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者
2025-12-16 16:19:59
2303文字
Public
紫白:短編
指先は嘘をつけない(紫白)
何でもOKな方向けというか私向けのとても短いもの。
捏造と妄想と思い込みと夢しかないです。
たぶん🟥真の赤壁大団円if(というか史実無視世界)
時代考証はしてなくて、色々ゲーム準拠、いろんな事がぜんぶ捏造です。
誤字脱字とか変なところはこれから直します(たぶん)
指先は嘘をつけない
「紫鸞、死ぬのか」
近くで静かに声が聞こえた。この声に呼びかけられたら、返事をしなければならない。そう思うのに、紫鸞は目を開くことができなかった。身体の全てが重くて動かず、驚いた。自分は何かの下敷きになっているのかもしれない。
「
…
そうか」
指先をぴくりとも動かすことができずにいるうちに、声の主は厳かにそう言った。あなたがそう言うのなら、そうなのかもしれない。柔らかく降ってくる音に、紫鸞はそう思った。そう思ったが、ものは試しにと息を吸ってみると、胸に空気が入ってくるのを感じた。大丈夫。まだ、生きている。
「我らの名は人の記憶には残らないが
———
」
続けて耳に入ってきた言葉に、紫鸞はせっかく吸った息を胸に詰まらせた。
「世の人々が太平である限り、その努めは報われる」
朱和に叱られてしまう。どうあっても目を開かなければならない。今聞こえてきているのは、太平の要が働きを終える時、里長から贈られる言葉だ。道半ばで白鸞にそれを言わせてはいけないのだと、朱和から何度も言われていたのに。
「後のことは案ずるな。お前の働きを、」
そっと、何かが紫鸞の手に触れた。聞こえてくる声以外の世界全てがぼんやりとして、それが何なのかわからない。
「お前と朱和の働きを、決して無駄にはしない」
朱和に、本当に叱られてしまう。どうあっても目を開かなければならない。声は穏やかで、紫鸞を安心させるように柔らかだった。目が開かないのであれば、せめて声を。それも使えなくなっているなら、なんでもいい、手が使えるなら手を、足しかないのなら足で、なんでもいいから使えるものを使い、違う、まだ死なないと伝えなければならない。
「うわぁ!」
やっとのことで動かすことのできた手を力の限りつかって近くの気配を掴むと、ひっくり返ったような声が聞こえた。羽のように軽く開いた目で声の方を見れば、紫鸞に腕を掴まれた元化が目を丸くしている。
「やっと起きましたか!」
元化は頬を赤らめて言うと、紫鸞の手をさっと掴み返して脈を測った。何日も目を覚まさなかったんですよ、さすがの俺ももうだめかと少し思いました、少しだけですよ、必ず助けるつもりでした、いやぁよかったです、肝が冷えました、とかなんとか捲し立てながら、元化は紫鸞の全身を検分する。紫鸞が起きあがろうとすると一度目はやんわりと寝床に押し戻し、二度目はため息をつきながら背を支えてくれた。
———
白鸞は?
紫鸞がそう尋ねると、元化はぽかんと口を開けたあと、ぎゅっと眉を顰めた。
「紫鸞どの、何があったか、覚えていますか?」
欲しかった答えのかわりに質問が返ってきて、紫鸞は首を傾げた。何かあったのだろうか。いや、何かがあったから白鸞が来たのかもしれない。
「
…
この前の雨で地滑りのあったあたりを周瑜様と見に行って、待ち伏せしていた
…
賊ですかね?を返り討ちにしたのはよかったけど、運悪く紫鸞どのの居たあたりの足場が崩れて小さな崖崩れが起きて、土砂にまみれて落下して、その途中で最後の足掻きとばかりに射られた矢を受けて、その矢に毒が塗ってあったらしいです」
説明を聞いた紫鸞が目を瞬かせると、元化はため息をついた。
「紫鸞どのが丈夫なのは知ってますけど、怪我もして毒もあって、頭も背中も打って、傷口も泥に埋まってたらしいですし、全然目を覚まさないんですもん
…
もうだめかと。でもやっぱりさすがですね!痛いところや気分が悪いところなどありませんか?」
安心したのだろう、元化は流れるように話し続けながら紫鸞に水の入った杯を差し出した。口に含んだ途端、随分と喉が渇いていたのを知り、けれど気をつけて少しずつそれを飲み干した。それから、ゆっくりと立ち上がる。少しふらついたが、数日間も寝ていたのならそうなるだろう。ゆっくりと伸びをして、少し体を動かしてみると、あちこちが軋んだ。けれどそれだけだったので、大丈夫そうだ、と頷いて見せると、元化はようやく、息を吐いた。随分と心配と手間をかけたことが見て取れて、紫鸞は礼を述べた。
———
白鸞は?
それからもう一度、白鸞の行方を尋ねると、元化はまた、目をぱちくりとさせた。
「白鸞どの
…
は、お会いしてませんけど
…
」
———
来ていた
「
…
夢とかじゃなく?」
———
居た
手のどこに触れられたのかもよくわからないが、白鸞は確かに来ていた。紫鸞に触れた指先は、それこそ白鸞の方が生きているのか怪しいほどに冷たく、不安定に揺れていた。紫鸞が強く頷くと、元化は困ったように笑った。
「すみません、俺は会ってないです。もし来ていたなら、ついでにお城に寄ってるんじゃないですか?白鸞どのも、忙しい方ですから」
そうか、と紫鸞が返事をするかわりに、紫鸞の腹が鳴った。
「食欲があるなら、もう大丈夫ですね。何か滋養のあるものを作ってもらいましょう」
机の上の薬草を手に取りながらそう言う元化に断りをいれ、紫鸞は靴を探した。今は食事よりも先に、しなければならないことがある。そのままどこかへ出かけそうな紫鸞に、元化は口を開きかけて、閉じた。
「食事の準備は頼んでおきますから、なるべく早めに戻ってきてくださいね。お城に居なかったら、そのまま探しにいかずに一度帰ってきてくださいよ」
元化の声を背で聞きながら、紫鸞は少しずつ動くようになってきた手足を急がせて部屋を出る。
生きているのだから、白鸞に顔を見せにいかなければならない。今度こそ出会い頭に殴られるかもしれないが、それで白鸞の指先が温まるのなら、それでいいと思った。
〜おわり〜
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