三毛田
2025-12-17 22:04:27
1059文字
Public アドベント25
 

17. すれ違う二人

17日目
すれ違っていた俺たち

 最後に丹恒に触れたのはいつだっけ。
 思い出せないくらい、彼と顔を合わせていない。
 一度作業に没頭したら、何時間でも同じことを続けられる丹恒。
 こちらから会いに行かないと、顔を見れないことは前からわかっているけれど。
「たまには、丹恒から誘ってほしいんですよね〜」
「素直にそれを告げればいいのでは?」
「でもさあ、恥ずかしいだろ?」
「それですれ違って、拗れていくものよ。世の中の恋人たちっていうものは」
「そういうものなんですか?」
「うふふ。物語では、そここらハッピーエンドへ向かうことが出来るわ。でも、現実はそうとは限らないもの。きちんと言葉にして告げなければ、伝わらないものよ」
「はあ」
 サンデーは、あまり理解できていないような曖昧な返事をブラックスワンへと向け。
 俺も同じ反応になったけれど、ぐっと我慢して。
「確かに、丹恒さんはこちらから会いに行かないとなかなか顔を合わせませんね」
「一つのものに集中できるのは、いいことよ。でも、心を伴っているのだから、好きな人を蔑ろにするのはよくないわ」「だよなあ? 二人からも言ってやってよ」
 話を振ったら、露骨に視線をそらされた。
 お前らさあ。
「それはそれ、これはこれよ。恋人同士の事情に、他人を巻き込むのはよくないわ」
 そう言いながら、ブラックスワンはカードを広げて俺へ向ける。
 引けってことだろう。
 一枚引いて、表に返す。
「恋人の正位置。大丈夫。近い内に、すべて解決するわ。でも、行動を起こしたほうが、早く解決するかも」
 俺が引いたカードを唇に当て、それからウインク。
 カードなんかなくとも、全て見透かされている気がしてならない。
 これだから、ミーム存在は。
「サンデーも占ってもらえば?」
「では、今日のおやつはプリンタルトであるかどうかを」
「残念。今日は、ガトーショコラよ。さっき姫子さんが車掌さんに訊ねていたもの」
 占う前に答えを教えられ、サンデーは分かりやすく落ち込む。ブラックスワンはふふふ。と笑い、カードをしまう。
「穹さん。丹恒さんに会いたいのなら水のある所をお勧めするわ」
 俺がラウンジの方へ行こうとすると、彼女は上を指差して。俺とサンデーの視線が、部屋へと向く。
「教えてよかったのですか」
「教えては駄目とは言われてないもの。徒労に終わるよりは、いいと思うの」
 そんな声を聞きながら、階段を駆けあがる。
 待ってろ、丹恒!
「丹恒!」
 浴室へ飛び込むと、驚いたようにバシャっと水面を叩く音。