駅前の広場はクリスマスのイルミネーションに彩られていた。平日の遅い時間なので人通りは少なめだが、きらびやかな光が道行く人々を優しく照らしている。
「わあ、すっかりクリスマスだ!」
道を曲がってその光景を目にしたユウマが感嘆の声を上げ、隣にいたシュウも頷く。SKIPと宇宙科学局の合同調査で仕事が遅くなり、二人で軽く食事をして、電車に乗るシュウのために駅前まで来たところだった。
白い小さなライトと青い球状のライトが円錐形に飾られて、見上げるほどのツリーになっている。その前で二人は足を止めた。
「自転車だとあんまり駅前まで来ないので、イルミネーションがこんなになってるなんて気付いてませんでした。もうすぐクリスマスかぁ。早いなあ」
「仕事で慌ただしくしていると、家で飾り付けたりしないですしね」
「おばあちゃんと住んでた頃は毎年ツリーを出してたんですけど」
祖母の家で飾っていたツリーは、ユウマが子供の頃からずっと使っていたものだった。少し色褪せたオーナメントを祖母がいつも丁寧に飾り付けていた。ユウマが描いて切り抜いた星やサンタクロースの絵もいつまでも使われていて、学生の頃はやや面映ゆかったものだ。
「私も幼い頃は家族とクリスマスツリーを飾り付けていました。昔のツリーはもう少し黄色っぽい光だった気がするのですが、最近は鮮やかな色が増えましたね。この白とか青みたいに」
「確かに。おばあちゃん家のライトもオレンジ色だった
……あれ?」
言いながら首を捻ったユウマに、シュウが振り向く。
「どうかしましたか?」
「
……うーん、その
……おばあちゃん家のクリスマスツリーのライトは暖色だったと思うんですけど、僕の記憶の中のクリスマスツリーのイメージは青、というか水色なんですよね
……なんでだろう?」
腕を組んで思案しているユウマを見ていたシュウの視線が、ふと横に流れる。ユウマの背後の空間を少し見つめて、そして眼鏡の奥の瞳が柔らかく細められた。
「もしかしたらそれは、ユウマくんのもう一人の家族の光ではないですか?」
「え?
……ああ、そうか!」
シュウに言われて、幼い頃の記憶が湧き上がってきた。
祖母と一緒にクリスマスツリーを飾り付けるのは楽しかったけれど、ふいに一人になった瞬間には、そのツリーを見ていて胸の奥が締め付けられるときもあった。
畳に座って膝を抱えて、ツリーの橙色の灯りを見ながら胸の奥の痛みをじっと堪えていたとき。
ふわりと青っぽい光が溢れて、優しく包み込まれたような感じがした。
その明るいのに深みのある水色の光は温かくて。その光に身を委ねていると、胸の奥の重みが軽くなった気がしていた。
あの光が何だったのか、今ならわかる。
クリスマスに限らず、常にユウマに寄り添っていてくれた、優しい光。
「
……あの頃からずっと、一緒にいてくれたんだもんね」
上目遣いで後方を見て、ユウマは満足げに笑った。
その顔を白と青のイルミネーションが照らす。水色っぽいその光は、ユウマの大切な家族の光の色と似ていて。
馴染みある色合いの大きなツリーを見上げていると、ツリーの脚元の色がゆっくりと移り変わっているのに気が付いた。ライトはいつの間にか赤とピンクが混ざった色になっている。その赤い色合いは隣に立つ友人を包む光を思い起こさせる。
ユウマは少し首を傾げて、ぱっとその首を戻した。
「そうだ! せっかくだから写真撮りましょう!」
「写真ですか?」
「この青いライトと赤いライト、あの二人に似てませんか? だから、
みんなで」
含みを持たせた笑顔でユウマがそう言うと、シュウもすぐに意図を察していたずらっぽく笑い返す。
「なるほど、いい考えです」
二人はツリーを背に身を寄せて並ぶ。ユウマは取り出したスマホを腕いっぱいに伸ばして構えた。
「もうちょっと寄らないと、四人は入らないですね」
「アーク、もう少し屈める?」
「ギルアーク、ほら、こっち向いてください」
「じゃあ、撮りますよー」
カシャカシャっと小気味よくカメラが鳴る。
撮れた写真を覗き込んで、ユウマとシュウは頷く。
「綺麗に撮れましたね!」
「私にも送ってください」
青と赤に照らされたクリスマスツリーの前に立つ友人たち。
その背後に寄り添うように、そしていささか窮屈そうに画面に収まる赤銀と黒銀の姿に、ユウマとシュウは満面の笑顔を浮かべた。
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2024年クリスマスに金田さんが投稿されてた写真をモチーフにさせてもらいました。
こちらの投稿
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