三毛田
2025-12-15 22:33:02
1075文字
Public アドベント25
 

15. そんな顔をされたら

15日目
キスしたくなるじゃん

「丹恒」
「どうした?」
 名前を呼ぶと、不思議そうな表情でこちらを振り返り。
 そんな顔されたら、キスしたくなっちゃう!
「んー」
 唇を尖らせて顔を近づけると、額を弾かれた。所詮デコピン。
「痛い」
「急に顔を近づけるな。それと、なんだその唇は」
「キスしたくなっちゃった」
「そういうのは、俺じゃなくて好きな相手にやるべきだ」
 まるで己が、そんな対象になっていないと言わんばかりの言い方。
「丹恒が好きだって言ったら、どうするんだよ」
「どうもしない。売り言葉に買い言葉だろう。違うのか」
……
 そうです。とも、そうじゃない。とも言えば話は早いのに、変な意地で素直になれない。
「それで?」
「ほっぺたにちゅーしたいです」
「なるほど。それなら、いいだろう」
 目をつぶり、頬を差し出してきたのでそこにそっとキス。
「やわらか……
「そうか?」
「うん。すごい柔らかい」
「お前の頬に触れても?」
「ど、どうぞ」
 俺の一言で学者としての知的好奇心が刺激されたようで、そっと俺の頬に触れてきて。
「お前の頬は固いな」
「俺はよく笑うからな」
 丹恒と俺の違いは何だろうかと考えてみたところ、彼はあまり表情が変わらない。けど、自分で言うのもなんだが、俺は丹恒よりも笑うしコロコロ表情を変える。
「なるほど。頬の筋肉をよく使用するかどうかで、柔らかさが違うのか」
 わずかに目を輝かせ、むにむにと俺の頬を揉む。
 ひんやりしている手は気持ちいい。でも、あらぬところが元気になってしまうから、できたら控えて欲しいところ。
 でも、楽しそうな様子の彼を止めることなど俺にはできなくて。
 結局、満足するまで頬を触らせてしまった。
 まあ、丹恒が満足そうなので良しとしよう。
「ふう。ああ、すまない。お前もやることがあったのにずっと俺が頬に触れていた」
「ううん。丹恒が楽しそうでよかった」
 それは本音。でも、冷たい手にずっと触られていたので頬が冷えてしまったのも事実。
「お礼にキスさせて」
「それは……
 一歩、二歩と後ずさる。唇にキスをさせて欲しいとおねだりしたわけじゃないのに、なんでそんな反応なんだよ。
 ちょっとだけ傷つく。
「唇が、いいのか」
「頬でもオッケーです」
……ん」
 目をつぶり、最初に俺がやったような表情。
「マジで?」
「早くしないなら、俺は資料室に帰る」
「します! させてください!」
「ん」
 頬に手を添えてから、そっと唇を重ねる。
 思っていたよりも柔らかく、ぷるぷるだ。
 ずっとキスしたい。