三毛田
2025-12-18 21:15:29
1072文字
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10 こ. 心を預ける場所

10日目
君に心を預けたい

 彼の隣が心地よいと感じたのは、いつからだったか。
 いつの間にか、彼に心を預けたい。その場所にしたい。そう思うように。
 だけど、そんな自分勝手な思いに気づき、自己嫌悪。
「丹恒。疲れてるのか?」
 そんな声が聞こえたので、目を開ける。いつの間にか眠っていたようだ。
「そうかもしれないな」
「声かすれてるぞ。ほら、水」
「ありがとう」
 体を起こしてから渡された水で喉を潤し、声の主を見れば。
 にこにこと、邪気のない笑顔を浮かべており。
 思いつきで指先で頬を撫でれば、一瞬驚いたように目を丸くする。でも、すぐに気持ちよさそうに目を細めて。
「どうしたんだよ、丹恒。俺の顔になにかついていたのか?」
「お前が撫でて欲しそうに見えたからだ」
 我ながら、苦しい言い訳だ。だけど、彼は気を悪くした様子はなく。
「そっか。丹恒が好きだから、無意識にそう思っていたんだろうな」
 なんて、なんともないように。サラッと、当たり前のように。
「丹恒?」
 動揺して、手が止まった俺を穹は不思議そうに見てくる。
 違う。俺と同じはずがない。
 そんな都合のいいことなど、あってたまるか。
「丹恒。起きたんなら、読み聞かせしてくれよ。まだ、読めない文字が多いんだ」
「俺もそこまで読めるわけじゃないぞ」
「お前の声が好きなんだ」
……わかった」
「じゃあ、部屋で待ってるから!」
 スキップしながら資料室から出ていく。今日のスキップはなんか下手だな。
 そんなことを思いながら、身支度をして。ラウンジを通るとパムが軽食を差し出してくれたので、それを受け取ってから穹の部屋へ。
「丹恒! 飲み物とおやつもある!」
「飲み物はわかるが、何故おやつも?」
「俺がつまむ!」
「そうか」
 元気に答え、ニコニコとしながらソファーの隣を叩く。
「どれだ?」
「これ!」
 アーカイブから転送した書物を、タブレットに映して俺に差し出す。
「じゃあ、読むぞ」
「お願いします」
 俺が読み上げ始めると、穹は時折おやつをつまみつつ大人しく聴いていて。
「今日はここまでだ。続きは明日にしよう」
「何でだよ。いいところなのに」
「パムからメッセージだ。出来立てを食べたいのであれば、手伝ってくれと」
「よし。今日はここまでで! 丹恒、ありがとう」
「どういたしまして」
 タブレットを彼へ返し、立ち上がろうとすると肩を掴まれ。
「穹?」
「うん。やっぱり。俺、丹恒が好きだ」
「そう、か」
「もっと嬉しそうにしろよ」
「お前の好きと俺の好きは違う」
「絶対一緒だ」