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望月 鏡翠
2025-12-18 20:10:05
944文字
Public
日課
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#1942 ディルストーン居城にて7
#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作
メイドはトルガの態度に戸惑っていたが、マグを差し出しても不自然に表情を強張らせたりはしなかった。抱き寄せた体も同じような反応をしている。
促すと躊躇いながらも一口二口と飲んだ。喉が動き飲み込むのを確認したあと、マグを受け父ったあと体を離す。
「暖まった?」
少なくとも顔は赤くなっている。
「ええと、あの、ありがとうございます」
毒味役にさせられたなどと思いもよらないメイドは、的外れな御礼をいう。
体を離すと彼女はお盆を胸の前に抱きしめて、退室するタイミングを失ったようだった。
「昼間、とびきりの美人がいたんだけど、彼女とは晩餐のときに会えるのかな」
「美人?」
他の女性への興味が出たことで、彼女の表情は僅かに曇る。
眉根を寄せる表情の変化を隠すことすら忘れている愛らしい少女に微笑みかける。
「氷みたいな女性だよ。年は俺と同じくらいか少し下かな。ディルストーンの人だと思ったけど」
紹介は受けたから知っている。だが、知らない人への興味を装った方が、世間話としては自然だ。ガニメデは何のためにここに来て、今どこにいるのかなどと聞いたら、情報収集のために世間話を振っていることが露骨になってしまう。
「ああ、ガニメデ様ですね」
メイドは頷く。
「お食事にはいらっしゃらないと思います」
「そうなんだ」
それは意外な答えだった。同じ城にいて、わざわざ会談の場所にいて、その上で同席を避ける理由があるだろうか。むしろ顔合わせの場所としては適切なはずだ。
「もう、発たれるはずですから」
「随分忙しい人なんだね」
執政よりも忙しく動き回っているのではないだろうか。
「元々の旅程では、出発しているはずだったので
……
。お姿を見られたのは幸運でしたね」
「せっかく会えたんだから、俺のためにもう少しゆっくりしていけば良いのに。引き留めてみようかな」
メイドは口元を押さえて笑った。
「そういうわけにもいかないですよ。オーキの方とのお約束があるんです。もう間に合うか、みんな冷や冷やしてるんですから」
「へえ、そうなの。残念」
他愛のない世間話の最中、メイドの顔色が変わった様子はない。毒は入っていなかったようだ。
トルガはようやく緩くなったマグに口をつけた。
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