望月 鏡翠
2025-12-17 00:44:06
877文字
Public 日課
 

#1939 ディルストーン居城にて4

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作

 五名家に首輪をかけ、国の形に整えていた王は身罷られた。
 それは大きな意味を持っている。
 誰も幼い王が成人するまで待つつもりなどないのだ。
 空いた椅子には自分が座るべきだと考えているのは、何もサンドリエイルだけではない。かつてかの家がディルストーンに追い落とされたように、この土地では誰もが玉座に座ってもよいのだ。
 レシーがバンデイアに乗り気なのも、それが理由である。策謀がうまくいけば、物資や軍隊を海の向こうに送り込む労をかけずに、新しい土地を手にいれることができる。
 多少の血が流れたとして、侵略より簡単だ。
 それは玉座を維持したいディルストーンもわかっているだろう。
 リュネストも含めた各家に目を光らせているはずだ。
 トルガがジョアンにネズミに気をつけろと言ったのも、そのためだ。家の内情を探りに、間諜が家に潜り込んでいたとしても不思議はない。使用人が入れ替わったし、ちょうどいいタイミングだ。
 内部はトルガに反発する声が多くあり、出かける直前もジョアンに殺されかけたなどとは、絶対に知られてはならない。しかし、バレていないなどとは、決して思い込まないことだ。
 その油断はいつか致命傷となる。
 心の中以外は、覗くことができるものだ。
 商人に話を持ちかけたときのように、どこまで知っているか、どこまで相手が知っている前提で情報を開示するかで、駆け引きをする。前提が間違えていたら、組み立てた論理が初めから崩れ去る。
 だから心の裡だけは、知らせてはならぬのだ。
「それで、港の件で、何か困ることがあったそうだな」
 ディルストーンは、トルガの話からリュネストの弱みを見つけるつもりでいるのだろう。
 嬉しそうな顔をしていた。
 トルガは何も気づいていない風を装った。
「先日傭兵の出入りを規制しました。この時期にリュネストをきっかけに治安が悪化することは避けたいですから」
 これはディルストーンを脅かすつもりはないという態度を示すための方便だが、文化と宗教が異なる人間を大量に呼び込むと治安が悪化するのは、事実だった。