白殊皎(しらよし こう)
2025-12-14 20:00:00
2168文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

忠義忠誠いずくにか

FGO【歳勇/土近(としいさ/ひじこん)】
新選組の羽織の由来から歴史の闇へ。
そして、二人の願い。

お付き合いはまだしてない二人。
まだカルデアは長い道のりを歩み始めたばかり。

12月14日は新暦での元禄赤穂事件の日です。
そこから浅葱の羽織のモチーフ、だんだら模様に至りました。
郷土の名君すら歳勇に繋げます!
吉良様ごめんなさい!!

──浅葱の羽織って忠臣蔵から来てるって聞いたんですけど。
 それは少女マスターからのその羽織を纏う近藤と土方へのふとした問いかけだった。
 マスターはまだ人理修復に乗り出したばかりのいとけない少女だ。
 カルデアの事故で人類最後のマスターとなってしまい、日々艱難辛苦に晒されている。
 それでも彼女は弱音を吐くことなく日々学び、できるだけ知識を身につけようとしているらしい。
「はい、その通りです。忠臣蔵で赤穂義士たちが身に纏った討ち入り装束を元に、芹沢さんがお作りになったものです」
──近藤さんの時代も、忠臣蔵ってすごかったの?
「えぇ、上演するものに困ったら忠臣蔵を打てば必ず当たると、人気は大したものでしたよ」
──でも本当の赤穂浪士は綺麗なところばかりじゃなかったよね? その辺はどうだったのかなぁ。
「お恥ずかしい話ながら。我々は実際に見聞きしたわけではなく、芝居を通して知ったことでもありましたし、なにより幕府の管轄下、真実を語るのは禁句でもあったのです」
──うん、ごめんね。以前、吉良上野介の領地に近いところで生まれ育った友達がいて、いつもテレビで忠臣蔵の流れる年末になると『吉良様は悪くないのに。浪士ばっかり賞賛されて──』とぼやいていたものだから気になって。
「お気遣いなく。私も図書室の書物で、吉良公が名君であったという事が記された書物をいくつも読みました。それぞれの立場もありましょう、多角的な視野は必要かと」
「おい、藤丸マスター。あんまり近藤さんを困らせるな。真実なんぞ、闇の中にあるもんだ。俺たちだって当時の他の連中からみれば鬱陶しい人斬りの集団だったろうし、俺だって最終的には新政府に逆らった逆賊だ」
──そうなるんだ……。歴史っていろんな人の思惑で歪むんだなぁ。



 マスターの呟きを最後に、その場はお開きになった。
「歳……
 肩を並べて部屋に戻る途中、近藤は土方の方をちらり、と見て切なげな顔をして呼びかけた。
「どうした、近藤さん」
「私が、おまえを逆賊にしてしまったんだな、と思って」
……
 歩みを止め、下を向く。
 近藤や土方の生きた時代では、将軍や天皇に逆らった〝逆賊〟という言葉は余りに重すぎた。
 その言葉一つで、いままで築いてきたものはもろく崩れ去り、天下国家の大敵と成り果て、時と場合によってはその存在すら抹消される。
「私の首一つで収まると思ったのに……結局……
「近藤さん!」
 その言葉に土方は語気を強めて近藤の両腕を掴んだ。
「何を言ってるんだ。あれは俺が選んだ道だ。あんたのせいじゃない! 俺は……あんたが死んだと認められなくて、勝手に走り続けただけだ!」
「あぁ……あの時、私はどうすればよかったのだろう? どうすればおまえを死なせずに済んだんだろう?」
 近藤はその瞳にうっすら涙さえ浮かべて土方に──いや目に見えない何かに問いかけた。
「俺は、あんたに死んで欲しくなかった……俺が死んでも、あんたには生きて欲しかった」
 土方は近藤を抱き寄せ、その肩口に顔を埋める。
「歳」
 思っていたことは同じだった。
 互いに、自分が死んでも相手に生きて欲しいと願っていた。
「そうか……
 本当に、真実は闇の中だと近藤は思った。
 どんなに手を伸ばしてもそれは掴めるものではなかった。
「──二人で手を取って、逃げてもよかったのかな……
 ぽつり、と近藤はもらした。
「それが出来てたら……よかったな」
 今こうして英霊サーヴァントとなって話が出来るからこその仮説だったが、当時では絶対に選べない道でもあった。
「近藤さん」
 土方は近藤の背を撫でながら続けた。
「もう、あんなことじぶんごろしはしないでくれ。俺に道を間違えさせないでくれ」
 その言葉はあの京の特異点での一件と、生前土方に告げず投降の道を選んだ両方の事を言っているのだろう。
「俺は、何もいらねぇんだ。いまはただ、あんたが傍にいてくれるだけでいい」
「──なんで、そこまで俺に……
 近藤の顔が涙に耐えるように歪んだ。
 土方がそこまで想いをかけてくれる理由がわからなかった。
 その価値が自分にあるとは思えなかった。
「自分でわかれば、苦労はしねぇよ……
 土方にだって、わからない。
 だがどうしようもなく、子が母を慕う本能のように近藤を想う事だけは真実なのだ。
「今度は、逃げよう。お軽勘平のように……
「縁起でもねぇ……
 この人理修復の旅で、互いの命が危うくなっても、きっと逃げることはしないだろう。
 それでも今はそう言いたかった。
 自分たちのためだけに、時が流れるようにと。
 都合のいい、この願いが成就するようにと。
 この吹雪に包まれた天文台カルデアで、願いをかける星が観測えることはないのかもしれないけれど──。
「共にいこう……どこまでも……
 近藤は土方の背に腕を回し、しっかりと抱き返した。
「あぁ……どこまでもな」
 それに応えて土方は近藤のその浅葱混じりの黒髪に頬をすり寄せる。
 戦いはまだ続くだろう。
 その中にあって、お互いをただ一つの導として、お互いをただ一つの道として二人は歩むのだ。
 いつか再び別たれる事があっても──。