魔法のランプのフリンズを手伝う話

※ルナⅢ任務の内容を含みますのでご注意を

――おや?お待ちしておりましたよ。おかえりなさい、月神様。ようこそいらっしゃいました」
…………え?!」
 
 ナシャタウンで今夜開催される祈月の夜のお祭り。今回は特に盛況なようで、こんな楽しそうなイベントは参加するしかない!と意気込んだ。ほぼ全てのアトラクションを周り切ったぞ……と思ったところで、不思議なお店の噂を耳にした。
「そう、すぐそこの魔法の飴屋さんで貰ったの!」
「私もー!魔法ってすごいねぇ」
 ……ふむ?そんな気になるお店は行くしかないじゃないか、と思い向かってみたら、まさかの展開である。
 
「もしかして……ふ、ふり「しーっ、ですよ。ほら、『魔法』なんですからね」
「あっ!」
 思わず自分の口を両手で押さえる。たしかにこんなところで名前を呼んでしまうと、彼に迷惑がかかるかもしれない。とはいえ、
「いや、魔法ではなくない?」
「言われてみればそうかもしれませんね」
 ははっ、と笑っているらしいランプ――というかフリンズ。いや、言われてみればも何も、その事実しかないと思うのですが。
 
「面白いことしてるね」
「えぇ、こんなに人々が楽しそうに過ごす夜は少ないですし、せっかくなので出店側で参加してみました」
「驚きの参加方法だけど、ね」
「それこそ、『こんな夜』でないと出来ませんから」
 もちろん見えないけれど、彼が手を口元に当ててクスクス笑っている様子が目に浮かぶ。
 たしかに、モンドの魔女さん?が協賛してくれてるらしい今回のお祭りのように、魔法が溢れている空間であれば、このランプ姿の彼が参加していても違和感がないかもしれない。フリンズが楽しそうでなにより。
 
――せっかくなので、お手伝いしてくださいませんか?」
「え、いいの?私なんかで」
「もちろん。僕は、貴女に手伝っていただきたいのですよ」
……そこまで言われたら、断れないなぁ」
 えへへ、と仕方なく付き合う雰囲気を出しつつも、元から断る気なんて無かった。だって楽しそうだもの!
 
 魔法のランプさんが、お客さんに対して少しの問答の末に飴細工を作る。そして、その飴を私がお客さんに渡す。実に簡単な仕事なのだが、楽しそうなお客さん達の笑顔を見ているだけで、こちらも楽しい。
 
「そういえばさ、」
「はい、なんでしょう」
「私が来るまでは、どうやって飴細工を渡してたの?」
 だって、ランプだから手とか無いし。
「ランプから鎖を伸ばして渡してました」
「鎖を伸ばして?!」
「こう、加減が難しくて……最初のお客さんの時は少し苦労しましたねぇ」
 頑張ってるランプさんを想像しただけで面白い。ちょっとだけ見たかったな。
 
 
 ***
 
 
――さて、そろそろ店じまいにしましょうか」
「そうだね、飴の在庫も減ってきたよね」
 お祭りに参加してる人も少し減ってきたし、ちょうど良い頃合いかもしれない。
「それでは、最後のお客さんになってもらえますか?」
……私にも飴細工くれるの?」
「もちろんですよ――それでは。昼と夜は、どちらがお好きでしょうか?」
――夜」
「次に、ナシャタウンと夜明かしの墓は、どちらがお好きでしょうか?」
「ん?――じゃあ夜明かしの墓」
「ふふっ、では最後に……電灯式のランプと炎のランプ、どちらがお好きですか?」
「なによこの質問……炎のランプ!」
「ははっ!――期待通りの回答をありがとうございます。それでは、こちらの飴をどうぞ」
 差し出されたのはランプ型の飴細工……なんだけど、旅人さんに渡していたのとは、ちょっと違ってて――
 
「すごい……これは私?」
 そのランプの飴には、小さな女の子がくっついていた。髪型や服装などが、まるで私の姿をしているようだった。
「特別製ですよ?」
 ランプから伸びた鎖が、私の手に絡まるように飴細工を渡してくれた。
 
 
 ***
 
 
「ひとつ、お願いがあるのですが」
「なぁに?」
「このランプをお持ちいただいて、そこの路地付近まで運んでもらえますか?」
「ははぁ、なるほど?」
 そこでランプ姿から人の姿に戻るってことね。ひょいっとランプを持ち上げて、指定された路地付近まで歩く。周りに人が居ないことを簡単に確認してあげた。
「はぁい、どうぞ――ぅわっ!」
「お運び頂いて助かりました」
 フリンズはランプから出てきた途端に、私を引き寄せて力強く抱きしめた。びっくりしたぁ。そのまま動かなくなってしまったフリンズに、ちょっと苦しいぞという気持ちを込めて背中をトントンと叩くと、ようやく力を抜いて離してくれた。
「ふぅ……、少し充電できました」
「ははっ、電灯式のランプじゃないのに?」
 そう答えると、少し眉を下げて困った顔をした彼が、なんだか可愛く見えた。
 
「さて、どのアトラクションがオススメですか?貴女のことだから、お祭りのアトラクションは制覇してるんでしょう?」
……なんでわかるの見てた?」
「分かりますよ。貴女のことなら大抵のことは、ね」
 
 
 
 
『祭りの夜は、魔法のランプをお供にして』