sevendays23
2025-12-13 23:58:39
6237文字
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春夏秋冬島の話(ボツ)


「おい、弁当持ったかクソマリモ」

「るせぇ、かりぃぞ。もっと重くしろ修行にならねぇ」

「おれがへばりついたら重くなるか?」

「潰れるし空になるからそこにいろ。みんなのぶんの食料、食い尽くされちゃたまんねぇ」

「ぶー」

ぶるるん、と景気の良い音が船の中に響き渡る。カチャリとヘルメットの顎紐を締めたあと、ぐいっと大振りのゴーグルを下げたは、同時。一人は先頭。一人は殿。真ん中は運転。計3人。ぐっとハンドルを握り、ステップを自慢の足で強く踏みつける。
もし、偉大なる航路にあるボンチャリという乗り物をご存知だとすれば、それはシャボンディ諸島にあり、漕ぐとぷかぷかと空を走ることができる、自転車のような便利な乗り物なのだが、ともかく。サニー号の甲板、今現在の甲板にも似たものがごとりとおいてあるのだ。ボンチャリよりもずっと早く、そして粗暴なものではあるが。

「よし」

「いく」

「ぞっ」

青空に飛び立った、3人の体躯。ぐうっと空に舞い上がると、小刻みに揺れながらまっすぐと煙を吐き出して走り出した。乗り物の名は、エアバイク。名前のとおり、エンジンを使って、空を飛ぶ乗り物である。

「うっひょぉぉぉ!!!!」

船長が高々と叫ぶ。眼下に広がる絶景は、春夏秋冬を独り占め。桜が舞い、葉が生い茂り、紅葉が吹き荒れ、雪が散る。サニー号が止まるは、本島から細い32kmの橋で繋がった孤島。空を飛んでも陸を頑張って走っても行ける本島は真ん中の大きな大きな、ガレオン船が50は並んで入りそうなほど大きなドームを残して、東は春、南は夏、西は秋、北は冬と島をケーキのように4等分している。彼らはこちらに上陸して、ニ日目の昼を迎えていた。他の一味はどこにいるのか。いる。確かにいる。春夏秋冬の島から、焚き木の煙がもくもくとあがっているから。

「最初はどっからだ?」

「ロビンちゃんだな。一番寒くて一人ぼっちだ。だからおれいこうかっていったのに!」

「バカ!バイクが揺れてるぞ!バカ!」

「バカバカ言うなっアホマリモ!食料の問題とかがあるから仕方ねぇってナミさんも言ったろうがアホアホ!」

「アホアホ言うなっ」

「あっひゃっひゃ、おもしれぇー!」

ぐらぐら揺れるバイク。船長は楽しんでいるようだが、剣士と料理人はギャンギャンと喧嘩する。そう、彼らはサニー号に残り、あとの7人は別れて島を調査している。それには、訳があったのだ。

「ともかく、運転権はおれにある!いくぞ。服はジャケット寒かったら下で着ろ」

「うぉぉ!サンジ!いいぞいいぞ!!もっととばせー!」

「よし、これも修行が」

エンジン全開で、雪降るエリアに全力で向かうために空を駆けた。彼らの冒険の理由は、これと示された料理人の胸の中。革ジャケットの間から覗き込んだ、ネックレスのようにかけられ風に揺れる小さな袋の中にあった。

――――――

「竜のうろこの伝説ぅ!?」

「そう。この島には5つの竜の鱗があって、春夏秋冬それぞれのエリアに一つずつと、あとどこかに一つ隠されてるの。それを集めたら莫大なお宝が手に入るんだって」

船長は航海士の言葉にキラキラと顔を輝かせた。新しい島についたばかり。なのに新しい冒険が待っていると聞かされたからだ。考古学者が仕入れてきた情報だから、ほぼ間違いはないだろうとのこと、

「5つの竜のうろこを見つけたら、島の真ん中のくぼみにはめる。そうしたら宝が現れるって」

考古学者は地図を差し出すと、船長はことさらにキラキラした顔になった。いまサニー号がいる孤島から、ずっと伸びる橋。そこを越えれば、春エリアが顔を出し、そこから冬エリア、夏エリアを通って秋エリアに行けるのだ。まるで以前冒険したメルヴィユに近い構造である。

「でっ!!それを探すんだな!」

「えぇ。振り分けをくじで決めて、春夏秋冬のエリアを探してもらう。あと、サニー号に残るのは3人ね。それで、その3人には毎回ご飯を頑張って徒歩なり空飛ぶなりで散らばったみんなに届けてもらうから、全部のエリアを回れるわよ」

「えーっ、おれそれがいい!」

船長は全部のエリアとの言葉に強く惹かれたようだ。そう言うと思った、とばかりに、航海士は笑う。

「いいんじゃない?サンジくんはくじ無しでもうその担当だし。ご飯担当。空も飛べるし」

「ナミさんの仰せなら!お前も空飛べるしな……全部メシ食うなよ?」

「おう!」

料理人はばっと手を上げてアクアリウムバーに紅茶とコーヒーとお菓子を持ってきたところだった。船長がニッと笑って請け負い、二人はくじ無しで決まったようだ。

「じゃあ、残りのみんなでくじ引くわよ。安全な島らしいしいざとなれば電伝虫で助けを呼べるようにはするからね」

「そ、そりゃ安心だ」

狙撃手の安堵の声。他の一味もご相伴に預かりながら作戦会議を聞いている。ただ、二人ほどを除いては。

「チョッパーとフランキーは?」

「孤島でキャンプの準備をしとるわい。どれ、呼び戻してこよう」

「お願いね、ジンベエ」

操舵手は立ち上がり、扉を開けて外に向かっていった。じゃあ、と航海士はあたりを見渡す。

「他に質問は?」

「鱗ってのはどんな形なんだ。探しようがねぇだろ」

「待って」

剣士が問えば、考古学者がページをパラパラと巡った。

「形は丸みを帯びた台形でピンポン玉サイズ。色は桃色、赤色、緑色、青色、黄色で、太陽に当てると強く虹みたいに輝く。それと、舐めてみると甘かったり辛かったりする」

「それって、これのこと?」

「そうそう、これって、え?」

ぎょっとした声があふれる。料理人が差し出した手のひらの上。小袋に入れていたらしい。青色の、丸みを帯びた台形の、それ。アクアリウムバーから差し込む窓の光が当たると、強く強く、眩しいばかりの虹に光った。

「すげー!!」

「あんたどうしてこんなんもってるの!」

「あぁ、ナミさんの情熱的なアプローチ……

「あっ、今日外眺めてたら見つけて食料かと思ってたまたま私が見つけてサンジさんにあげました。舐めたら渋かったです、物凄く」

「報連相をしっかりせんかいい!!!」

「ぎゃーっ!!!」

胸ぐらを掴まれてぐらぐらと揺らされて、かたや幸せそう、かたや大変そうだ。

「ともかく、一つは見つかったのね」

「じゃああと4つだ!」

「この調子ならすいすい見つかりそうだな」

「いや、スイスイ見つかり過ぎると逆に不安がだな……

「うぉぉぉ!!すげぇぇ!!!」

今度は船医の歓声が外から響く。彼らは顔を見合わせ、外に飛び出した。

「今度は何?」

「おれも実物は初めて見た」

船大工がぽんと叩いたもの。それは、エアバイクだった。ご丁寧に鍵までついていて、貸出し用、と後ろのプレートに書いてある。

「何これ」

「これで空を飛べるんだ」

「空?すっげぇ!!!」

船長はキラキラと顔を輝かせた。船大工はちらっと料理人を見る。

「おめぇ車に乗れるんだからこれもイケるだろ。出前に使えばいいじゃねぇか」

「大丈夫なんだろうな?」

「さっき試し乗りしたのがチョッパーのリアクションだよ」

「成程、なら大丈夫か。おいクソゴムお前は運転だめだ」

「えーっ」

乗る前に壊されてはかなわないと船大工と料理人が慌てて船長をおろしにかかる。

「この船はびっくりがつきんのう!」

「まぁトラブルはいつも多いぞ」

「全く飽きませんよー」

ジンベエはカラカラとご機嫌に笑い、剣士と音楽家もため息と明るい声で同調する。

「こんなところに貸出用なんて、面白いわ。前には人が住んでたのかしら?」

「えっ竜がいる島なのに?」

「エアバイクが出てきた文明は最近よ。だから最近まで人が住んでいたかもしれないわ」

「えぇ、大丈夫なのかそれ」

考古学者は楽しそうに考察を始めて、狙撃手は怯えだした。一味はワイワイと話がそれて喋りだす。航海士はまだ驚いている船医を抱き上げて、ため息をついた。

「ともかく、くじにしましょ、ねぇ」

「お、ぉぉ!?」

「はいすいません」

その迫力に、船医はビクリと怯え、仲間たちは即座に謝ったのだった。

―――――――

一悶着あったもののくじでメンバー分けは無事に決まったので、料理人と剣士と船長以外の7人は島あちこちに散って、昨日はキャンプをして過ごしたはずだ。どうやってキャンプをしたかは知り得た情報ではない。昨日はお留守番、今日から冒険なのがこの三人だったのだ。もっとも、記録は五日分だから着替えや積荷をフランキー将軍に詰め込み、料理人がとりあえず夜と朝の分の弁当を手渡して、船番組は三人で小さな宴をして楽しんでから、昼前十時の今に至るのだった。

「うひょーー!雪だ!」

「こりゃ大雪だな」

「おっ、あそこにロビンちゃんがいるぞ!!おーい!!」

ブレーキを踏み、アクセルを緩めると、ぶぶぶと小さな音を立てて真っ直ぐに下に降りていく。外で薪にあたっていた考古学者がコートをぐいっと羽織って顔を上げ、パタパタと手を振っていた。

「すっげぇ!!クリスマスにかまくらだ!」

ゴーグルを上げ、目の前に広がる光景は上から見るよりもさらにすごかった。雪が降りしきる島のあちこちにはクリスマスツリーがおいてあり、オーナメントやライトが施されて、何が入っているかわからないプレゼントボックスが下に固めてある。そして、かまくらがぽこりぽこりとあちこちに立っていた。船長ははしゃぎながら雪に埋もれ、笑いながらまるで犬のようにゴロゴロと転げ回った。

「えぇ。全て元からあってフランキーが補強してくれたの」

「もとからあった?」

「そう。しかもそんなに時間が経ってないわ、人の気配は一つもないのに、不思議ね」

考古学者がそっと手でなぞるはキャンプ地のかまくら。補強されているだけあってカチカチ。だが、周りのかまくらも、補強されてないのにしっかりと立っているように見える。しかも人工物であるクリスマスツリーがあちこちにあるのも不思議だ。

「さぶっ」

「だからお前もコート着ろ。ここに入るな!」

「ロビンちゃんもおれも勿論だめだぞ、いっとくが」

気づけば、剣士のコートの懐から船長の首が覗いていた。ボタンを開けて引きずり出されてぶへ、と転がっていたが。

「だって、置いてきた!」

「あァ!?」

「アホか!!」

「ふふ、大丈夫よ。そこのプレゼントを開けてみて」

「プレゼント?」

船長が考古学者の指された先を見つめる。クリスマスツリーの下に、大きなプレゼントボックスがある。ワクワクしながら開けると、

「あっ!」

赤いコートが、飛び出してきたのだ。大喜びで船長はそれを羽織る。フカフカであったかいのだろう。ギューっと埋もれて、嬉しそうだ。

「ふー、あったけー!!ほら!ゾロ!こい!さっきのおれいだ!」

「おいやめろおれは十分だ」

なので剣士を暖かさに包もうとして跳ね除けられていたのはさておき。

「ロビンちゃんどうする?おやつにしながらウロコのお話?」

「そーだぞウロコ一緒に探すんだ!」

「あぁ、もう見つけたわ。だからおやつだけね」

……え?」

3人とも目を点にすると、考古学者はクスリと笑った。手のひらの中に輝く、ルビーのような赤いウロコ。

「わかりやすかったわ。クリスマスツリーの星になってたの」

考古学者が指差す先。星のないクリスマスツリー。なるほど、あそこにあったのだろう。一頭光る星であればたやすく見つかることに代わりはない。

「あー……流石だな」

「さっすがロビンちゅわんだぁ!!」

「だめだぞロビン!見つけたら大きな声で叫ばねぇと!」

「ごめんなさい。他にも調べたいことあるし、私が見つけて帰ってしまったらルフィはここに冒険に来れないわ」

「何だ!そりゃしょうがねぇな!じゃあ一緒におやつくおう!」

「えぇ。朝ごはんのスープ美味しかったわよ、サンジ」

「えへへ、ありがとおー!おやつも美味しいよっ!おら、マリモカバン出せ」 

「うるせぇ出してるよエロ眉毛」

「んだと!?」

こうしてあっという間に2つ目のウロコは集まり、彼らは10時の軽食をとることになったのだった。

―――――

ふかふかと湯気が溢れる。半分に割った白いふわふわのパンから溢れ出すのはゴロゴロお肉やカリコリたけのこなどの美味しい具材。遠慮がちにかぶりついても、はたまた豪快にかぶりついても、お腹の奥底、果てには心までホカホカに温まるのだ。

「ロビン、うめーな!」

「ええ、おいしかったしあったまったわ」

「しし、だろっ」

考古学者はにっこりと船長にほほえみ返した。程々に大きいものだったのにぺろりと平らげてしまったから、ほうっと熱い吐息が満足そうに漏れた。

「そういえば、鱗以外に何か見つけなかったのか?」

「1つ見つけたのだけど、まだ解読ができてないの」

「さっすがロビンちゅわん!……って、解読?」

「これよ」

分厚い本が差し出される。どうやら少し古い日記のようだ。彼らはじいとそれを見る。

「んー、」


「サンジ、お昼もありがとう。夕方には迎えに来てね」

「もちろんさぁ!!ふたりきりでランデブーを!」

「とっとと次行くぞ」

「ふふ、そっちはバイクじゃないわよ」

「いっ」

美味しい肉まんを食べて温まった様子の三人は、またしてもバイクに乗り込んだ。コートは脱いでジャケットになり、バイクのエンジンを蒸す。勢いよく垂直に空に飛び上がると、考古学者の手を振る姿がだんだん小さくなっていった。

「次は」

「冬の次は春だ。ナミさんがおれをまってるし、美味ェもんもありそうだ!!」

「春かぁーー桜もいいなぁーー!!」

雪の島を背中に向けて頭に雪を積もらせながら向かう先は、桜の花びらがひらひらと常に舞い、あちこちにお花が咲き誇っている春だ。しかも、それだけではなくて、山菜や筍もひょこひょこと顔を出していて、遠くから見た料理人はキラキラと目を輝かせた。

「あーっ。こいのぼりだ!もうおれの誕生日か?」

「ここにもそんなもんがあるのか」

「見たところ新しいな」

そして一人喜び二人首を傾げる。また人工物。こいのぼりがひらひらとあちこちに風を受けて揺れている。

「おーいっ!」

「こっちだぜぇ」

「あっなみすわんだ!なみすわーん!!」

「フランキー!!おーい!」

そして、桜の下にも人工物があった。竹で組まれたバンブーハウスがふたつ。そばには風呂に、かまどにあれこれが置かれている。ご丁寧にバイクの駐車場まで。さすが船大工、細やかなものだ。

「はい、お昼と夜のご飯だよほー!」

「ありがと、んー!いいにおいっ」

「極上の幸せェ!!」

「瓶コーラもあるな、さすがだぜぇ」

「あ、それは冷やせよ。一応保冷剤のそばには置いてるから」

お昼はお重が重なっている花見弁当。蓋を開けてなくても美味しいで香りがただよってきて、航海士は頬を緩ませた。コーラもちゃんとあって、彼はご機嫌だ。