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横井
2025-12-15 00:15:11
781文字
Public
羅小黒戦記
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記憶
会館襲撃直後の灵遥(リンヤオ)の話です。覚悟ガン決まりジジイほど厄介なものはないという話。
灵遥は覚えている。
あげる、と言って、根っこのついた花を差し出した子を。術が上手く使えず、泣きべそをかいていた子を。少し誇らしげに、弟子をとったと言いにきた子のことを。
灵遥は覚えている。
目を見開いたまま、動かない子のことを。人間が使う冷たく醜い武器の先でこづかれ、転がされている子のことを。
灵遥は覚えている。
流石冑を操ってみせる灵遥を、目を輝かせて見ていた大松のことを。
「灵遥さま。おれもいつか、灵遥さまのように流石冑を使いこなせますか?」
「ああ、もちろんだよ、大松。たくさん鍛錬するんだよ」
そう言って、腰ほどの高さにある大松の頭を撫でてやる。絹糸のような黒髪が、灵遥の指の間をすり抜けていく。照れくさそうに笑うその頬は、幼さを残したかわいらしい丸みを帯びていた。ずっと彼の成長を見守っていた。灵遥の背丈を越し、誰もが一目置く流石冑の使い手となり、腕をなくし、弟子をとった。
灵遥は覚えている。
己の刃が、彼の体を刺し貫いた感触を。
「
……
ここまでする必要が?」
妖精の気配がなくなった会館を見渡し、皆逆荒が苦々しげに吐き捨てる。
「皆逆荒」
前を向いたまま灵遥が名前を呼ぶと、隣に立った彼がびくりと肩を揺らす。
「大松は死んだよ。わたしが殺した」
声だけ聞けば、口元に笑みでも浮かべているような、穏やかな声だった。明日の天気でも言うように、たった今殺した仲間の名前を口にする。皆逆荒はゾッとして、唾をのんだ。
「迷いがあるのなら、去るがいい」
穏やかな笑みを浮かべ、灵遥が横に目をやる。皆逆荒はその視線から逃れるように前を向くと、首を横に振った。
「い、いいえ。やります」
指示した通りに無限に変化すると、人間たちと一緒に若木の元に歩いていく。
事は為された。放たれた矢は、まっすぐ妖精のもとへ飛んでいく。灵遥はやり遂げなくてはいけない。
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