おはなしを語ってくれるフリンズさんの話


――ねぇフリンズ、まだ起きてる?」
「起きていますよ。眠れないのですか?」
「そうみたい」
 
 時計の針が一番上を指した頃、ベッドに入って眠ろうとしているのだが、今日は中々寝付けない日のようだ。ランプに戻らず、添い寝をしてくれるらしいフリンズの腕の中はとても心地よいのだが、今夜は妙に落ち着かない。――そうだ。
 
「フリンズ、」
「はい、なんでしょう」
「何か物語を聞かせてよ」
 ナシャタウンで子供たちに物語を語る姿を見たことがあるのだ。フリンズがどんな話をするのか気になっていたので、ちょうど良い機会かもしれない。
「ふむ、そうですねぇ……いいですよ。どんな話がお好みですか?」
「うーん……眠れそうなやつでお願い」
「ははっ、それはそうでしょうね。――では、こんな話をひとつ」
 
 
 
 『昔々あるところに、妖精のフェイが住んでいました』
 
「フェイの話?珍しいね」
「こらこら、眠るための物語でしょう?ほら、目を閉じて」
「そうでした」
 耳元の穏やかな声を聞きながら、素直に目を閉じることにする。
 
 『その妖精は、他のたくさんの妖精たちと暮らしていましたが、だんだん旅に出たい思うようになりました』
 『故郷の雪国を離れて、一人で街を出ることにしました』
 
 人生に疲れた妖精さんが一人旅をする話?聞いたことない物語かも。
 私に語りかけながら、フリンズが私の髪の毛を掬ったり指を通したり、シーツに広げたりして遊んでいる。少しくすぐったくて、気持ちがいい。
 
 『妖精は雪道を一人で歩き、時には木陰で休みながら歩きました』
 『旅の目的である探していた場所が見つかり、妖精は長い眠りに付くことにしました』
 
 それはどんな場所だったのだろうか。さまざまな風景を想像してみた。海、草原、森、大きなお屋敷とか?と考えつつも、だんだんウトウトし始めた頭はゆっくりとしか動かない。想像した風景達は、浮かんでは消えていった。
 
 『それから随分と時が過ぎた頃、妖精はたくさんの人間に呼ばれ、長い眠りからゆっくりと起きることにしました』
 『妖精は人間と共に暮らすことを望みました』
 
 妖精さんは素敵な居場所を見つけられたみたい、だけど……もう眠気が……限界になってきた。せっかくの物語が頭に入らない……
 
 『そして妖精は、お気に入りの夜明かしの墓で、大好きなお姫様と過ごしました』
 
 ……え?
 フリンズは、いまなんと言ったの?そうなると、妖精とは誰のことなの?――そう聞き返そうとしたのだが、私の口は言葉を紡ぐことはできずに、そのまま眠りの世界へと落ちてしまった。
 
 『おしまい』
 
 
 
 
……寝てしまいましたか。おやすみなさい、妖精に見染められたお姫様。良い夢を」
 優しい大きな手が、私の頭をゆっくりと撫でた。
 
 
 
『これは、とある妖精さんの物語』