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MN*B
2025-12-17 22:15:41
2863文字
Public
宗おに:二次創作
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混み込みコミュニケーション 【宗おに】
お題:連絡先交換 時間:1時間35分
普通にシリアス気味
待ち合わせしていたカフェに着いた時、すでに相手は来ていた。間違えていないかと恐る恐る近づき、後ろから回り込む。
……
良かった。おにいさんだ。
こちらの影がかかり、おにいさんがカップに落としていた目線をパッと上げる。こちらを見て表情をあからさまに明るくしたので、思わず口元が緩んだ。
「おにいさん、久しぶり。
……
元気そうだね」
「お久しぶりです。はい、おかげさまで」
そんな挨拶を交わしながら、おにいさんの向かい側の席に座った。飲み物を注文して、おにいさんと近況を含めた世間話に興じる。
直接会うのは久しぶりで、その間も連絡は取り合っていたけれど、彼の事が気にかかっていたのは確かだった。だって、良い悪いを別にすれば、
教団
あそこ
から抜けさせたのは自分みたいなものだったから。最後に決断したのがおにいさん本人であっても、切っ掛けになったのは自分だ。
だから、おにいさんが元の居場所に戻れて、あんな追い詰められた状態にならずに日々を過ごせるようになったのなら、それが一番で。自分にとっても喜ばしいことだった。
「携帯電話も契約し直しました。ほら」
「ああ、今まで不便だったもんね」
「はい。これでバイトもやりやすくなります」
おにいさんは苦笑気味に「やっぱり携帯電話を持ってないってなると、周りからの目もちょっと
……
アレだったんで」と話した。
現代においてスマホを持っていないというのは致命的で、死活問題というか信用問題ともいえる。バイトとなると仕事先からの連絡もあるだろうし、不便極まりなかっただろう。
ちなみに、今まで自分達がどうやってやり取りをしていたかといえば、おにいさんからは公衆電話からの連絡であったりと、少し古風な方法でやり取りを行っていたわけだ。故に、こちらからおにいさんに連絡するのはハードルが高く、主におにいさんからこちらへの一方通行状態だった。
おにいさんに番号を教えるまでもなく、当たり前のように、こちらの連絡先は把握されていたし。
手元に来たコーヒーに口をつけて、喉を湿らせる。
あの一件以来、これで一区切りがついたって感じだ。そう思って、ちょっとだけ肩から力が抜ける。
おにいさんも所謂、普通の生活に戻るだろうし。元の居場所に戻ったと言った方が正しいんだろうけど。こうして会うことになったのも、それの報告ってことだ。
……
そう、区切りがついたんだ。
「それで、あの」
「どうかした?」
カップをソーサーに戻しながら、続きを促す。
「連絡先、交換してもらってもいいですか?」
「え」
カチャンと、ひと際大きな音を立ててしまう。
それを誤魔化すために、いつもなら入れるはずもない砂糖に手を伸ばして、コーヒーに入れた。無駄にグルグルとスプーンでかき混ぜながら、さりげなくおにいさんに尋ねる。
「こっちの番号、知ってるよね?」
「はい。暗記してます」
「そうだろうけど
……
それ、他の人にはあんま言わないほうがいいよ」
「そうですか? それに覚えてるのも家族の物と貴方のくらいですけど」
……
家族と同列に並べられても反応に困る。
思わず、ぶっきらぼうに言葉を返す。
「それで、なんでまた。わざわざ」
「なんでって
……
」
あ。やってしまった。
おにいさんの反応とその表情を見て、自分の悪いクセが出たことを自覚する。
突き放すみたいな言い方だった。そうじゃない、違う。
……
口が乾く。飲み物を飲んでいるのに、嫌に滑りが悪くなって。でも、また口に含む気も起きなくなる。
「
……
やっぱり、迷惑でしたか」
「は?」
「今日も、今までも、貴方に連絡して、話を聞いてもらって
……
つい頼っちゃって。すみません」
だからなんなんだろう。なんでおにいさんが謝る? 謝るべきなのはこっちで、悪いのはこっちの言い方だったはずだ。
なのに、おにいさんは悲し気で苦しそうな顔で、絞り出すみたいに言葉を発する。
「ご迷惑をおかけしました。もう連絡もしません。今までありがとうございました」
なんでそうなる? なんでそうなる
――
!?
訳が分からない。でも、おにいさんは立ち上がって、こちらを置いてけぼりにしようとする。
「待って待って待って、待てって
……
!」
立ち去ろうとするおにいさんの腕を、咄嗟に縋りつくような形で引き留めた。
「誰も迷惑だなんて思ってない!!」
自分の声が店内に響く。
なりふり構ってられなかった。だって、こっちからじゃ連絡も取れないんだ。
「もう連絡しないってなんで!?」
「ちょっ!? 落ち着いてください!」
「言い方キツかったのはごめん! そんなつもりじゃなくて、その
……
!!」
「わ、分かりましたから
……
!」
……
そんなやり取りの果てに、二人して元の位置に戻った。
しばらく黙っている間に、じわっと感覚が戻ってくる。
……
馬鹿か、自分は。恥ずかしすぎる。
ちらりとおにいさんのほうを窺い見れば、困ったような、なんともいえない表情で、こっちを向いていた。
どちらから話し出せばいいものかといえば、それはもう自分からしかない。湯気も出なくなったカップを見下ろしながら、強張った口を動かす。
「
……
おにいさんからの連絡、迷惑だなんて、思ったこと、一回もない」
「
……
そうなんですね」
「むしろ、おにいさんこそ
……
もういいのかなって」
反応が気になって、またおにいさんの方を窺うと、彼は理解が追い付いてなさそうな顔をしていた。だから、頑張って言葉を重ねる。
「もう大丈夫だから気にしないで、ってことで、最後に会うことになったのかと」
「は!? なんっ、で、そうなるんですか!?」
「
……
会う理由がないから?」
「ありますよ!?」
おにいさんはハッとして、周囲に目を配ってから、またこちらを向いた。そして少し声を潜めて話し出す。
「あ
……
いえ、厳密に言えば、なくてもあるというか
……
なくてもというか
……
」
「それは
……
うん
……
」
二人して俯いて、もごもごと曖昧な返事をする。
自分達の関係性をなんて形容すればいいのか分からない。きっとそれはおにいさんも同じだった。
「友達、ってことで
……
いいんじゃない、の
……
」
「
……
」
無言。
……
またやってしまったのかと自己嫌悪に走りそうになった、その時、空気が震える。
「いいんですか」
震えた声だった。
おにいさんは、何かを堪えながら、それでも堪えきれないって感じで、唇を動かす。
「いいんですかね、それで。だって、俺、貴方に」
何かが溢れている。そんな声で、表情で、目をしていた。
それをなんと呼べばいいのか分からないけど、悪いものじゃないはずだ。
「いいと思う。
……
おにいさんが、嫌じゃなければ」
予防線を張って、そんな返事をした。でも、そこから、いつもよりもう少しだけ、先を目指す。
「私は嫌じゃないよ」
そうしたいから差し出すんだと、ポケットから
携帯電話
コミュニケーションツール
を取り出した。
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