ぽふむん
2025-12-20 22:00:00
1257文字
Public ワンドロ
 

主よ人の世の喜びよ

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
氷柱if
「琥珀糖」「礼拝堂」

氷柱の方の童磨にオルガンを弾かせてみたくて。

指が長いので、こういう楽器の演奏が上手そうだなと。

タイトルは氷柱様が演奏している曲です(なのでBGMにしてもいいかもです)
実在の場所をモデルにしてます。

「寒っ」
しのぶは、体を縮こませその小さな手を擦り合わせた。
それにしても、面白い光景だ。
今しのぶは、切り立った小山の中腹にある神社にいる。
背後には拝殿。そして、眼前には一基の石鳥居。

その石鳥居が額縁のようになり、広がる光景はさながら宗教画のようだ。

冬の陽光に輝く海を背景に、長閑のどかな漁村が広がる。
そして、それを見守るように佇むゴシック調の礼拝堂。
この宗教画からは認めることが出来ないが、西方には仏教寺院があるという。

海は内海だからだろう。
穏やかに凪いでいる。

しのぶは、鳥居を抜け石階段を降る。
目的地は、礼拝堂だ。

この階段、冬だからいいようなもの。
夏であるならば、きっとマムシが出るだろう。

海風に凍えながらしのぶは歩いた。

(南国の漁村と言うから、暖かいとばかり思ってました。寒いじゃないですか)

山から吹きおろす風。海からの風が思いのほか寒く、もっと厚着をしてくるべきだったと後悔した。

こんな場所に呼びつけた男はここにいるはずだ。

重く重厚な礼拝堂のドアを開けると、そこは色とりどりのステンドグラスの窓に照らされていた。
ステンドグラスを透過し虹色に照らされた礼拝堂の中は、外観とはアンバランスに畳敷きだ。
そして、荘厳なオルガンの楽の音が鳴り響いていた。

その奏者は

大柄な見事な恵体。白橡色の艶やかな髪。
瞳は琥珀糖のような虹色だ。

ここにしのぶを呼び出した張本人氷柱だ。

(こうしていると、ここの司祭のようですね)
司祭服にも見える、ベージュのトンビコートを身に纏ったまとった氷柱はしのぶに気づき、演奏を止めると、クリンっとこちらを振り向いた。

「あれぇ?来たの?」
「ここに呼び出したのはどなた……くしゅん」
白々しいとばかりに叱り付けようとしたら、くしゃみが出た。

「あっ、外は寒かったかい?そんな薄着をしてくるからだよ」
青年は慌てて立ち上がると、自分の羽織っていたトンビコートをしのぶの肩にかけた。
このコート裏起毛だったのか。
少し重いが、とても暖かい。

「いやぁ、ごめんごめん。たった一週間の遠征のはずが、思いのほか寂しくてね。でもここのお魚はどう調理しても新鮮だから美味しいんだ。
美味しいなぁ。ご飯何杯でもいけるなぁ。でも一緒に食べる人がいないと美味しいのに、何か一味足りないな。しのぶちゃんにも食べさせたいなって思っていたら、つい呼び出してたよ」

今まで本当に寂しかったのだろう。
それとも 元々か。
この男は、本当によく口がまわる。

しのぶを抱きしめながら喋る喋る。

「煮付けが良いかい?それとも干物を焼いてもらうか……せっかく新鮮なんだ。お刺身が良い?
君、痩せたよ?もっと意識して食べなきゃ」

「あなたと同じです。私もその騒々しい調味料がないと、どうも調子が狂い食が進まなかったんです」
しのぶは口元を綻ばせた。

二人をステンドグラスを透過した陽光が照らしていた。
男女の琥珀糖が溶け合って笑った。