フリンズさんの部屋を探索する話


「これは、なんだろ?」
 
 フリンズが「少し出掛けてきます」と言って外出してから数刻、さすがに一人の時間に暇を持て余してきたので、部屋の掃除というか探索を始めた。と言っても、いつも部屋は綺麗なのだが。
 ふと、部屋の片隅で布がかけられた置物を見つけた。めくってみると、何かの機械のようだ。
「これってフォンテーヌ製の蓄音機……かな?」
 雑誌か何かで見た記憶はあったが、実物は初めて見た。こんなものフリンズの家にあったのか。
「多分、このボタンを押したら……わぁっ」
 それらしい起動ボタンをカチっと押したところ、すでにセットされていた音楽が鳴り出した。リズムが穏やかな美しい曲だった。
「綺麗……ふふっ、この曲好きだな」
 そのまましばらく眺めていたが、繰り返し聴いていたら気分があがってきたので、リズムに合わせて揺れたり、足を鳴らし、立ち上がってクルクル回ったりしていた。
 
 一人で鼻歌を歌いながら踊っていたところ、視界の隅にフリンズが見えた気がした。ピタっと止まって、恐る恐る見えた方を振り返ると、部屋の扉に寄りかかって楽しそうに私の方を見ている彼が居た。
「フ、フリンズ?!い……いつから居たの?」
「あぁ、貴女が踊り始めるぐらいからでしょうか。」
 そう言って彼は口元に手を当てながら、ふふっと笑った。
 私の方は恥ずかしさで顔から火が出そうである。
「それって結構前じゃない!……おかえりなさい、帰ったなら声かけてよね」
「すみません、戻っていました。待たせてしまいましたね。でも貴女がとても楽しそうで、つい眺めてしまいました」
「そうですか……楽しそうでなによりですね……
 少し苦い顔をしてそう呟くと、フリンズの笑顔が深くなり、ははっと声も出して笑っている。
 美人が笑うのは良いことであるので、つい許してしまいそうになる。
 
 ようやく部屋に入り私に歩み寄ったフリンズは、胸元に手を置いて両足を揃えた。私の目を見ながら軽いお辞儀をして手を差し出す。
「僕と一曲、踊っていただけますか?」
「なっ?!……えぇ、喜んで?」
 とっても驚いたし、正しい受け答え方が分からないが、それは楽しそうな催しだと思ったのでフリンズの手を取ってみることにした。
 
 部屋に流れ続けている曲に合わせ、フリンズのリードに任せてステップを踏む。ダンスなんて初めての経験だが、美人の顔を間近に見ながら踊るのはとても楽しかった。
 なお五回以上はフリンズの足を踏んだ。そんなに笑わないでくれ、ごめんってば。



『ふわりふわり、くるくると』