小さなフリンズさんと過ごす話

※捏造設定にご注意を※

「か……かわいい……!」
「その感想、僕としてはあまり嬉しくはないんですが……
 
 今日は出かける予定もなく、家でのんびり過ごしていた一日だった。そろそろ夜も更けて寝ようかと考えている時間だったが、
 
 ――コンコン。
 
 扉を叩く小さな音が聞こえた。こんな夜の来客予定も無かったはずだがなんだろう、と考えつつ扉のスコープを覗いてみる。
「ん?いたずら?」
 扉の外には誰もいない様子。でも確かに音は聞こえた気がした。と考えていると、
『僕です、扉を開けてもらえませんか?』
 と、フリンズさんの声が聞こえた。
 え、でも姿が見えないのに?とはいえフリンズさんなら開けない理由はないか、と扉を開ける。
 
「よかった、開けてもらえなかったらどうしようかと」
……ぇえ?!」
 
 扉を開けても、あの見上げる長身は目に入らなかったのだが、声が聞こえた少し下に目線を動かしたところ、フリンズさん(仮)が居た。
 ――ちっちゃい。
 そのままきっかり十秒固まってしまった私。
「正真正銘、貴女のフリンズですよ。少し小柄にはなりましたが」
 いや少しどころではない。ざっと見積もってもホラガイ団の幼い彼らよりも幼い。ようやく状況が飲み込めてきたところで私はすぐ行動に出る。
「か、かわいい!!」
 思わず少し屈んでガバッと抱きしめてしまった。「あまり嬉しくは無いんですが」とか耳元で呟くフリンズさん。え、声も若干幼い。メゾソプラノとか……これはもう卑怯では??
 
 ひとしきり小さな姿を堪能し、ようやく部屋に招き入れてフリンズさんに事情を聞いた。
「とあるワイルドハントを一人で対応していたのですが、予想外に数が多く、力を使いすぎてしまったようです」
 彼が妖精のフェイであることは知らされていたが、まさかこんな姿になることもあるとは。夜明かしの墓に戻るよりも近い私の家を目指し歩いてきたそうで、引きずってしまう洋服はランプに格納しているらしい。相変わらず便利だね。
 ひとまず私の部屋着を貸すことにした。これでも丈が余っているが、無いよりはマシだと思う。パステルカラーのパジャマでごめんなさいね。めちゃくちゃ可愛いです。
 
「すみませんが、今晩は泊めてもらえないでしょうか?明日には戻れると思いますので」
「全然良いですよ!」
「ありがとうございます。このお礼は後日必ずさせていただきますね」
……では一つ、今お願いしても良いですか?」
「はい、なんなりと」
「抱っこしていいですか!?」
――は?」
 食い気味に要望を伝えると、流石のフリンズさんも面食らった様子で目を丸くした。だって、将来美人になることが確定した美少年(仮)がいるのだ。我慢できないでしょ。
 
 眉を下げて若干困り顔をしながらも、フリンズさんは頷いてくれた。早速私はソファに座り直し、私に背中を預けてもらう形で膝に乗ってもらう。
「へへっ、いつもとは逆ですね」
「はい、僕は少し落ち着かないですが」
「そうなんですね。私はとっても楽しい時間になりそうです」
 思わず口角が上がってしまう。フリンズさんのお腹に手を回し入れて、ぎゅっと抱きつく。こんなこと普段は出来ないので、本当に楽しい。そのままフリンズさんの首元に顔を埋めると、いつもと変わらないフロストランプの香りがする。
「ふふ、くすぐったいですよ」
「すみませんね。でも止めません」
「おやおや。これではどちらが子供か分かりませんね」
 彼はクスクス笑いながら、「いえ、僕も子供では無いんですけどね」と言う。それはそうですね。
 
 そうこうしているうちに、私の方が眠くなってきてしまった。時計を確認すると、針は夜中の時間帯を指していた。
「フリンズさん、私眠いみたいです……
「そのようですね。ベッドに移動した方が良いですよ」
「はい
 そう言って、彼を抱っこしながらベッドまで運ぶ。
「僕もですか?僕はランプに戻りますので、ゆっくり休んでください」
「嫌ですよ。離しませんからね」
「なんと。こんなに我儘を言う貴女は珍しいですね」
「えへへ……おやすみなさい
 もう限界ぐらい眠いのだが、こんな機会は逃せないので、小さなフリンズさん抱え込んだまま、眠りの世界に落ちることにした。
 小さな手が私の頬を撫でた気がする。
 
 
 ***
 
 
……ん?」
 
 違和感を感じてベッドのシーツをトントン叩いて探し物をする。昨日は抱き枕をかかえて寝ていたような気がするのだが。
「おはようございます、朝ですよ」
「おはようございま……す?」
 朝の挨拶をしながら、昨夜の記憶を少し取り戻す。……そうだった!昨日は!!
……元に戻ってるぅ~~」
「はい、温かくてよく眠れたので回復できました。ありがとうございます」
 目尻を下げてにっこり笑うフリンズさん。いつものシャツ姿に戻っている。うん、今日も美人さんだなぁ。よかったと思う気持ちと少し残念に思う気持ちで、寝起きの脳内が混雑した。
「美少年のフリンズさんも捨てがたいですが、美人のフリンズさんもやっぱり……好きですね……
「おや、朝から随分と情熱的ですね」
 まだ寝ぼけてる私は、自分が何を言っているかよく分かっていなかったが、嬉しそうなフリンズさんを見て、私も嬉しくなった。
 大きな手が私の頬を撫でた。
 
 
 
『こんな機会、逃しはしないでしょ』