フリンズさんに見つけてもらう話

テーマBGM:ワールドイズマイン@supercell様

「良い天気になってよかったですね」
「そうだね!」
 
 今日はナシャタウンでたまに開催される蚤の市。裏の取引とは別で健全(?)なんだって。フリンズは結構前から楽しみにしていたらしく、今も隣でソワソワしていて少し可愛い。私は私で、最近二人とも忙しくてお出かけができなかった分、それなりに気合い入れて可愛い格好をしてみたので満足している。
 
「ふふっ、今日のお姿も可愛らしいですね。こちらの服、僕は初めて見た気がします」
「さすが、その通りよフリンズ。先日衝動買いしたばかりの服だからね!」
 ふふん、と腰に手を当てて態とらしく見せびらかしてみた……のだが、やってみて分かったけど結構恥ずかしいなこれ。もうやらない……と心に決めた。隣のフリンズはというと、全く動じずに私を見て微笑んでいる。
……せめて笑ってくれたら救われたんだけど
「僕がですか?お可愛らしいと見惚れてましたのに」
「やめて恥ずかしさが倍増したよ……
 せめて誰かツッコミ役を下さい!と真剣に願ったが、そんな人物は現れなかった。
 
「それはともかく、少し回ってみようよ。フリンズは何か目当てがあるの?」
「えぇ。特に決めてはいないのですが、何か心惹かれるものがあると嬉しいですね」
「うんうん。私は食器とか小物を見てみたいな」
「そうでしたか。良いものが見つかるといいですね」
 こういった市場は歩くだけで楽しい。小さな古本屋さん、手作りのアクセサリー店、臨時のコーヒーショップなんてお店もあった。
「少し人が増えてきました。僕から離れないでくださいね」
「うん、分かった」
 
 ――という会話は数分前にしたはずなのだが、気がついたらフリンズは居なかった。
「あれ?」
 ちょーっとアクセサリー屋さんを見つけて寄り道してしまっただけなんだけど……いや『だけ』ではないか。せめて彼に声をかけてから立ち止まるべきだったと、少し反省。
 さてさてどうしたものかと思うところだが、身長の低い私は人混みに紛れやすいので、少し端に寄って待つことにする。こういう時は両方動くと逆に見つかりにくいと聞くからね。
 壁に寄りかかって、ふぅと溜息を吐く。目の前を流れていく人の波を眺めながら、あの長身の彼が居ないかを目で追っていく。んー、居ないか。
 ふと、足元を見ると猫さんが居た。しゃがんで顔を近づけても逃げない、人間慣れしてる子のようだ。
……君も一人なのかい?」
 可愛い猫さんを眺めて過ごしていると、足元の影が大きくなった。後ろから近づいてきた大きな何かが、私の体に当たっていた日差しを全て遮ったようだ。
 
――っ、こちらでしたか
 おや?と顔を上げると、息を少し切らしている様子の、見慣れた長身の彼が居た。相手をしてくれた猫さんにお別れをしてから、彼の隣に立つ。
「やぁフリンズ。気分はどう?」
「貴女は全く……はぁ、なんでもないです」
 彼の何か言いたげな表情は無視することにして、ぎゅっと抱きついた。これでも感謝してるんですよ?
「えへへ、いつも見つけてくれてありがとう」
――はい。貴女を見つけるのは僕だけの役目ですからね」
 そう言って、フリンズも私を抱きしめて返してくれる。うん、やっぱりここがいちばん安心安全な場所だね。
 
「それはそうと、私の右手がお留守なのよ。なんとかしてくれる?」
「これはこれは失礼を。仰せのままに」
 そっと離れてから私の手を取り、彼の指が私の指の間に絡まってくる。これなら逸れてしまう心配は減るはずだ。
 
「さっきね、ガラスアクセサリーのお店を見つけたの。付き合ってくれるでしょう?」
「勿論です。僕も気になる骨董品を扱うお店を見つけましたので、ご一緒してくれますか?」
「えぇ、もちろん。今度こそ順番に、一緒に回ろうね」
 ぎゅっと強く手を握ると、同じ強さで握り返してくれる大きな手。それだけでとても安心感を覚えた。
 
 
 
『世界でいちばんの、迷子のお姫様』