三毛田
2025-12-16 22:43:06
1079文字
Public アドベント25
 

16. 誤魔化しきれない気持ち

16日目
君への気持ちは誤魔化せないから

「好きだ~!」
「穹、うるさい!」
「いてっ」
 後頭部に何かが当たり、足元を見ると小さな氷。
 そして、声の方を見れば腰に両手を当てて、怒っていますと頬を膨らませたなの。
「いまのなのの声の方がうるさいじゃん」
「穹」
「俺が悪いかったって」
 ちょっと低くなった声に謝るも、頬を膨らませたまま。
「お前たち、どちらも煩い」
 俺となのが睨み合っていると、資料室のドアが開いて。
 腕を組んだ丹恒が現れる。
「今日も立派で最高」
「何の話だ」
 俺の言葉に、訳が分からないと呆れたように見てくる。
 何って。胸の前で腕を組んでいるから、胸がいつもより強調されてるんだよ。
 最高じゃん。
「丹恒、好きです!」
「何処に向かって喋っているんだ、お前は」
 胸に向かってです。
 流石のなのも、俺のこの動きには呆れたようで。ジトッと馬鹿にしたような視線を。
 二人そろって失礼すぎないか?
「これは嘘偽りない、誤魔化していない俺の気持ちです」
「だったら、俺の顔を見ればいいだろう。何故胸なんだ」
「丹恒の胸も好きだからです!」
「穹のむっつり」
「三月、もっと言ってやれ」
「色々言いたいけど、うちの語彙力じゃこれが限界」
「なるほど」
 丹恒、そこで納得しないで。
 普段ならば、もっと噛みつくはずのなのも今日に限って反応がイマイチ。
「二人に言いたいことは、一応ここは廊下だから大きな声で騒ぐなということだ」
「はい」
「穹は、叫ぶな。叫びたいのであれば、確か防音室があったと思うから、そこでにしろ」
「はい。でも、叫びたいわけじゃないんです」
 そう告げるけれど、二人から向けられるのは疑惑の眼差し。
 うう。何で信じてもらえないんだ。
「丹恒が好きだから、好きだって叫んだのであって、ただただ叫ぶんじゃ意味がないんです」
「そうか」
「そうです」
「だが、残念ながら今のところお前のその気持ちに応えるつもりはない」
「うう……ん?」
「ウチはなーんにも聞いてないです」
 そう呟き、なのはそうっと自室へと戻る。
「なんだ」
 〝今は〟と言ったよな? と問いかけたいのを我慢して、何でもないと首を振る。誤魔化しきれていないのは、わかっているけれど。
「特に用がないのなら、自室に戻れ。他の乗客の邪魔になる」
「はーい」
 大人しく頷き、ラウンジの方へ。
「丹恒」
「なんだ」
「お前が好きなのは、嘘じゃないからな」
 俺がちゃんと戻るのか監視するつもりでずっとこちらを見ている丹恒。
 そんな彼へ、今の想いを誤魔化さず伝える。
 すると動揺して。