望月 鏡翠
2025-12-17 01:24:23
870文字
Public 日課
 

#1940 ディルストーン居城にて5

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作

 他国に対して睨みを聴かせなけれがいけない時期に、内政に煩わされたくはない。
「トルガ殿の忠義には感謝している。この機に軍備を増強し、よからぬことを考える者もいるだろうからな」
「そうなのです。私の懸案事項も正にそのことです。領地の港を閉ざしても、海は開かれています。物資と違って人間は多少濡らしても問題はありません」
 この土地で稼ごうとする屈強な傭兵なら、海の近くまで船を寄せれば、港につけずとも入国手段はいくらでもある。
「他国が秘密裏に軍備を増強する展開を防ぐために、沿岸部の監視を強化したいのです。この機に乗じて密輸を企むものもおりましょうから」
「構わん。自国の差配、好きにすれば良いものを律儀な男だ」
実際、王でもない男に、自国の統治をどのようにするのか逐一確認する義理はない。
 内心で弱腰を笑われているのかもしれないが、侮られることはトルガの利にしかならない。貴族に諂い保身に走る商人風情とでも思わせておけば良いのだ。
「石材の輸入の許可をいただきたいのです」
 トルガの本題はこちらだった。
「ああ、そういうことか」
 我が意を得たという顔で、執政は頷いた。
 砦の建造には良質な建材が欠かせないが、木材と同じくリュネストの領地では得難いのだ。海の向こうから持ってくることもできない資源だ。
 アンタイアーを怒らせないか、ビクビクしながら山を崩すというてもあるが、他の領地から買う方が安全だ。
「価格の交渉は自分で致しますが、時期が時期故ディルストーン領でも物資の竜種には厳しくなっているでしょう。それ故、許可をとっていると一言お口添えをいただければ幸いです」
「わかった。ディルストーンをさるときまでには、用意させよう」
「ありがとうございます」
 トルガは頭を下げた。ディルストーンに媚を売り、敵対する意思がないことを示しつつ、砦を築くのに必要な物資を買い付ける約束を取り付けた。
 これで隠れてコソコソ動くことなく、堂々と港を守ることができる。
 この約束を引き出せただけでも、ここにやってきた意味はあった。