katakuruten
2025-12-16 00:54:56
1923文字
Public 本編(書きかけ)
 

序章

2026/03/20更新

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 それはこの世界の大地に、大空に、大海原に住まう不思議な生き物たちの呼び名だ。
 その存在の歴史は、今この大地で最大の勢力を誇り大文明を築き上げている現行人類という種が存続している期間よりも長く、何万年、下手すれば何億年という長さにもなる。
 人間という種がこの大地に根付いて何千年、彼らは人の良き友人として、家族として、相棒として支え合い暮らしてきた。
 ノーマル、くさ、みず、ほのお……。現在、提唱されている理論ではポケモンにはそれぞれ種ごとに十八タイプのうちの一から二タイプが割り当てられていて、様々な特徴と生態を有している。
 人間はそのような多種多様な形態をもつ生き物たちを捕獲する手段を、この百年程度で獲得した。この大地を生きる誰もが知るどうぐ、モンスターボールだ。ニシノモリ博士の研究成果をもとに作られた革新的などうぐによって、古くは「魔獣」と呼ばれた獣たちは手のひらサイズのカプセルに吸収されるようになった。
 ポケットに収まるモンスター。すなわちポケモン。
 全てのポケモンが持つ「小さくなる習性」を利用し、連れ歩きに特化したそのどうぐはポケモンについての研究を何段階も推し進めた。
 ポケモンの研究が進むにつれて種ごとに体系化され、情報が蓄積されていった。身近な存在故に、ポケモンという存在を研究する研究者は多い。モンスターボールが開発されて数十年の間に情報は氾濫した。
 それゆえに、その情報をまとめようとする組織が結成された。組織の名を全国ポケモン図鑑協会という。
 全国ポケモン図鑑協会は「全てのポケモンの情報を全ての人々の手元に」のスローガンを掲げ、ひたすらに図鑑を編んだ。確認されている全てのポケモンの観察結果・研究成果を整理し、とりまとめ、資料化した。
 並大抵の努力では成し遂げられないほどの偉業。全国ポケモン図鑑大全と呼ばれるその書物の完成にはこれまた血と涙と汗の物語が存在するのだが、ここで語ることではない。
 全国ポケモン図鑑大全の情報をもと、認定ポケモン図鑑の許可を持つ様々な図鑑が作られたことで、さらにポケモンという存在は身近になった。地方ごと、タイプごと、子ども向け、大人向け。多くの人々が図鑑を手に取ってはページをめくり、あのポケモンの名前は何か、自分の相棒はどのようなポケモンかと夢中になった。
 だが、研究は日夜進む。新たなポケモンの報告は未だ続き、確認されていなかったとくせいや進化先が見つかることも稀ではない。ゆえに、ポケモン図鑑は常に更新を必要としている。
 数十年前、後に「図鑑所有者プロジェクト」と呼ばれるある試みがカントー地方を代表するポケモン博士であるオーキド博士の手で実施された。今でいう携帯端末程度の大きさの電子機器に、全国ポケモン図鑑大全をもとにした図鑑機能を搭載し、カメラ情報からポケモンの種の班別を行う機能。
 その機能だけでも、紙の図鑑がほとんどだった当時には画期的だったが搭載された機能はそれだけではない。ポケモンの生態を記録し、わざやとくせいの確認、さらにはポケモンの追尾や転送システムといった機能が盛り込まれた機械を研究チームは作り上げた。研究室の外のポケモンの生態を観察することに特化したその電子機器は「ポケモン図鑑」と呼ばれた。
 かつてその「ポケモン図鑑」を与えられた少年少女がいた。少年少女たちはオーキド博士、そしてその他の各地方の著名な博士たちに旅路を祝福され、期待され、ときには盗み出し、勘違いから手にした図鑑を持って各地を駆け回った。各々の旅の中で少年少女たちは出会ったポケモンの姿を記録し、新たな図鑑の一ページを作り上げていった。
 いつしか「図鑑所有者」と呼ばれるようになった彼らは、旅の傍らでいくつもの巨悪と戦い地方に平和をもたらす英雄となった。
 だが、月日は流れた。英雄と呼ばれた少年少女たちは図鑑埋めの任を離れ、それぞれの人生を歩んでいる。小さな約束を守ってジムリーダーとなった者、家族の跡を継いで博士となった者。彼らは見守られ成長する少年少女ではなく、新たな世代を守る大人となったのだ。
 長らく新たな図鑑所有者は選出されなかった。だが長い年月を経て、ポケモン図鑑は新たな情報の追加と更新を必要としている。そう、今こそ次の「ポケモン図鑑」が作成されるときが来たのだ。
 これは夢見る少年少女たちが大人になった後の後日譚の一つ。
 そして——


 そして、かつて少年少女だった大人たちのもとに生まれつき、新たなポケモン図鑑を手にした、次世代を担う少年少女たちの青春時代の物語だ。