Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
タロ文庫の作品置き場
2025-12-17 13:55:54
7439文字
Public
作品
アグアマリーニャは太陽と共に
2022-05-01
WinTeamWeek2022 Day1(2022/05/01)『RPG AU』
人間×人外のWTです。ファンタジー難しいです。
ティームの姿は特に決めていないので、人型でも獣型でもお好きに想像してください。
水より生まれし有翼の獅子
水の蛮神を滅し豊衣飽食を与えん
街は永遠に止むことのない霧雨でけぶっている。
縦横無尽に運河が張り巡らされ、かつて近海の海の名をもって〝女王〟と称されるほど美しかった海の上に建てられしその街に住人は最早おらず、神の住処となっていた。
足を踏み入れた者は止まずの雨で一呼吸ごとに肺を冷やし、肌を濡らし、体温と体力を徐々に奪われ、やがては力尽きていく。神を祀る為でなく狩る為に訪れし者たちだ。世界は今や水没の危機に瀕し、誰もがその神の消滅を望んでいる。勇ましい者たちは自らの高い志と人々の願いを胸に闘わんとこの最終決戦の地へと降り立つが、ついには神がいる神殿の広場にすら辿り着いた者はいなかった。
今までは。
たった一人、彼以外には。
靴底が濡れた石畳を踏み締めてキュッと高い音をさせた。
広場の中心部に立つと甲冑の面具の隙間からチラリと藍玉色の神殿を見上げる。太陽の下で見ればさぞや綺麗なことだろう。墨色の目を細めて奥歯を噛み締めた時、見つめていた藍柱石からくぐもった声が聞こえた。
「来たか、勇者」
聞き馴染みのある言葉にくっと口角が上がり、面具に阻まれないよう大声で返した。
「おう、待たせて悪かったな。来てやったぞ」
リヴァイアサン。
高く掠れた声がその名を呼ぶと、止まずの雨が動きを止めた。無数の水の玉が宙に浮き、神殿の上へと集められていく。石畳が震えるほどの地鳴りが響き、街を困う海が天高く引き揚げられた。
円形の海の壁。まるで水中のコロッセオである。
街の外周の建造物を飲み込み巻き上げながら轟々とうねる海を背に、水神リヴァイアサンが姿を現した。
ここに来る前、一番近い港町で見た人々の描いた恐ろしい想像図との違いに浮かべた笑みが深くなる。
「久しぶりだな」
あちらが姿を見せたならと、頭を覆っていた兜を外し窮屈に収まっていた髪をばらすように首を振った。さらりと降りた金髪の前髪を後ろに持っていき高い位置で一括りに結ぶ。勝ち気な眉とアーモンド型のくっきりとした目があらわれ、形の良い唇が綺麗な弧を描いている。
リヴァイアサンは視線が合うとふよりと眉を上げた勇者に目を眇めた。
「あのまま遠くで暮らしていれば良かったのに」
「そうはいくかよ」
「そう、だよね」
リヴァイアサンと勇者は以前相まみえたことがあった。ここより程近い海の上。体力もすばやさも太刀打ちできずにリヴァイアサンの一撃で遠い別の島へと飛ばされた。その時組んでいたパーティーもバラバラになり、また一からこの街を目指す羽目になった。
神はなすすべもなく悔しそうに見上げてくる勇者の目に、再び対峙する予感があった。もし自分を倒しに来るなら、この者だろうと。
「あの時はレベルが足りなかった。エンカウントもいいとこだぞ。でもそのおかげでお前と会えて、俺の中でここに来る意味が出来たんだけどな」
リヴァイアサンは自分を倒す為に舞い戻ってきた男をじっと見つめた。海壁からの飛沫で全身を濡らすも、瞬き一つせず勇者の様相を観察する。
確かにあの時よりも格段に強くなっているようだ。身体に纏う装備や宝具も神との対峙にふさわしいものになっていた。
あらゆる水攻撃を防ぐ最大の防御力を誇るポセイドンの鎧とセイレーンの歌声を織ったマント、腰に下げているケラノウスの破片を鍛錬して出来た雷の剣は水属性への効果は絶大である。
止まずの雨の影響を一切受けずにここまで辿り着いたのは最強の装備を的確に装着しているからか。これらの聖力に耐えうるレベルに達し、かすり傷ひとつ付かずに対峙する男にリヴァイアサンはぐるりと喉を鳴らした。
「なんで一人で来たの」
神との最終対決への準備をここまで整えているというのに勇者以外の生き物の気配が一つもない。
人のみならず召喚獣もである。
勇者は手に持っていた兜を足下に置いた。
「あぁ港町で別れたよ。あいつらの問題は全て解決したし、ここから先は俺個人の問題だから」
勇者はそのまま手甲を外し、動かしやすくなった手で次々と装備を脱いでいった。リヴァイアサンの群青色の目が微かに見開かれる。
甲冑とマントを脱いだ彼は黒いスラックスにただの白いシャツという軽装になった。白いスニーカーが石畳の水溜まりをパシャリと跳ねあげた。
最後に剣を地面に置くとスラックスのポケットの中から腕時計を取り出し左手首に巻き付けた。
見たことも聞いたこともない宝具に、しかしリヴァイアサンは勇者の長い指にまだ機動力を最大まで上げるアポイタカラの指輪が嵌まっているのを見て、見開いた目を元よりもぐっと力を入れて睨みつけた。
「装備を外すなんて、どういうつもりだ」
「こっちが元々の俺の戦闘服なんだよ」
あの指輪はその場にいる誰よりも早く動くことが出来る宝具である。また身につけた者が動くまでは場にいる者は何人たりとも動くことは出来ない。神とて同じだ。リヴァイアサンに先制されることなく雷属性最強の剣で一差ししてくると思いきや勇者は攻撃を放棄した。
読めない戦況への苛立ちに海の壁が大きく波打ち、広場のすぐ脇の教会を打ち砕く。物理攻撃を全て無効にするピアスが光り、瓦礫や土煙は勇者の際で霧散した。
「装備は全部お前のところに無傷で辿り着くまでの御守りみたいなもんだ。もう俺には必要ない。大変だったんだぞ。金で買えるものはジョブこなして報酬貰ってカジノ行って増やして、買えないものはクエスト進めなきゃいけなかったんだからな。勝手にレベルは上がったけど、ここに来るのが遅れちまった」
勇者はのんびりと世話話でもするかのように水神へ語りながら、そのピアスをも左右七つ全て外していった。代わりにただの銀で出来たインダストリアルとリングピアスを慣れた手付きで装着し、愛おしく撫でた。
勇者は今や丸腰だ。基礎値がいくら高くとも機動力を除いて装備を外し全てをノーマルに戻すなど、無防備にも程がある。
早く動けよ。こちらのターンになったら噛みちぎってやる。
リヴァイアサンは低い唸り声を発しながら奥歯を噛み締めて、身の回りに水の渦を巻き始めた。
「なぁ、リヴァイアサン。ここ以外は割と平和な世界になったぞ。装備整えてたら世界中のジョブをやり尽くしたみたいでさ。干ばつも水害も獣害も人間同士の小競り合いも、経済難も
…
なんとかしてきた。この世界はもう終わることなんてないんだよ」
「何を言っている」
「でも俺みたいな素人が教えてもちゃんと自分達で何とかし始めたから能力は高いみたいだな。思い込みが激しいのが難ありだけど」
「さっきから何なんだよ! 勇者!」
リヴァイアサンは目と口をカッと開き、咆哮を上げた。海の壁は街のあちこちで竜巻を起こし建物を巻き上げ、宙で粉々に砕く。天高く登った海水は大量の雨となり広場へ落ちてきた。
丸腰の勇者は瞬く間に濡れそぼる。ただし指輪のおかげでリヴァイアサンの攻撃とはカウントされずダメージは受けていない。白いシャツが透けて、身体の墨が浮き出る。
背中いっぱいに広がる黒い翼、濡れて光る獅子色の髪。
やはりこの者が世界に伝承されし勇者だったか。人々を平和へ導き、そして。
そして、蛮神リヴァイアサンを屠る。
やるならさっさとやればいい。
顎を伝う水気を手の甲で拭い、勇者はいきり立つ神を見上げた。唇についた海水を舌先でペロリと舐め、状況を無視して静かに口を開く。
「ウィンだ。勇者じゃない」
告げられた名前に水神はまた海をうねらす。
胸がざわつく。怒りと焦りが群青色の目を大きく揺らがせた。
「敵に真名を告げるなんて気でも狂ったの?」
「チューレンだけどな。本名はパウィンだ。あとお前を敵だと思ったことはない」
「ふざけんな。この世界で神に名を知られた人間がどうなるか、アンタだって知ってるだろ」
「あぁ、教えてもらったな。でも俺はこの世界の人間じゃないから関係ない」
「な、」
「飛ばされてきたんだよ、お前と同じようにな」
小首を傾げて見上げてくるウィンの言葉に、
ヴァイアサンは慄いた。震える唇はひゅぅと息を吸い込み、体内へ潮気を送り込んだ。
気づいた時にはこの海水の中にいた。海上に出たくて必死に手足を動かせば、海は荒れ狂い沢山の船と港町を呑み込んだ。人々は強い畏怖を自分に向けて、この街へと追い込んだ。あまたの呪いの言葉が我が身を侵食し、真名を封じられ、やがては水神リヴァイアサンと名付けられていた。
元いた場所は思い出せない。ただ泳ぐことが好きだった。それだけは忘れないように必死だった。
もう戻れないのなら消してほしいと、待ち続けた勇者は動きを止めた神になお語りかける。
「俺はプールで溺れかけていた友達を助けようとしたら引っ張られたんだ。水から顔を出せば、そこはお告げの村の泉で、俺の髪とタトゥーが伝承と一致していた。それだけで俺は勇者にさせられた。こっちの人間は水の中を泳ぐって概念が無いんだってさ。だから敬うし、怖がる。お前の話を世界のあちこちで聞いてくうちに、お前も俺と同じで違うところから引っ張り込まれただけなんじゃないかって気がしてきたんだ。だってお前、初めて現れた時以外、誰も傷つけてないだろ」
それも事故だし。
ウィンは水神の目の奥を覗き込もうと見つめ、静かに言葉を続ける。
「ここの人間は思い込みが激しいし、その思いが強すぎると異端者を変えちまうみたいだな。俺は勇者になったしお前はそんな力を持たされた。でも本当の俺は勇者じゃないし、お前だって違うだろ」
海壁は相変わらず高くそびえ轟々と唸っているが、リヴァイアサンの周りにはウィンの口調に宥められるように静かに凪いでいた。群青色の瞳は海水ではない水気に満ちて、光を乱反射している。
「
…
違う」
ウィンはその言葉を待っていた。アーモンド型の目を僅かに広げる。
「おれは神じゃない」
低い声が震えてウィンの上に落ちてきた。見上げる先のリヴァイアサンはあの日と同じ迷子の子供の顔をしていた。
あの時、海の真ん中で突然姿を表した水神と目があった。
一瞬合わさった瞳の寂寥感が忘れられずにいた。
遥か遠くに吹き飛ばされたのに無傷の身体は、自分に関わるなと言われたようでウィンは恐怖心よりも庇護欲に駆られた。世界を救うよりあいつを助けたい。勇者の自分ではなく本当の自分がこの世界で存在意義を見出した。
「リヴァイアサン」
ウィンは制服のスラックスのポケットから小さな宝石を取り出した。何色とも表すことができない透明な石の表面をつるりと親指でひと撫でして、目の高さに掲げる。
リヴァイアサンの全身に衝撃が走った。
「それは
…
」
所有を認めた者の願いを叶えてくれる、ブラフマーの涙石である。始まりと終わりを創る神の名の下に叶えられる願いはどんなものでもだ。世界の均衡を壊しかねない、この世界の最強の至宝。
ウィンはまるでビー玉のように光に透かして、石越しにリヴァイアサンを見上げている。
この戦闘での先制はウィン。
リヴァイアサンは呼吸も忘れて石とウィンを見つめる。
「お前をこの世界から消す。俺の世界に一緒に来いよ。自由に泳がせてやるし、お前の名前を呼んでやる」
ウィンはいつのまにかこの世界の言葉ではない言語を話していたが不思議とリヴァイアサンには理解が出来た。心臓が胸を突き破るかのように強く打つ。自分の生を強く感じる。
「なぁ、本当の名前教えろよ」
忘れ去っていた名前が蘇り喉元を迫り上がる。
伝えてもいいのだろうか。消されることを望み今日まで生きてきたが、この男は自分を連れて行くと言う。
逡巡は一瞬で、ウィンの真剣な眼差しに本能が口をついて出た。
「ティラユ」
「いい名前だな。俺の国では長寿って意味だ」
素直な水神にうっとりと笑ったウィンは指で摘んでいた石を掌へ転がし、上向きにして腕を前へと伸ばした。指がちょいちょいと動き、神を手招く。
「ティラユ、一緒に行こう。何があっても俺がお前のそばにいる」
ウィンの掌の宝石は解放の時を察知して内側に黄金の光を湧き上がらせ始めた。
水神は遥か昔そう呼ばれていた頃の記憶を辿り、群青色の瞳から大粒の涙をこぼした。初めて呼ばれたはずなのに深い声はあの頃の自分を慈しみ大切にしてくれた者達に似ている。
差し出されたウィンの手にティラユは自分のそれを重ねた。
ウィンが待ち兼ねたとばかりに長い指でぎゅうと強く握る。
ティラユの口がゆっくりと開き、ウィンの名前と己の意志を声に乗せた。それを合図に聳え立っていた海の壁は轟音を響かせながら崩れていった。
海が二人を飲み込む直前、ティラユの望みを復唱したウィンの手の中の宝石は砕け強く握られた手の隙間から黄金の光を溢れさせた。
ウィンのターンが終了した。
主を失い荒れ狂っていた海はやがては普段の姿を取り戻し、そこで全てが終わった。
水より生まれし有翼の獅子
水の蛮神を滅し豊衣飽食を与えん
身体を包んでいた水の感じが変わったことに気づいたウィンはティラュを腕に抱き締めながらもう片方の腕を大きく動かした。カルキを含んだ水を掻き分けて、水面に顔を出す。
「ぷはっ、おい、大丈夫か?」
同じく顔を出し大きく息を吸い込むティラュを確認すると端まで泳いでいきプールサイドへと引き揚げた。
大量の水を滴らせながら息を整えて、ぐるりと辺りを見回す。ウィンの顔が喜びで満ちた。
大学の競泳用のプールは横から入り込んでくる朝日で水面を輝かせていた。自分の世界へ戻ってきた。あまりにも馴染む光景に夢だったのではと思ったが、傍らで興味深そうにキョロキョロと頭を動かすティラユの皮膚が腕に当たる感触に現実だと受け入れた。
彼を見ると、まだ穏やかなこの国の太陽の光でそれはそれは美しく照らされていて、あぁやっぱり綺麗だったとウィンは愛おしさにうっとりと目を細める。戻ってきた喜びと連れてくることが出来た歓びにウィンの腕は思わずティラユを抱きしめた。
「おい、ちょっと」
現状の把握が追いついていない上に過度に距離をつめられてティラユはウィンの肩に手をついた。
「ははは、駄目だ。悪い、嬉しくて」
この世界にお前がいることが。
耳元で涙声が伝えた言葉にティラユも目の奥がじわりと熱くなった。黒い翼の上の濡れて張り付いた白いシャツをキュッと掴む。
「ありがとう
……
ヒア」
抱き込まれた肩口で呟けば、一瞬の間の後にウィンの抱きしめる腕が一段と強まった。
暫く二人は抱き合い現状に浸っていたが、なぁとウィンが声を出した振動が体に伝わり、ティラユは低く喉奥でぐるりと返事をした。
「ティラユは本みょ
…
じゃなくて真名なんだよな?」
「そうだよ」
「この国にも本名を呼ぶと悪霊に連れ去られるって言い伝えがあってさ。お前にチューレンをつけてもいいか?」
「
…
どんな名前?」
折角戻ってきた本当の名前をウィンには呼んで欲しいと言いそうになり、この世界の悪霊と自分ではどちらが戦闘の基礎値が高いだろうかと物騒な考えをしてしまい、どちらもぐっと堪えた。
「ティーム」
言わなくて正解だった。ティラユはその名を聞いた途端、ウィンを引き離し正面からその顔をまじまじと凝視した。まだ多くの水滴がポタポタと垂れるその顔には他意は見出せず、アーモンドアイが不思議そうに瞬くのを見てティラユはぎこちなく頷いた。
「いいよ。おれの世界でもあった言葉だ」
「へぇ、どういう意味なんだ」
ウィンの問いにも他意は見えず、ティラユは口をもごもごと動かしてからぼそりと呟いた。
「た、〝たからもの〟」
自分で言っておいて居心地の悪さを感じる。
ウィンの反応を見たくなくてもう一度その肩に顔を埋めれば、背中を優しく摩られた。
「じゃあ合ってる」
治癒魔法よりもあたたかなエネルギーがウィンの摩る手から流れ込んでくる。長らく水に浸かっていた心と身体がじんわりと温まるようだった。トクトクと高鳴っている心音までも心地よく感じる。
自分はここにいていいのだと、初めて全身から力を抜いてウィンに寄りかかった。
「ヒア
……
、ぁっくしょい!」
抜けたのは力だけでなく気もだったようで、身体が温まったのもそんな気になってただけだったようで、ティームは大きなくしゃみをして身を震わせた。
ひとりで海にいた時は感じなかった寒さはウィンの体温に触れたせいだ。差し伸べられたぬくもりに再び手を握り込まれて、部室のシャワールームへ導かれる。温水の下にその身を置けば隣のブースからウィンが再び、なぁと呼びかけてきた。
「ヒア、はどういう意味があるんだ?」
ティームはビクッと肩を揺らし、ウィン側の仕切り板をちらりと見た。
「ここでもあるんだ、その言葉。兄って意味なんだけどな」
「じゃあそれでいいよ」
歳は恐らくティームの方が遥かに上だと思うが、ウィンが嬉しそうだからそれで構わなかった。慌てて口を開いたものだからシャワーのお湯が変に喉奥まで入り込み思わず咽せ返る。
「おいぃ、リヴァイアサンの名が泣くぞ」
「もう、その、名は捨て、た」
ゲホゴホする背中を仕切りを越えて摩られて、ついでに顔も覗かせたウィンがニヤリと笑った。
「動揺するような意味なの? 教えろよ、俺の
ティーム」
明らかにティームの世界のニュアンスで呼ぶから獅子の有翼を少し力を入れて打った。
痛ぇ! とシャワールームに悲鳴を響かせたウィンはもう装備も宝具も召喚獣も持っていないただの大学生だった為、神だった者からのたしなめは羽のように軽いものだとしても鞭で打たれたような強さだった。後ろ手に打たれた赤い線を必死に確認している手にも勿論もう機動力を上げる指輪や最強の『なんでも願いを叶える』宝石はないのだが、ティームはウィンの痛がりようにくすりと笑って、その願いを叶えてやった。
「いつまで痛がってるんだよ。ねぇ、この小さい滝はどうやって止めればいいの? 教えて、〝いとしきもの〟」
広告非表示プランのご案内