月夜にフリンズさんとお散歩する話


 ふと上を見上げたら、三つの月が見えた。
 
「綺麗……
「おや、どうしましたか?」
 
 彼の背面に映る月と、金色の両目の月が視界に入り、思わず呟いた言葉が耳に入ったらしい。
 隣を歩いていたフリンズは、立ち止まった私を不思議そうに見ている。そのまま何も言わずに月を見ていたところ、彼は私の顔の高さまで屈んでくれたため、見える月は二つになった。
 今度は惚けた顔の自分が、彼の瞳に映るのが見えたと思った途端、唇に柔らかいものが触れた感覚で我にかえった。
 
……月が見えなくなるじゃない」
「これは失礼しました。とても情熱的に見つめられたので、キスして欲しいのかと思いました」
「そんなのいつでもしたいけど、今じゃなかった」
「おやおや」
 
 頬を膨らませて怒ったふりをすると、彼は目を細めてフフッと笑った。三日月が二つになる。私はこの顔も好きなんだよね。
 
「さぁ、帰りますよ。ちゃんと歩いてくださいね」
「はーい」
 
 顔が少し離れた為に、また三つの月がみえるようになった。それに満足し、彼が差し出してくれた手を取り、月の鑑賞をしながら歩くことにした。
 
 
 
『月が増える夜のはなし』