フリンズさんを訪ねたらイルーガくんと出会う話

※イルーガ実装前の作成のため、口調などの捏造にご注意を

「んー?あれは、もしかして……?」
 
 先日フリンズから美味しいお酒を手に入れたと聞き、今日の午後に夜明かしの墓を訪ねることになった。約束の時間よりは少し早く到着したけれど、フリンズならいつも通り地下にいるだろうから、と寄り道などで時間を潰すこともなく向かうことにした。
 クリムゾン・ソルトマーシュを抜けて、夜明かしの墓の浜辺から灯台の方を見上げたところ、フリンズと誰かが話している姿が見えた。しまった先約があったのか、これなら時間通りに着けばよかったかな……と思い引き返すことにした、のだが。
 
――あれ?こんにちはー!」
 
 とっても元気な声が聞こえた。
 向こうからも私の姿が見えたらしく再び灯台の方へ顔を向けると、こちらに向かってブンブンと大袈裟に手も振ってくれている。隣のフリンズも手招きしているのが見える。私は遠くまでよく見える目が自慢なのだが、あちらにも同等の視力がありそうだ。
 さて、声をかけられて聞こえないふりをするほど性格が捻くれてる訳ではないので、大人しく灯台下へ向かうことにした。
 
「こんにちは、初めまして!」
「はい、こんにちは。こちらこそ初めまして」
 若さが眩しい――と言っても然程離れてないかもしれないのだが、なんというか笑顔が似合う青年だった。ライトキーパーの制服を着て、ランプを片手に持ち、大きな荷を背負っているのが気になるところである。
「僕からご紹介しましょう。こちらの青年はイルーガです。ライトキーパーの同僚でして、たまにこの夜明かしの墓を訪れて、僕の相手などをしてくれています」
「君に尋ねてくるような方が居たなんて知りませんでしたよ。――今日はフリンズさんに書類と物資を届けに来ていました。よろしくお願いしますね」
 そう言ってイルーガ君は右手を差し出してくれた。私も手を差し出して握手に応じながら「よろしくね」と答える。
 
「そしてこちらが、冒険者をされている僕の友人で恋人で妻となる予定の方です」
「「――は?」」
 
 イルーガ君と思いっきり反応と声が被ってしまった。握手したままガバッと音が出そうな勢いで、二人同時にフリンズへ顔を向ける。
「なん、え、そ……そうなのフリンズ?」
「なんだって?!というか彼女のこの反応からすると、君だけの思い込みなのでは?!」
「おやおや、そんなことはありませんよ」
 フリンズはいつもの微笑みを浮かべながら私達の方へ一歩踏み込んで、握り合っていたままの私とイルーガ君の手を取り、とても自然な動きでパッと離された。私は初耳の情報が飲み込めず思考が停止してしまった。本当にちょっと待ってほしい。
 しかしこの状況で一番に動いたのはイルーガ君だった。
 
――はっ!突然ですが急用を思い出したので、お邪魔な僕はこれで帰りますねっ!」
「え、待ってよイルーガ君!この状況に置いていかないで!!」
「ははっ、二人とも何をそんなに慌てているのでしょうか」
 いきなり荷物をまとめ出したイルーガ君。ほんとに待って?!いや、荷物まとめるの無茶苦茶早いな流石ライトキーパーだな(?)と謎の感想を持ちつつ、自分の頭がまだ大分混乱していることを自覚した。ふと横に意識を向けると、笑みを携えたままのフリンズがほぼゼロ距離で私の隣に立っていた。こんな物理的な距離の詰め方も初めてなんですが?!
 
「それでは、お先に失礼します!」
 イルーガ君は全然待ってくれないし、フリンズはピタッと隣にいるし、どんな状況なのこれ
 早歩きで出発するイルーガ君に「ま、また会おうねぇ……」とだけ声をかけて見送ることにした。だが、灯台からの坂の中腹ほどまで進んだイルーガ君が、何故か引き返してきた。……おや?忘れ物かな。
 まっすぐにフリンズの元に戻って、ポソっと何か耳打ちするイルーガ君。「――ふふっ」と小さく笑うフリンズ。え、ほんとになに?
 残した用事は終わったようで、今度は振り返らずに進むイルーガ君が小さくなるまで見送った。……そういえば、私は名乗ってすら居ないな。また今度会う機会があれば、その時にしっかり挨拶することにしよう。
 
「ねぇフリンズ」
「はい、なんでしょうか」
「言いたいことは沢山あるんだけど、ひとまず置いておくね。先に一つだけいいかな?」
「どうぞ」
「最後、イルーガ君と何の話してたの?」
 今一番気になっていることを聞くことにした。何故か分からないが早めに聞いた方が良い予感がしたので、ね。
「あぁその件ですか。イルーガからは『犬や猫がいらないと言われた理由がわかりました』、と耳打ちされましたよ」
――おーいイルくん?!戻ってもらっていいかな??ちょっと私とお話しましょうか?!」
 残念ながらもう米粒ぐらいにしか見えないイルーガ君に、私の声は届かなかった。
 
 
 
『出会いと告白は、いつだって突然に。』