三毛田
2025-12-12 22:51:15
1092文字
Public アドベント25
 

12. 初めてついた嘘

12日目
でも、気づかれていた

 いつもならば寝起きもよく、元気なはずであった。
 だが、今日に限って寝ざめも悪く。悪夢でも見たかのように、体がだるい。
「穹。大丈夫か?」
「うん、大丈夫!」
 本当は駄目。助けて。
 嘘をついた。たぶん初めての嘘。
 怖い、痛い、苦しい、辛い。
 どうやら、悪夢を見たらしき影響がじわじわと俺を蝕む。
 その気持ちを押し殺し、笑顔を向ける。
 丹恒に心配をかけさせたくないから。
「うん。大丈夫」
 頷きながら口にし、頬を両手で叩く。
「丹恒先生、よろしく!」
「お前は……はしゃぎすぎて疲れても知らないからな」
「大丈夫大丈夫!」
 力こぶを見せ、バットを振り回す。
「こら。ここではいいが、外では振り回すな」
「はーい」
 怒られたのでバットをしまう。
 目的地に着き丹恒について回り、まずは情報収集。
 得られた情報を精査して、依頼を進めていく。
「こうやってるんだ」
「もっと単純なものもある。今回は比較的やりやすい」
「へ~」
 持ってきたメモに、必要事項を記入していく。
 もう大丈夫かと思ったが、相変わらずだ。
 体調はあまりよくない。
 それどころか、悪化している気も。
「穹」
「ん~?」
 何とか笑顔を張り付けて振り返ると、勢い良く額がぶつけられ。
「いっ」
「ああ、すまない。勢いをつけすぎた」
 自分でもぶつかるとは思っていなかったのか。目を丸くして、俺の額を優しく撫でる。
「熱があるな」
「えっ」
「自覚はないのか」
 バレた? と思って、恐る恐る自分の額に触れながら丹恒の額にも触れてみると。
「お前のおでこが冷たいだけじゃん!」
「そうか?」
 手も俺より冷たいから、熱があるのだと勘違いしたのだろう。危ない危ない。
「だが、早めに切り上げて宿へ行こう」
「列車に戻るんじゃないのか?」
 俺の手を引き、すいすい人々の間を抜けていく丹恒。
 あ、マズい。
 いつもならついていけるけれど、体が思うように動かない状態で彼についていくのは至難の業。
 地面にぶつかると思ったけれど、痛みはなく。
「体調が悪いなら、ちゃんと言え」
「は、はい」
 少々不機嫌そうな声が頭上から。丹恒に受け止められていた。胸で。
「大丈夫だという割に、笑顔が引きつっていたから心配していた」
「ご迷惑おかけします」
 俺を受け止めた後、歩けると言ったのにそれを黙殺して背負って歩く丹恒。
 何だかんだ優しい彼に、じわっと涙が。
「丹恒」
「なんだ」
「ありがとう。好き」
「礼ならば、全快したら行動で示してくれ」
「はぁい」
 好きという言葉についてはスルーされた。