか、それとも事情があったのかは知らねぇ。けどよ、考えたことはあるぜ。望まれない子どもだったとしたら、ってな」
……そうか
 哪吒は静かに聴いて、それだけ相槌を打つ。それを見届けて雷震子は、うんうん、と、自身でもうなずいてみせるのだった。
「それでも、俺の場合は、オヤジに拾われて、育った。仙人界でこんな改造されちまったモンだから合わせる顔がなくて、義賊もしたが、いろいろあって、オヤジの顔は結局、拝めずじまいだったな。そこは、オメーとまるっきり違うトコだと思うぜ」
 父親、という単語を出したことで、反射的に哪吒の顔が険しくなるのが正直で少し好ましいと思った。それでも哪吒は、雷震子の話に続きがあるとみて、静かに聴くようだ。へぇ、宝貝人間のヤツ、意外と、聡いモンだ。そう感心した雷震子だった。本人がきけば怒るだろうけれど。
 雷震子は、話を続ける。
「正直、オヤジが死んだって聞いたときは思ったよ。俺ぁ、なんのために今まで生きてきたんだ?!って。けど、今度は発兄キの手伝いすることになった。新しい、目標が出来たんだ。受け止めるにはちっとばかし時間が要ったけどよ、なぁんか、それでもいいのかな、って、思っちまってる。俺ぁ、家族の力になりたい。だから、強いて言えばそのために生まれてきたんだと思ってるぜ。オヤジの力にはなれなかったが、そのぶん、兄キたちの力になってやるんだ! だから、ココで充分な力をつけたい。そのためには、哪吒。オメェの存在が、俺には必要だ。生まれた意味がほしいなら、俺が、オメーの理由になってやるよ。まずはそれで、いいじゃねぇか」
 なぁ?と、笑んでてのひらを差し出せば、哪吒は、むずかしいかおをしている。
いいのか? それで。俺には、分からない。母上のことは守りたい。強く、なりたい。おまえにも興味はある。だが、それだけで、じゅうぶんなのかわからない」
 きょとん。雷震子は目をぱちくりさせ、それから、安堵で哪吒の手をがしりと掴み、ぶんぶん上下に振りながらわらってしまった。
「なぁんだよ、オメェ、じゅーぶん持ってんじゃねぇか!」
 わっはっは、と、ばしばし手を揺らせば、迷惑そうにパッと払われる。
「持ってる? ちんぷんかんぷんだ」
 小首を傾げるさまが、あどけなく見えた。
「そーだよ。どーせ、太公望のヤローにも言われてんだろ、何かしら」
……
 むすり、引き結ばれるくちもとが図星と告げる。
「なんか、よくわかんねぇけどよ、みんなそんなモンらしいぜ。俺様がチームやってた頃ぁ、たいていのヤツらが、俺みてぇな気持ちで動いてた。やれ誰かの役に立ちたいだの、名を売りたいだの程度の差こそあったけどよ、似たようなヤツらの集まりだったんだ。
 宝貝人間。オメェは、今までに触れてきた人間の数がたぶん少ねぇんだ。違うか?」
……わからない。ほかのヤツのことは、よく知らないからな」
 ふむ。確かにそれは、そうかもしれないと雷震子は思った。
ま、そこはオメーの師匠の責任もあるかもな。
 俺から言えるのは、とにかく、生まれた意味ってのに悩む人間は多いのかもしれねーなっつーコトだな。オメェは、宝貝、とは付くかもしれねぇが、じゅーぶん人間っぽいと俺ぁ思うぜ。まあ、お互い言葉通り宝貝は付いてるけどよ」
 さいごに自虐を込めてドワッハッハ、とおどけてみせる。すると、どうしたことだろう!
……そうか」
 ふわり。わずか、わずかほころんだ表情が、確かにコイツは蓮の化身なのだろうと雷震子に思わせた。まなこを、こすってしまった。
――結構、表情豊かなんだな。
 そう思ったのを何だか誰にも言いたくないとっておきの秘密に感じて、雷震子は本人にすらそれを伝えなかった。とくんとわずか、胸がときめく感覚を好敵手への高揚と見る。何だか今は、いつも以上に誰にも負けない気になった。
……なぁ、もーいっかい、手合わせしてくれねぇか!」
 にかっと、立派な犬歯を見せて言えばニィと静かに笑まれる。
「望むところだ。何度でもかかってこい」
「それぁ俺様のセリフだっつーの!」
 やんややんや。師が見守っていることをすっかり忘れていた二人だが、胸に抱いたものだけは、見抜かれていようと秘密じみた。







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3.止まり木にて唄う/ナタ雷(途中まで雷ナタ寄りに見えるかも)





雷震子。お前になら、本体の場所を知られても構わない」
 細部のバージョンアップを終えて、降り立つなり挨拶も早々に哪吒が言った言葉に雷震子は三度見する。
「お前そりゃそりゃぁ、ちょっと待てよそりゃぁねぇだろ
「ある」
 なにをいっている、というふうで返す哪吒に、雷震子はいつもながら自身のこめかみに手を添え、深々息を吐く。
「お前なぁそもそも、自分は知ってんのかよ」
「知らない」
「はぁ???」
「だがこうして改造を重ねていて、思うことがある。俺は、いつか、宝貝人間ですらなくなるかもしれない」
「そりゃねえだろ。なるなら何だってんだよ。人間か? 宝貝ってこたねぇだろ?」
 即座に返す雷震子に、哪吒は一瞬あどけないまばたきをして、わずか。わずかふわりと、浮かべたそれは微笑だった。
「わからない。わからないが、――いつか、なにか、ちがうものになったら。壊されるならお前がいい。理由はわからないが、そう思っただけだ」
 言うだけ言って去りかけた哪吒の手を雷震子は地を蹴り慌てて引き留めた。ここまでのやりとりの真意を理解して、感じたのは確かに哪吒は彼がかつて言った意味での宝貝人間である、ということ。曰く、宝貝は心を持たない。だから自分は、宝貝ではなく宝貝人間だ、と。
 雷震子は不本意ながら改造人間だ。人間から、そうなった。人間に戻ることはないだろう。ならば哪吒は? 宝貝から生まれた宝貝人間。人間になることはきっとない。ただの宝貝、あるいは兵器としての扱いになることも、きっとないと今なら言える。哪吒が無意識に懸念しているのは、自身が破壊兵器になることだ。そうなったら確かに、止めるなら自分がいいと雷震子も思う。けれど。
……まぁな、互いに、いつかなんか違うもんになるかも、ってなぁ思うかもしれねぇがならねぇとは思うけどよ、もしなりかけたら、まず、なる前に俺様が引き留める! 本体の場所なんざ、知るとしたらオメェを守るため、ただそれだけでいい。違うか?」
 にかっと、目を細めれば哪吒はぽけっとして、しばし固まる。それから、先ほどよりも明確に、ふわり笑み返すのだった。彼が手をわずかたじろがせたので、雷震子は、代わりに自分から抱きしめる。哪吒からそうするよりもさまたげが少ないから。哪吒は自分がどうしたいのか理解しあぐねているから。だから。――否。雷震子がこうしたいからこうする。それが第一。
 一緒に居れば何か、確かに、違うなにかになるかもしれない。けれどそれが決して破滅にはつながらないと、どこか確信できた。そのおもはゆさにぴくりとうずくつばさの付け根が、雷震子を少しフクザツな心地にさせた。けれど、だから自分たちは止まり木を、見つけたのだと、思う。
 細けぇこたぁいいんだよ。そんな豪胆さと同時に抱く、繊細な不安。ぐつぐつ、ぐつぐつ雷震子が頼りなげにぼやくときにはいつも哪吒のほうがスパッと的確さでセーブしてくれる。振り子細工のようなゆらぎが、止まり木においては子守唄。預ける背中にどんなにオプションがあっても、きっと、自分たちはただ自分たちとしてそこに在り、そこに居て、そうして、きっと、成るはさながら羽根を寄せ合う猛禽に似て何でもないなにか。じゃれ合いの爪が引っかかろうと、つばさがぶつかろうと、構いやしない気持ちにさせるそこに、真実がある気がした。
 ごつり乾坤圏のぶつかる腕をたじろがせた哪吒が、それでもすがるように、腕を回してきた。
やはり、破壊は、されたら困る」
 そう言うので雷震子がくすぐったくなれば続けて哪吒は「俺には天祥との約束もある」ときっぱり。雷震子は、自身の手をぽんと打つ代わりにばしんと、哪吒の背部をはたいてやる。もう気持ちが安定して長い天祥ではあるが、哪吒がかつて天祥と交わした不死の約束は変わるものではない。それをひとときでも置きやってもらっては、困るのだ。例え話だとしても。
「おいおいそうじゃねぇかよ、いっときの不安だろうが破壊されてもいいとか言ってちゃいけねぇだろテメェは! そりゃ、大事にしねぇと困るってもんだろ。天祥も、お前自身もな。アイツは、俺にとっても、いいや、皆の兄弟みてえなモンだからなぁ」
「俺は?」
「おぅっオメェは……なんつうか、こうああもうっ、テメェの場合ワザとなのか天然なのか分かんねぇところが厄介だ!」
「俺は厄介なのか
「しょんぼりすんなよ! ちがうって、そのあーーーー、これ言わなきゃなんねぇのかぁ?!」
 雄叫びに呼応するようにぽつぽつと仲間が寄ってくる気配。うやむやになった。それでいいのか、といえば、きっと、そこに当てはまる言葉の一つは、いずれ交わさねばならぬのだろう。自分たちは何なのか。アイデンティティの拠り所をそれにするのはズルいか? そんなモンじゃねえの、生きるって。雷震子が雑に投げたところで、お後がよろしいようで。





終(お題:「秘密、教えてあげよっか?」https://shindanmaker.com/681121)



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